労働生理51感覚器

衛生管理者 労働生理 問51:感覚器

色覚および視野に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 視野とは「物を見たときに視線を動かさずに見える範囲」であり、正常な視野は上下方向より左右(水平)方向の方が広く、鼻側より耳側(外側)の方が広い。正答
  • 色覚異常(色盲・色弱)は後天性のみであり、遺伝性の色覚異常は存在しない。
  • 中心暗点(中心部の視野の欠損)は正常な加齢による視野変化であり、55歳以上の大多数の人に見られる。
  • 視力とは「どれだけ細かいものを区別できるか」という空間分解能であり、1.0の視力を持つ人は視角1分(1/60度)の細い縞を識別できる。視力測定は衛生管理者試験では直接問われないため無視できる。
  • 瞳孔は明るいところでは散大し(散瞳)、暗いところでは縮小する(縮瞳)。瞳孔の光反射(対光反射)は交感神経のみで制御される。
正答:視野とは「物を見たときに視線を動かさずに見える範囲」であり、正常な視野は上下方向より左右(水平)方向の方が広く、鼻側より耳側(外側)の方が広い。

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正しいのはアです。正常な視野は左右(水平方向)が上下より広く、耳側(外側:約90〜100°)が鼻側(内側:約60°)より広いのが特徴です。

各誤りの要点: イ→色覚異常は遺伝性(X染色体連鎖性が多い)が主な原因であり、遺伝性の色覚異常は存在しないという記述は誤り。ウ→中心暗点(中心部の視野欠損)は加齢性黄斑変性・視神経疾患等の病的状態であり、正常な加齢変化ではない。エ→視力の定義(視角1分・1.0視力)の記述は正しいが「衛生管理者試験では無視できる」という後半が不適切(照度基準等に視覚関連の知識が必要)。オ→明るいところでは縮瞳、暗いところでは散瞳(逆)。対光反射は副交感神経も関与(交感神経のみではない)。

標準試験対策の基準レベル

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(正): 正常視野の範囲(一眼での測定): 上方(上側)約60°・下方(下側)約75°・鼻側(内側)約60°・耳側(外側)約100°。水平方向(耳側60+鼻側約60=160°以上)が垂直方向(上60+下75=135°)より広い。耳側が鼻側より広い理由: 鼻が視野の内側を遮るため。視野計(ゴールドマン視野計・自動視野計)で測定します。
  • イ(誤): 色覚異常の主な原因は遺伝性(先天性)です。赤緑色覚異常(第1色覚異常・第2色覚異常)はX染色体連鎖劣性遺伝で、男性(XY)は1個の欠損X染色体で発現(日本人男性の約5%)、女性(XX)は2個ともに欠損が必要なため少ない(日本人女性の約0.2%)。後天性色覚異常(視神経炎・糖尿病・緑内障・加齢等)も存在しますが、先天性が圧倒的に多い。
  • ウ(誤): 中心暗点は視野の中心部(固視点付近)の欠損で、加齢性黄斑変性・視神経炎・緑内障(一部)などの眼疾患で生じる病的所見です。正常な加齢で起きる視野変化は視野の感度が均一にやや低下するもので、中心暗点は生じません。
  • エ(誤): 視力の定義(視角1分=0.017°の縞を識別できる能力が視力1.0)は正確ですが、「衛生管理者試験では無視できる」は不適切な記述です。視力は職業適性・照度基準・VDT作業管理の基礎知識として重要です。また選択肢の後半部分が記述の誤りを含むため、全体として誤りと判断します。
  • オ(誤): 瞳孔の光反射は、明るいところ→縮瞳(瞳孔括約筋収縮・副交感神経=動眼神経が制御)・暗いところ→散瞳(瞳孔散大筋収縮・交感神経が制御)。つまり明暗と散瞳/縮瞳の関係が逆です。また対光反射(光を当てると縮瞳する反射)は副交感神経(動眼神経の副交感線維)が主に制御します。「交感神経のみ」は誤りです。
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

【理論的背景】

視野と色覚は視覚機能の中でも職業適性・業務安全・眼疾患の早期発見に直結する重要な生理学的概念です。

正常視野と疾患による視野欠損のパターン:

  • 両耳側半盲(両側の耳側の視野が欠損): 下垂体腫瘍が視交叉を圧迫→交叉する神経線維が障害される(鼻側網膜からの線維→視交叉で交叉→対側に向かう→腫瘍圧迫→耳側視野欠損)
  • 同名半盲(右または左の半分が欠損): 視交叉以降の損傷(内包・視放線・後頭葉視覚野)→脳梗塞・脳腫瘍
  • 求心性視野狭窄(周辺から中心に向かって視野が狭まる): 網膜色素変性症・緑内障(鼻側から)
  • 中心暗点: 加齢性黄斑変性(滲出型・萎縮型)・視神経疾患

色覚の神経生理学:

  • 3種類の錐体(L・M・S錐体)の信号が拮抗処理(色拮抗: red-green・blue-yellow・luminance)される
  • 色覚異常者(第1・第2色覚異常): 赤と緑の区別が困難(電気配線の赤/緑の区別・信号の識別等に影響する業務がある)
  • 色覚検査(石原式・Farnsworth D-15等): 採用時の適性検査として実施されることがある職種(パイロット・鉄道運転士・電気工事士等)

瞳孔の神経支配の詳細:

  • 縮瞳: 副交感神経(動眼神経第3脳神経の副交感線維→毛様体神経節→瞳孔括約筋)。迷走神経ではなく動眼神経。アトロピン(副交感神経遮断薬)→散瞳(眼科検査での散瞳薬として使用)。ピロカルピン(副交感神経作動薬)→縮瞳(緑内障治療)
  • 散瞳: 交感神経(上頸神経節→瞳孔散大筋)。アドレナリン点眼→散瞳。Horner症候群(交感神経遮断)→縮瞳・眼瞼下垂・無汗症の3徴

【実務・条文構造】

視覚と職場適性管理:

視野・色覚と職業制限:

  • 運転業務(トラック・バス・タクシー等): 視野(両眼で150度以上)・視力(裸眼または矯正で0.7以上)が道路交通法で規定
  • 航空機パイロット: 航空法で色覚・視野・視力等の基準を規定(色覚異常者はパイロット資格が制限される場合がある)
  • 電気工事(配線の色識別): 先天性色覚異常者への適切な業務配置が安全管理上重要

職場での眼疾患の早期発見(定期健康診断の眼の検査):

  • 視力(裸眼・矯正後)
  • 眼底検査(医師の判断で): 糖尿病性網膜症・高血圧性網膜変化
  • 色覚検査(有機溶剤等の特殊健診で): 有機溶剤への慢性曝露→色覚障害(視神経毒性)の早期発見

VDT作業と視覚疲労(眼精疲労):

  • 長時間近距離視作業→毛様体筋の持続的緊張→眼精疲労(眼の疲れ・頭痛・肩こり)
  • VDTガイドライン: 作業1時間ごとに10〜15分の休憩・遠方を見る・画面の照度管理
  • ドライアイ:画面凝視でまばたき減少→涙液膜の乾燥→眼の乾き・かすみ

【試験での位置づけ】

視野・色覚の問題では「正常視野は水平>垂直・耳側>鼻側(ア・正)」「色覚異常は遺伝性が主(X連鎖・男性に多い)」「中心暗点は病的所見(加齢性黄斑変性等)」「明るい→縮瞳(副交感)・暗い→散瞳(交感)(オの逆が誤り)」「対光反射は副交感(動眼神経)が主」が頻出論点です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 両眼視野は、双方の単眼視野が重なった「両眼視野(binocular visual field)」で、特に前方の双眼視野は120〜160°の重なりがあります。この重なりが立体視(depth perception)の生理的基盤です。片目をつぶると立体感がなくなるのはこの両眼視差(binocular disparity)が失われるためです。
  • イ: 職場での色覚異常者への合理的配慮: 赤・緑の区別が困難な場合、配線コードの色識別に関わる業務では形・文字による追加標識を設けることで業務遂行が可能になります(ユニバーサルデザイン的アプローチ)。色覚異常は疾患ではなく「色の見え方の個人差」であり、差別的な扱いは不当です。
  • ウ: 加齢性黄斑変性(AMD)は先進国での高齢者の視力低下の主要原因です。日本人でも65歳以上の約7〜8%に見られます。滲出型AMDでは脈絡膜新生血管(CNV)が黄斑下に侵入→出血・瘢痕→急速な中心視力低下。治療: 抗VEGF薬(ベバシズマブ等)の硝子体注射が有効。
  • オ: 散瞳薬(トロピカミド・アトロピン等)を使用した眼底検査後は、数時間〜1日程度散瞳が続き近くが見えにくくなります(調節麻痺)。この間は自動車運転が危険です。産業医・衛生管理者として、眼科検査後の運転禁止指導を知っておくことが重要です。

【根拠】医学的事実(確立した眼科学・生理学)。正常視野の形状・色覚異常の主な原因が遺伝性であること・瞳孔の光反射が明所での縮瞳であり副交感神経が主に関与することは確立した知識。

【補足】正常視野:水平>垂直・耳側>鼻側。色覚異常は遺伝性(X連鎖性・男性に多い)が主。明るい→縮瞳(副交感神経)・暗い→散瞳(交感神経)。対光反射は縮瞳で副交感神経が主。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(確立した眼科学)。正常視野の形状(水平方向が広い・耳側が鼻側より広い)は確立した知識。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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