労働生理31神経・筋

衛生管理者 労働生理 問31:神経・筋

筋肉の種類と特性に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 骨格筋は横紋筋であり、随意筋(意識的にコントロールできる筋肉)である。ミトコンドリアを豊富に持つ赤筋と、比較的少ない白筋に分類される。
  • 心筋は横紋筋であるが、不随意筋(自律神経・内分泌の制御下にある)であり、自動性(自発的に電気インパルスを発生する能力)を持つ点が骨格筋と異なる。
  • 平滑筋は横紋構造を持たない不随意筋であり、消化管・血管・気道・膀胱・子宮等の壁を構成する。骨格筋と比べて収縮速度は遅いが、長時間持続する収縮(緊張)が可能である。
  • 心筋は骨格筋と同様に単一の細胞として機能し、細胞間の結合(介在板)はあるが電気的な結合(ギャップジャンクション)は持たないため、各細胞が独立して収縮する。正答
  • 平滑筋の収縮は骨格筋と同様にCa²⁺に依存するが、骨格筋のトロポニン・トロポミオシン系ではなく、カルモジュリン-MLCK(ミオシン軽鎖キナーゼ)系を介して調節される。
正答:心筋は骨格筋と同様に単一の細胞として機能し、細胞間の結合(介在板)はあるが電気的な結合(ギャップジャンクション)は持たないため、各細胞が独立して収縮する。

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初心者向けまずはここから。やさしく要点を解説

誤りはエです。「心筋はギャップジャンクションを持たないため各細胞が独立して収縮する」という部分が誤りです。心筋は介在板(intercalated disc)の中にギャップジャンクション(電気的結合)を持っており、心筋細胞間を電気的に直接結合しています。そのため一つの細胞に発生した活動電位が、ギャップジャンクションを通じて隣接する細胞に伝わり、心臓全体がほぼ同時に収縮します(機能的合胞体・syncytium)。「各細胞が独立して収縮する」は骨格筋の特性に近く、心筋の特性とは逆の記述です。

その他の選択肢はすべて正確です。骨格筋=横紋筋・随意筋(ア)、心筋=横紋筋・不随意・自動性(イ)、平滑筋の特性(ウ)、Ca²⁺-カルモジュリン経路(オ)はいずれも正確です。

標準試験対策の基準レベル

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(正): 骨格筋(随意筋・横紋筋)の正確な記述。光学顕微鏡で観察すると横縞(横紋構造=サルコメアが規則的に配列)が見えます。随意的(大脳皮質からの体性神経によって制御)で、速い収縮が可能。赤筋(遅筋・TypeI・ミトコンドリア豊富・有酸素代謝)と白筋(速筋・TypeII・ミトコンドリア少・解糖系主体)の分類も正確です。
  • イ(正): 心筋(不随意筋・横紋筋)の正確な記述。心筋は骨格筋と同じ横紋構造を持ちますが、不随意筋(自律神経・ホルモンで制御)であり、洞房結節などの特殊心筋細胞が自発的に電気インパルスを発生します(自動性・automaticity)。
  • ウ(正): 平滑筋(不随意筋・無横紋筋)の正確な記述。平滑筋は筋フィラメントが不規則に配列(横紋なし)し、収縮速度は骨格筋より遅いですが疲れにくく長時間収縮を維持できます(緊張性収縮)。消化管壁・血管壁・気管支壁・膀胱壁・子宮壁・虹彩等に存在します。
  • エ(誤): 心筋の介在板にはギャップジャンクション(間隙結合)が存在し、隣接する心筋細胞間のイオン・電流の直接移動が可能です。これにより一つの心筋細胞の活動電位が瞬時に他の細胞に伝わり、心房(または心室)の全細胞が協調して収縮します(機能的合胞体)。「ギャップジャンクションを持たない」は明確な誤りです。
  • オ(正): 平滑筋の収縮調節機序の正確な記述。Ca²⁺→Ca²⁺-カルモジュリン複合体形成→MLCK(ミオシン軽鎖キナーゼ)活性化→ミオシン軽鎖リン酸化→ミオシン頭部がアクチンに結合可能になる→収縮。骨格筋のトロポニン・トロポミオシン系とは異なる調節機構です。
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

【理論的背景】

3種類の筋肉(骨格筋・心筋・平滑筋)の比較は、各種薬物・疾患・職業性障害の理解に不可欠な基礎知識です。

3種の筋肉の完全比較表:

| 特性 | 骨格筋 | 心筋 | 平滑筋 |

|---|---|---|---|

| 横紋構造 | あり | あり | なし |

| 随意/不随意 | 随意 | 不随意 | 不随意 |

| 核の数・位置 | 多核(周辺部) | 1〜2核(中央) | 1核(中央) |

| 細胞間電気結合 | なし | あり(ギャップJx) | あり(一部) |

| 自動性 | なし | あり(特殊心筋細胞) | 一部あり(平滑筋固有) |

| Ca²⁺感受機構 | トロポニンC | トロポニンC | カルモジュリン-MLCK |

| 収縮速度 | 速い | 中程度 | 遅い |

| 疲労しやすさ | しやすい(速筋)・しにくい(遅筋) | しにくい | しにくい |

| 支配神経 | 体性神経(脊髄・脳幹の運動ニューロン) | 自律神経(修飾のみ) | 自律神経・ホルモン |

心筋の介在板(intercalated disc)の機能:

  • デスモソーム: 細胞間の機械的接着(収縮時の力の伝達)
  • ギャップジャンクション(コネキシン43等): 電気的接続→イオン(Na⁺・K⁺・Ca²⁺)の直接通過→活動電位の細胞間伝達
  • 機能的合胞体: 心房全体・心室全体がほぼ同時に収縮できる理由

不応期の重要性(心筋のみ):

  • 骨格筋の不応期は数msと短く、繰り返し刺激で強縮(tetanus)が起きる
  • 心筋の不応期は非常に長く(約200〜300ms)、活動電位持続中に次の刺激を受けても収縮できない→強縮が起きない→ポンプとして繰り返し弛緩・収縮できる。心臓に強縮が起きたら血液を送り出せなくなる(死亡)→不応期の長さは生命維持上不可欠

【実務・条文構造】

筋肉の種類と薬物の作用・職業医学的意義:

骨格筋弛緩薬の使用(手術麻酔・ICU管理):

  • スキサメトニウム(ニコチン受容体作動薬): 神経筋接合部を遮断→骨格筋麻痺→気管挿管を容易にする。悪性高熱症の誘因(前述)。
  • ベクロニウム・ロクロニウム(非脱分極性筋弛緩薬): ニコチン受容体を競合的に遮断。

心筋に対する薬物(産業医・衛生管理者として知っておく薬剤):

  • β遮断薬(プロプラノロール等): 交感神経β₁受容体遮断→心拍数・収縮力低下→高血圧・狭心症・不整脈治療。副作用:気管支痙攣(喘息に禁忌)・徐脈
  • ジゴキシン(強心配糖体): Na⁺-K⁺-ATPase阻害→細胞内Na⁺↑→Na⁺-Ca²⁺交換系→細胞内Ca²⁺↑→収縮力↑(陽性変力作用)。過剰投与→不整脈(治療域が狭い)

平滑筋に対する薬物(職場での関連):

  • 気管支平滑筋: β₂刺激薬(サルブタモール等)→拡張→職業性喘息の急性期治療
  • 血管平滑筋: Ca²⁺拮抗薬→Ca²⁺流入阻害→弛緩→血管拡張→降圧作用・ニフェジピン・アムロジピン等(VDT作業長時間・過重労働による高血圧の薬物管理)

【試験での位置づけ】

筋肉の種類問題では「骨格筋=横紋筋・随意筋」「心筋=横紋筋・不随意筋・自動性あり・ギャップジャンクションで機能的合胞体を形成」「平滑筋=無横紋・不随意筋・Ca²⁺-カルモジュリン-MLCK系で収縮」が最頻出です。エのような「心筋がギャップジャンクションを持たない」という誤りは、心筋の機能的合胞体という重要な特性を逆にした典型的な引っかけです。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 骨格筋の多核構造は、発生過程で筋芽細胞(myoblast)が融合して形成されるためです。一つの骨格筋細胞(筋線維)は長さが最大数cmに達するほど大きな細胞で、多くの核(100個以上)を持ちます。デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)ではジストロフィンタンパクの欠損→細胞膜の脆弱化→筋線維破壊→骨格筋の進行性萎縮→最終的に呼吸筋障害→死亡。
  • イ: 心室細動(VF)はギャップジャンクションを介した無秩序な電気的興奮の伝播によって起きます(心筋が機能的合胞体であることの負の側面)。AED(除細動器)は強い電気ショックで全ての心筋細胞を一瞬同時に不応期にさせ→洞房結節からの正常なリズムでの再同期を促す原理です。
  • ウ: 腸蠕動(腸の連動収縮運動)は平滑筋が関与します。壁内神経叢(アウエルバッハ神経叢・マイスナー神経叢)が蠕動の「ペースメーカー」機能を持ちつつ、自律神経(副交感神経→蠕動促進、交感神経→蠕動抑制)による修飾を受けます。これが手術後腸管麻痺・過重労働ストレスによる過敏性腸症候群の生理学的背景です。

【根拠】医学的事実(確立した生理学)。心筋がギャップジャンクションを持ち機能的合胞体を形成すること(「持たない・独立収縮」は誤り)・骨格筋/心筋/平滑筋の横紋・随意性・収縮機構の違いは筋肉生理学の基礎概念として確立。

【補足】心筋はギャップジャンクション(介在板)を持ち機能的合胞体を形成(「持たない」は誤り)。骨格筋=横紋・随意。心筋=横紋・不随意・自動性・ギャップJx。平滑筋=無横紋・不随意・Ca²⁺-カルモジュリン-MLCK。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(確立した生理学)。心筋はギャップジャンクション(電気的結合)を介して機能的合胞体(syncytium)として働く。「ギャップジャンクションを持たない」は誤り。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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科目別に解いて、衛生管理者に合格

関係法令・労働衛生・労働生理を260問。第一種・第二種対応。各問に根拠法令とAI解説(3レベル)付き。