行政書士 商法・会社法 問10:定款の絶対的記載事項・相対的記載事項・任意的記載事項
株式会社の定款に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア定款の絶対的記載事項(絶対的記載事項)とは、定款に必ず記載しなければならず、記載しなければ定款全体が無効となる事項をいう。
- イ株式会社の定款の絶対的記載事項には、目的・商号・本店の所在地・設立に際して出資される財産の価額またはその最低額・発起人の氏名または名称および住所が含まれる。
- ウ相対的記載事項とは、定款に記載しなければ効力が生じない事項であり、定款に記載することで初めてその効力が認められる事項をいう。
- エ株式の譲渡制限に関する規定は任意的記載事項であり、定款に記載しなくてもその効力は生じるが、定款に記載することによって対外的に明確にする事項である。正答
- オ定款は公証人による認証を受けなければその効力を生じないが、この認証は原始定款(設立時の定款)についてのみ必要であり、設立後の定款変更には公証人の認証は不要である。
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定款の記載事項には3種類あります。①絶対的記載事項(会社法27条):必ず記載が必要で、欠けると定款全体が無効。目的・商号・本店所在地・出資財産の価額または最低額・発起人の氏名住所が必須(イ正しい)。②相対的記載事項(会社法28条等):定款に記載しなければ効力が生じない事項(変態設立事項等)。記載することで初めて効力が生じます(ウ正しい)。③任意的記載事項(会社法29条):法律に違反せず定款に記載した内容が効力を持つ事項。エが誤りで、株式の譲渡制限は「任意的記載事項」ではなく「相対的記載事項」です(定款に定めなければ効力が生じない)。オは正しく、原始定款のみ公証人認証が必要です。
定款の記載事項の3分類を正確に整理します。絶対的記載事項(会社法27条):目的(1号)・商号(2号)・本店の所在地(3号)・設立に際して出資される財産の価額またはその最低額(4号)・発起人の氏名または名称及び住所(5号)の5項目。1項目でも欠ければ定款全体無効(ア・イ正しい)。相対的記載事項(会社法28条・107条・108条等):定款に記載して初めて効力が発生する事項。変態設立事項(28条:現物出資・財産引受・発起人の報酬・設立費用)・株式の内容に関する事項(107条:全部について譲渡制限・全部取得条項等)・株式の種類(108条:優先株・議決権制限株等)・役員の任期の伸長・監査役の設置義務の有無等が含まれます。株式の譲渡制限(会社法107条1項1号・2項1号)は相対的記載事項であり、定款に定めない限り効力が生じない(エ誤り:「任意的記載事項」という記述が誤り)。任意的記載事項(会社法29条):法令違反でない限り定款に記載した内容が有効。定款外でも可能な事項を定款に記載して明確化するもの(例:事業年度・配当基準日等)。公証人認証(会社法30条):原始定款(設立時)のみ公証人の認証が必要。設立後の定款変更(株主総会特別決議による)には公証人認証不要(オ正しい)。
【理論的背景】
定款は会社の根本規則(憲法)であり、会社の目的・組織・運営の基本ルールを定めます。絶対的記載事項が設けられる理由は、これらの事項がなければ会社の同一性・活動範囲・組織が不明確となり、社員(株主)・債権者・取引相手が会社を識別できないからです。相対的記載事項(特に変態設立事項:28条)が厳格な手続(検査役調査等)を経て定款記載を要求されるのは、設立時における発起人による不当利益取得(財産引受・過大報酬等)から設立後の会社・株主を保護するためです。株式の譲渡制限を相対的記載事項とするのは、株式会社の原則(株式自由譲渡:会社法127条)に対する例外として、定款による明示的な制限を設けた場合のみ効力を認める趣旨です。これにより、閉鎖会社(譲渡制限会社)と公開会社(譲渡制限なし)の区別が生じ、機関設計の選択肢(取締役会設置義務の有無等)にも影響します。
【条文構造】
会社法27条は絶対的記載事項(5号列挙)を定め、会社法28条は変態設立事項(現物出資・財産引受・発起人の報酬・設立費用:4号列挙)を定款記載の要件とする相対的記載事項として規定します。変態設立事項の検査役調査(会社法33条)は、発起人による過大評価や不当利益取得を防ぐための事前チェック機能を持ちます。株式の譲渡制限については会社法107条(全株式に譲渡制限を付す場合)・108条(種類株式として発行する場合)に規定があり、いずれも定款の定めが効力発生要件です。会社法30条1項は原始定款の公証人認証を「効力の発生要件」と定め、認証がなければ定款は無効です。設立後の定款変更(会社法466条)は株主総会特別決議(会社法309条2項11号)によって行われ、公証人認証は不要です。
【試験での位置づけ】
行政書士試験での定款の問われ方は、①絶対的記載事項の列挙(5項目の全て・特に発起人の氏名住所が含まれる点)、②変態設立事項(相対的記載事項)の具体例と検査役調査の要否、③株式譲渡制限の記載種別(相対的記載事項)、④公証人認証の要否(原始定款のみ)の4点が典型です。本問エ(株式譲渡制限は相対的記載事項であり任意的記載事項ではない)は典型的な引っかけです。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 正しい。絶対的記載事項は記載が定款の有効要件であり、一つでも欠ければ定款全体が無効となる。
- イ: 正しい。会社法27条が列挙する5項目(目的・商号・本店所在地・出資財産価額または最低額・発起人の氏名住所)は全て絶対的記載事項。「設立に際して出資される財産の価額またはその最低額」(27条4号)は重要で、金額を確定しなくとも最低額の記載で足りる。
- ウ: 正しい。相対的記載事項は「定款に定めない限り効力なし」という特徴を持つ。変態設立事項(28条)・株式の内容に関する事項(107条〜)・種類株式(108条)等が典型。
- エ: 誤り。株式の譲渡制限(会社法107条1項1号・2項)は相対的記載事項(定款に定めなければ効力なし)であり、任意的記載事項(定款外でも効力あり・定款記載で明確化するだけ)ではない。株式は原則自由に譲渡でき(127条)、制限するには定款の明示が必要。
- オ: 正しい。会社法30条1項により原始定款の認証が効力要件。設立後の変更(466条・309条2項11号特別決議)は公証人認証不要。
【根拠条文】
会社法 第27条各号(絶対的記載事項)
会社法 第28条各号(変態設立事項・相対的記載事項)
会社法 第107条第1項第1号・第2項(株式の譲渡制限・相対的記載事項)
会社法 第29条(任意的記載事項)
会社法 第30条第1項(原始定款の公証人認証)
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第27条(定款の絶対的記載事項)、会社法第28条(変態設立事項)、会社法第29条(任意的記載事項)、会社法第30条(定款の認証) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。