行政法144行政法(国家賠償法)

行政書士 行政法 問144:行政法(国家賠償法)

国家賠償法2条(営造物の設置管理の瑕疵)に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 国賠法2条の「公の営造物の設置または管理に瑕疵があったこと」は、当該営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、被害者は管理者の故意・過失を主張・立証する必要はない(無過失責任)。
  • 公の営造物の「瑕疵」には、物理的・有形的な設備の欠陥(物的瑕疵)だけでなく、人員配置・安全管理体制等の運用上の欠陥(機能的瑕疵)も含まれると解される。
  • 道路管理者が予算措置等の制度的制約を理由に道路の修繕ができなかった場合であっても、当該道路に瑕疵があれば国賠法2条の責任が生じるのが原則であるが、危険な状態が発生してから除去まで相当な時間的余裕がない突発的事故については免責が認められる場合がある。
  • 国賠法2条の「公の営造物」には、国または公共団体が所有する有体物に限られ、国または公共団体が管理するが所有しない物(私有地上に設置された公の施設等)は含まれない。正答
  • 河川管理に瑕疵があるかどうかを判断する場合、最高裁判例によれば、水害の発生と改修計画の段階・過渡的安全性(当時の技術・財政的制約等)を考慮した上で判断すべきとされ、一般の人工公物とは異なる緩やかな判断基準が適用される。
正答:国賠法2条の「公の営造物」には、国または公共団体が所有する有体物に限られ、国または公共団体が管理するが所有しない物(私有地上に設置された公の施設等)は含まれない。

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エが誤りです。国賠法2条の「公の営造物」は国または公共団体が所有する物に限られず、国または公共団体が管理・支配している物であれば所有関係を問いません。例えば、私有地上に設置された公道(一定の条件で道路認定されたもの等)や、行政が管理する私有地のため池等も国賠法2条の「公の営造物」に該当する場合があります。「所有する有体物に限られる」というエの記述は誤りです。ア(無過失責任)は2条の重要な特徴として正しいです。イ(機能的瑕疵の包含)は判例・学説が認める解釈として正しいです。ウ(予算制約と突発事故の免責)は2条の解釈上認められている例外として正しいです。オ(河川管理の過渡的安全性)は大東水害訴訟(最判昭59.1.26)等の判例に沿った正しい記述です。

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国家賠償法2条の「公の営造物」と「瑕疵」の概念を整理します。

公の営造物(2条): 国または公共団体が所有または管理する有体物(動産・不動産)を広く指します。エの「所有に限られる」は誤りで、管理・支配関係があれば所有権の帰属を問いません。典型例:道路・河川・公園・学校の校舎・給食設備・教育機器等。

「瑕疵」の意義(アの根拠): 公の営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいいます(客観的概念・無過失責任)。管理者の主観的な故意・過失は要件ではない点で国賠1条と異なります。

機能的瑕疵(供用関連瑕疵・イの根拠): 営造物の物的な欠陥(亀裂・段差等)のみならず、営造物が供用目的に沿って利用されることとの関連で第三者に危害を生じさせる場合(騒音・排気ガス等)も「瑕疵」に含まれます。大阪空港訴訟(最大判昭56.12.16)は、空港の供用に伴う騒音被害について、利用の態様・程度が一定限度を超えて周辺住民に危害を生じさせる場合には設置・管理の瑕疵があるとして、供用関連瑕疵(機能的瑕疵)を認めました。また、適切な管理体制の欠如(安全管理措置の不備等)も瑕疵を構成し得ます。

河川管理と過渡的安全性(オの根拠): 大東水害訴訟(最判昭59.1.26)は、河川は自然公物であり段階的改修が不可避であること、財政・技術的制約が大きいことを考慮し、「未改修河川または改修不十分な河川については、改修・整備の過程に対応する過渡的な安全性をもって足りる」とした重要判例です。道路等の人工公物より緩やかな基準が適用されます(オ正しい)。

上級誤答論破・条文/判例まで深掘り

【国賠法2条の無過失責任の根拠と特殊性】

国賠法2条は「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたとき」の賠償責任を規定し、1条と異なり「故意又は過失」を要件とせず「無過失責任」を採用しています。この無過失責任の根拠は:①公の施設を利用する一般国民の安全への信頼保護(公物の安全性確保義務)、②行政活動による危険の社会的分散(危険責任論)、③財政基盤のある国・公共団体による損失の社会化。

【「公の営造物」の範囲(エの詳細分析)】

「公の営造物」は通説・判例では国または公共団体が「所有または管理する」有体物と解されており、所有権の帰属は問題になりません(エ誤りの根拠)。判例上認められた営造物:道路(国道・都道府県道・市町村道)、河川(一級・二級河川)、学校施設(校舎・体育館・水泳プール)、公園・公共施設。私有地上に行政が管理する公道が形成されている場合も2条の適用が肯定されます(下級審判例多数)。一方、工作物でも純粋に私有・私的管理の物については2条の射程外です。「所有のみに限定する」解釈は2条の立法趣旨(公の施設利用者の保護)に反します。

【機能的瑕疵(供用関連瑕疵)の展開(イの詳細)】

機能的瑕疵(供用関連瑕疵)とは、物の物理的状態自体に欠陥はないが、営造物が供用目的に沿って利用されることとの関連で、利用者または第三者に危害を生じさせる危険性がある状態をいいます。大阪空港訴訟(最大判昭56.12.16)は、空港という営造物の供用に伴う騒音・振動・排気ガス等が周辺住民に被害を与える場合について、「営造物の利用の態様及び程度が一定の限度を超えるために第三者に危害を生ぜしめる危険性がある場合には、そのような利用に供される限りにおいて設置・管理に瑕疵がある」と判示し、供用関連瑕疵という概念を確立しました。これにより、物的な欠陥がなくても、営造物の利用の在り方それ自体が第三者に危害を及ぼす場合には2条の賠償責任が肯定されることが明確になりました。

【突発的事故と免責(ウの詳細)】

道路に他の車両等によって突発的に危険な状態(標識の転倒・赤色灯の消灯等)が生じ、管理者が認知から除去まで物理的に対応できない時間的余裕がない場合には、道路の管理に瑕疵がないとして免責が認められることがあります。最高裁(赤色灯標柱転倒事件・最判昭50.6.26)は、工事標識板・赤色灯標柱が事故直前に他車によって倒され赤色灯が消えた状態について、管理者が直ちに原状回復して安全を保つことは時間的に不可能であったとして、道路管理に瑕疵がないと判断しました。他方、国道上に故障した大型貨物自動車を約87時間放置していた事案(最判昭50.7.25)では、相当の時間的余裕があったとして道路管理の瑕疵を肯定しており、両者は「時間的余裕の有無」によって結論が分かれています。なお、予算制約は原則として免責事由になりません(高知落石事件・最判昭45.8.20。ウの前半部分)が、物理的・時間的に対応不能な突発事故は別扱いされます(ウの後半部分・正しい)。

【河川管理の過渡的安全性(大東水害訴訟の詳細)】

大東水害訴訟(最判昭和59年1月26日)は、河川の水害による被害者が国・地方公共団体(河川管理者)に国賠法2条の責任を追及した事案です。最高裁は「河川は本来自然公物であり道路等の人工公物とは異なり、管理開始時から通常予測される災害に対応する安全性を備えていることを当然の前提とすることはできない。未改修河川または改修不十分な河川については、過去の水害の規模・頻度、財政的・技術的・社会的制約のもとでの同種・同規模河川の管理の一般水準等を総合考慮し、改修・整備の過程に対応する過渡的な安全性をもって足りる」と判示しました。この「過渡的安全性論」は河川管理の免責を広く認める方向に機能しており、水害訴訟の難しさ(管理者側の免責が認められやすい)につながっています。

【根拠条文・判例】

国家賠償法 第2条(営造物の設置管理の瑕疵に基づく損害賠償)

最判昭和45年8月20日(高知落石事件・無過失責任・予算抗弁の排斥)

最判昭和50年6月26日(赤色灯標柱転倒事件・突発的事故と免責)

最判昭和50年7月25日(故障車87時間放置事件・時間的余裕がある場合の瑕疵肯定)

最大判昭和56年12月16日(大阪空港訴訟・供用関連瑕疵=機能的瑕疵)

最判昭和59年1月26日(大東水害訴訟・河川管理の過渡的安全性)

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 国家賠償法 第2条(公の営造物の設置管理の瑕疵に基づく賠償) 判例: 最判昭和59年1月26日(大東水害訴訟・河川管理の過渡的安全性)、最判昭和45年8月20日(高知落石事件・予算抗弁の排斥) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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