労働生理11循環器

衛生管理者 労働生理 問11:循環器

一酸化炭素(CO)中毒に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 一酸化炭素はヘモグロビンに対する親和性が酸素(O₂)と同程度であるため、高濃度でなければ血液中のヘモグロビンとは結合しない。
  • 一酸化炭素中毒では、皮膚・粘膜が青紫色(チアノーゼ)を呈することが特徴的な所見である。
  • 一酸化炭素は無色・無臭の気体であり、通常の感覚では気づきにくく、密閉された空間での不完全燃焼が中毒の主な原因となる。正答
  • 一酸化炭素とヘモグロビンが結合したカルボキシヘモグロビン(COHb)は、酸素ヘモグロビン(OHb)より不安定であり、新鮮な空気を吸入すれば速やかに解離する。
  • 一酸化炭素中毒の治療に用いられる高圧酸素療法は、COHbの解離を促進するとともに、組織への物理的溶解による酸素補給を目的とするが、一般的な酸素吸入との効果の差はほとんどない。
正答:一酸化炭素は無色・無臭の気体であり、通常の感覚では気づきにくく、密閉された空間での不完全燃焼が中毒の主な原因となる。

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正しいのはウです。一酸化炭素(CO)は色も臭いもない気体で、感覚で察知することができません。密閉空間での不完全燃焼(石油ストーブ・車のエンジン・練炭等)が主な発生源です。

各誤りの要点: ア→COのヘモグロビン親和性はO₂の約200〜250倍(同程度ではない)。少量でも大量のヘモグロビンと結合して酸素運搬能力を著しく低下させます。イ→CO中毒で皮膚はチアノーゼ(青紫色)ではなく鮮紅色(桜桃色)になります(COHbが鮮紅色を呈するため)。エ→COHbはOHbよりはるかに安定(解離しにくい)です。オ→高圧酸素療法は通常の酸素吸入よりCOHb解離促進・組織酸素化に優れた効果があり、差は大きいです。

標準試験対策の基準レベル

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(誤): 一酸化炭素のヘモグロビンへの親和性は酸素の200〜250倍です。このため、空気中にわずか0.1%(1,000ppm)のCOが存在するだけで、ヘモグロビンの約50%がCOHbとなり、酸素運搬能力が半分に低下します。
  • イ(誤): CO中毒の皮膚所見は「鮮紅色(桜桃色・チェリーレッド)」です。これはCOHbが鮮明な赤色(OHbに似た色調)を呈するためです。チアノーゼ(青紫色)は組織での酸素消費によって脱酸素化ヘモグロビン(HHb)が増加する場合に生じますが、CO中毒ではHHbではなくCOHbが増加するためチアノーゼにはなりません。
  • ウ(正): COは無色・無臭(一般的な意味での臭いはない)の気体で、感覚では検知できません。不完全燃焼(酸素不足の状態での燃焼)によって発生し、完全燃焼(十分な酸素のある燃焼)ではCO₂が生成されます。
  • エ(誤): COHbは非常に安定な結合を形成し、OHbと比較して解離しにくいのが特徴です。高濃度酸素吸入や高圧酸素療法によってCOHbの解離半減期を短縮できますが、通常の空気では解離するのに長時間を要します(COHbの半減期: 大気中酸素で約5時間、100%酸素吸入で約60〜80分、高圧酸素療法で約20〜30分)。
  • オ(誤): 高圧酸素療法(HBO: Hyperbaric Oxygen Therapy)は大気圧の2〜3倍の高圧下で100%酸素を吸入します。COHbの解離促進に加え、物理的に溶解した酸素(ヘモグロビンに依存しない形の酸素)を組織に届けられる点で、通常の酸素吸入と比較して明らかに優れた治療効果があります。
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

【理論的背景】

一酸化炭素中毒は「見えない・嗅げない致死的ガス」の中毒として、職場・家庭の両面で重要な公衆衛生上の問題です。その毒性機序は単なる「ヘモグロビンの酸素運搬障害」にとどまらず、細胞内の呼吸(ミトコンドリア)の直接障害まで含む複合的なものです。

COの毒性機序の詳細:

1. ヘモグロビン結合(主要機序): CO + Hb → COHb(ヘモグロビンの酸素運搬能力が低下)

- さらに、COHbが増加すると残るOHbの酸素解離曲線が左方移動し、組織への酸素放出も障害される(二重の毒性)

2. ミオグロビン結合: 心筋・骨格筋のミオグロビンとCOが結合→筋肉機能障害(筋肉痛・筋力低下)

3. チトクロームcオキシダーゼ阻害: 細胞内ミトコンドリアの電子伝達系を阻害→細胞内呼吸の障害→「ヒストキシックアノキシア(組織毒性無酸素症)」→酸素があっても使えない状態

CO中毒の症状と血中COHb濃度の関係:

| COHb濃度 | 主な症状 |

|---|---|

| 10〜20% | 頭痛(前額部・拍動性)・軽度の倦怠感 |

| 20〜40% | 激しい頭痛・めまい・嘔吐・判断力低下 |

| 40〜60% | 意識障害・失神・痙攣・心拍数増加 |

| 60%以上 | 昏睡・呼吸停止・心停止・死亡 |

【実務・条文構造】

職場でのCO中毒リスクと対策:

発生源(労働衛生的に重要):

  • フォークリフト(ガソリン・LPG式)の排気ガス(倉庫・工場内での使用時)
  • 溶接・切断作業の不完全燃焼
  • 坑道・トンネル工事での発破・内燃機関
  • 炉・キルン・焙焼設備の周辺
  • 密閉された空間での暖房機器(石油ストーブ・練炭等)

CO検知と対策:

  • CO検知警報器の設置(センサー: 電気化学式が主流)
  • 作業前の酸素濃度・CO濃度測定(酸欠則に準拠)
  • 換気の徹底(自然換気・機械換気)
  • COHb血液検査(生物学的モニタリング)の実施
  • 中毒発生時: 直ちに新鮮空気下へ移送→高濃度酸素投与→高圧酸素療法(適応があれば)

高圧酸素療法(HBO)の適応基準(参考):

  • COHb 25%以上
  • 意識障害の既往
  • 神経症状(痙攣・失神)
  • 心電図異常(心筋障害)
  • 妊婦

【試験での位置づけ】

CO中毒問題では「皮膚は鮮紅色(チアノーゼではない)」「COのHbへの親和性はO₂の200倍以上」「無色・無臭で感覚で検知不能」の3点が最頻出です。イのようにCO中毒でチアノーゼが出るとする誤りは典型的な引っかけです。「赤くなる(鮮紅色)」という特徴的な症状が一酸化炭素中毒を他の低酸素状態と区別する重要なポイントです。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: COのHbへの親和性がO₂の200倍以上であることを「200倍ルール」として覚えましょう。これにより、空気中0.02%のCO(200ppm)でも50%のHbがCOHb化する(200ppm × 200 = 4万倍の親和性の差)ということです。わずかな濃度で致命的な中毒を起こす理由がここにあります。
  • イ: チアノーゼが「なぜ出ないか」の理解が重要です。チアノーゼは脱酸素化Hb(HHb)が末梢血管で増えることで皮膚が青紫色に見える現象です。CO中毒ではHbがCOHbに変換されており、HHbが増えないためチアノーゼにならず、むしろCOHbの鮮やかな赤色が皮膚に透けて「鮮紅色・桜桃色」に見えます。これは法医学的にも遺体の皮膚色でCO中毒を疑う根拠となります。
  • エ: COHbの半減期の短縮について実際の数値で理解しましょう。室内気(21%O₂)吸入では半減期約5時間ですが、100%O₂吸入(マスク)で約60〜90分、2.4気圧の高圧酸素では約20〜30分に短縮されます。遅発性神経障害(迟発性後遺症)の予防のためにも速やかなCOHb解離が重要です。
  • オ: COHb中毒の遅発性後遺症(遅発性神経症状・DNS: Delayed Neurological Sequelae)は、中毒から2〜4週間後に意識障害・人格変化・認知機能低下・パーキンソン症状などが出現する病態です。高圧酸素療法にはDNSの発症抑制効果があるとされており、この点でも通常の酸素吸入との差が明らかです。

【根拠】医学的事実(確立した職業医学・生理学)。COとヘモグロビンの結合特性・CO中毒の症状と皮膚色調・高圧酸素療法の優位性は職業医学・毒性学の基礎概念として確立。

【補足】CO中毒で皮膚は鮮紅色(チアノーゼではない)。COのHb親和性はO₂の200倍以上。COは無色・無臭で感覚で検知不能。COHbはOHbより安定で解離しにくい。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(確立した職業医学・生理学)。一酸化炭素の性状・ヘモグロビンとの結合・中毒症状は確立した知識。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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