衛生管理者 関係法令(有害業務) 問24:有機溶剤中毒予防規則(有機則)
有機溶剤中毒予防規則(有機則)における第3種有機溶剤等(ガソリン・石油ナフサ等)に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア第3種有機溶剤等を使用する屋内作業場では、作業環境測定の実施義務はなく、設備規制(局所排気装置の設置等)の適用も第1種・第2種と比べて緩和されている。正答
- イ第3種有機溶剤等を使用する場合でも、作業者に有機溶剤等健康診断を実施しなければならないことがある。
- ウ第3種有機溶剤等のみを使用するタンク内・坑内等の密閉空間での作業(特定有機溶剤作業)では、有機則の規制が強化され、局所排気装置等の設置や有機溶剤作業主任者の選任が必要になる場合がある。
- エ第3種有機溶剤等の容器の色別表示は、青色で「有機溶剤」等の表示を行わなければならない(有機則第25条)。
- オ第3種有機溶剤等の貯蔵・取扱いにおいて、当該有機溶剤等の蒸気が発散するおそれがある場所での使用禁止や、容器の密閉義務は、第1種・第2種と同様に適用される。
AI解説(初心者・標準・上級)
理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠法令も明記。
誤りはアです。第3種有機溶剤等については設備規制が一部緩和されることがありますが、「作業環境測定の実施義務がない」という記述は正確ではありません。第3種有機溶剤等でも、使用する作業場の条件によっては作業環境測定の実施義務が適用される場合があります。「第1種・第2種と比べて設備規制が緩和されている面がある」という点は概ね正しいですが、「作業環境測定の実施義務はない」という断定は誤りです。
特に第3種有機溶剤等でもタンク内・坑内等の密閉空間での作業(ウの内容)では規制が強化されることも覚えておく必要があります。
第3種有機溶剤等の主な規制(有機則):
| 規制事項 | 第1種・第2種との違い |
|---|---|
| 設備規制(局所排気装置等) | 一般屋内作業場での設置義務が緩和される場合あり |
| 作業環境測定 | 適用条件があり(屋内・一定の使用量等で義務) |
| 作業主任者の選任 | タンク内等の特定の場所では選任義務が発生する場合あり |
| 色別表示 | 青色(第1種=赤色・第2種=黄色) |
| 特殊健康診断 | 実施が必要な場合あり(業務の実態で判断) |
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): 第3種有機溶剤等でも作業環境測定の実施義務が適用される場合があります。「作業環境測定の実施義務はない」という断定が誤りです。有機則第28条の作業環境測定義務は第1種・第2種が主対象ですが、第3種でも使用状況・作業場の条件によっては対象となる場合があります。
- イ(正): 第3種有機溶剤等でも「有機溶剤業務に常時従事する労働者」に対しては健康診断の実施が必要な場合があります。
- ウ(正): タンク内・坑内等の密閉空間での第3種有機溶剤等の使用は、換気が悪く蒸気が高濃度になるため、有機則第13条等により規制が強化され、局所排気装置等・作業主任者の選任が必要になる場合があります。
- エ(正): 第3種有機溶剤等の容器の色別表示は青色(有機則第25条)。第1種=赤色・第2種=黄色・第3種=青色の区別は基本的な暗記事項です。
- オ(正): 容器の密閉義務・蒸気発散防止の措置は第3種でも同様に適用されます(有機則第34条)。有機溶剤の区分にかかわらず容器管理の基本的な安全措置は共通です。
【理論的背景】
有機溶剤の第1種・第2種・第3種の区分は「毒性の強さ・許容濃度」に基づく分類であり、第3種は「比較的毒性が低い(許容濃度が比較的高い)」ものが分類されます。第3種の代表的物質はガソリン(炭化水素混合物)・軽油・石油ナフサ等です。しかし「毒性が低い」は「リスクがゼロ」を意味せず、高濃度曝露や密閉空間での蓄積では十分な健康危害を引き起こします。
第3種有機溶剤の特性:
- 炭化水素混合物が多く、個々の成分の毒性が中等度(第1種に比べて)
- ガソリンは引火点が低く(−40℃以下)、火災・爆発リスクが特に高い
- 石油ナフサはn-ヘキサン(第2種・神経毒性)を含む場合があり注意が必要
- 作業環境での蒸気濃度が高くなれば、中枢神経抑制(頭痛・めまい・意識障害)が生じる
密閉空間での特別規制(有機則第13条・第14条等):
有機溶剤の区分が第3種であっても、タンク内・坑内等の密閉・半密閉空間では蒸気が蓄積しやすく、短時間で高濃度(爆発濃度以上・健康危害濃度以上)になる場合があります。このため密閉空間での第3種有機溶剤使用は、換気不能または不十分な状況では第1種・第2種と同等またはそれ以上の危険があると考え、規制を強化する規定が設けられています。
【実務・条文構造】
有機則の第3種有機溶剤等の主な規制(有機則第13条・第14条・第16条・第19条):
屋内作業場の設備規制:
- 第1種・第2種の屋内作業場: 局所排気装置等の設置義務(原則)
- 第3種のみの屋内作業場: 全体換気装置の設置で代替可能(設備規制が緩和)
- ただし屋内作業場の広さ・使用量・換気状況によっては、局所排気装置が必要な場合もある
タンク内・坑内等での規制強化(有機則第14条):
- 第1種・第2種・第3種を問わず、タンク内・坑内等の密閉場所での使用: 局所排気装置または全体換気装置の設置が義務
- 有機溶剤作業主任者の選任: タンク内・坑内等での作業では第3種でも選任義務が発生する場合がある
作業環境測定(有機則第28条):
- 主に第1種・第2種有機溶剤等を取り扱う屋内作業場が対象
- 第3種のみを使用する作業場では測定義務が軽減される場合があるが、「完全に義務なし」とは言い切れない
健康診断(有機則第29条):
- 有機溶剤業務(第1種・第2種・第3種を含む)に常時従事する労働者: 健康診断の実施が必要な場合あり
- 「第3種だから免除」という単純な解釈は誤り
色別表示の意義(有機則第25条):
- 赤色(第1種)・黄色(第2種)・青色(第3種)の色別表示は、作業者が取り扱う溶剤の危険性区分を視覚的に即座に確認するための安全管理ツール
- 混合溶剤(複数の区分が含まれる場合)は、最も規制の厳しい区分(第1種を含む場合は第1種として)の色で表示
【試験での位置づけ】
第3種有機溶剤問題の頻出は「第3種の容器は青色(第1種=赤色・第2種=黄色)」「第3種でも密閉空間(タンク内等)では規制が強化される」「第3種の設備規制は一般屋内では緩和されるが、作業環境測定や健康診断は完全免除ではない」の3点です。アのような「第3種には作業環境測定義務がない」という断定的な誤りは、第3種の「緩和」を「全面免除」と誤解させる典型的な引っかけです。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 有機則の適用では、「第3種有機溶剤のみを取り扱う一般屋内作業場」と「第1種・第2種も含む作業場」では、設備・測定等の義務が異なります。第3種のみの屋内作業場でも「使用量・換気状況・労働者数」等の条件によっては、作業環境測定の実施が事実上求められる場合があります。
- イ: 第3種有機溶剤等でも「有機溶剤業務に常時従事する労働者」に対する健康診断実施義務があります。ただし「常時従事」の解釈(業務の実態での判断)は第3種でも同様に適用されます。
- ウ: タンク内での有機溶剤使用は、種別を問わず重大な事故リスクがある作業です。密閉空間では蒸気が急速に蓄積し、爆発限界(ガソリンの爆発限界: 1.4〜7.6vol%)を超えることがあります。着火源(電気スイッチ・静電気・タバコ等)があれば爆発事故が発生します。有機溶剤作業主任者による作業の直接指揮は、このような密閉空間作業の安全管理において特に重要な役割を果たします。
- エ: 色別表示(赤/黄/青)の記憶法: 「第1種が最も毒性が高く赤色(最も強い警戒色)、第2種が黄色、第3種が青色」と危険度の高い順に赤→黄→青で覚えると実務的に理解しやすいです。
- オ: 容器の密閉義務・蒸気発散防止は、有機溶剤の引火性リスク(消防法上の危険物第4類)と中毒リスク(有機則の適用)の両面から義務付けられています。第3種でも引火性物質が多く(ガソリン等)、密閉の重要性は第1種・第2種と変わりません。
【根拠法令】有機溶剤中毒予防規則 第13条〜第16条(設備規制の区分:第1種・第2種と第3種の違い・タンク内等の特別規制)・第19条(有機溶剤作業主任者の選任:タンク内等では第3種でも必要)・第25条(色別表示:第1種=赤色・第2種=黄色・第3種=青色)・第28条(作業環境測定:第3種のみでも適用除外とは言い切れない)・第29条(有機溶剤等健康診断)
【補足】第3種の設備規制は一般屋内で緩和されるが「作業環境測定の実施義務が全くない」という断定は誤り。タンク内・坑内等の密閉空間では第3種でも規制が強化される。容器色=青色(赤=第1種・黄=第2種)。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 有機溶剤中毒予防規則(有機則)第28条(作業環境測定の対象:第1・第2種が中心だが第3種でも適用される場合がある)・第25条(色別表示)・第13条〜第16条(設備規制の区分)・第19条(作業主任者の選任)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。