商法・会社法11変態設立事項・現物出資・財産引受の規制

行政書士 商法・会社法 問11:変態設立事項・現物出資・財産引受の規制

株式会社の設立における変態設立事項に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 変態設立事項とは、定款に記載することで初めて効力が生じる事項であり、現物出資・財産引受・発起人の報酬その他の特別の利益・設立費用の4種類がある。正答
  • 現物出資とは、発起人が金銭以外の財産を出資する方法をいい、発起人以外の者(引受人等)も現物出資をすることができる。
  • 財産引受とは、発起人が設立後の会社のために、設立前から特定の財産を買い受けることを第三者と約定する行為をいい、定款への記載がなくとも設立後の会社が追認することで有効となる。
  • 変態設立事項については、原則として裁判所が選任する検査役の調査が必要とされているが、現物出資財産の価額が一定の基準以下の場合は、検査役の調査に代えて弁護士等の証明で足りる。
  • 発起人の報酬その他の特別の利益とは、発起人が設立の対価として会社設立後に受け取る金銭報酬のみをいい、会社設立後に発起人が取締役として受け取る役員報酬は含まれない。
正答:変態設立事項とは、定款に記載することで初めて効力が生じる事項であり、現物出資・財産引受・発起人の報酬その他の特別の利益・設立費用の4種類がある。

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変態設立事項とは、設立の際に発起人が不当な利益を得ることを防ぐために特別な規制が課される4種類の事項です。①現物出資(金銭以外の財産の出資)②財産引受(設立前に会社が取得することを約する財産)③発起人の報酬・特別利益④設立費用。これらは定款への記載が効力発生要件(相対的記載事項)です(ア正しい)。イは誤りで、現物出資は発起人のみが行えます(引受人は現物出資不可)。ウは誤りで、財産引受は定款記載がなければ追認によっても有効にならないのが原則です。エは検査役調査の省略制度(会社法33条10項)自体は存在しますが、不動産の現物出資では弁護士等の証明に加えて不動産鑑定士の鑑定評価も必要であり、「弁護士等の証明で足りる」とだけ述べるのは不正確です。オは「金銭報酬のみ」という限定が誤りです。

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変態設立事項(会社法28条各号)の詳細を整理します。1号(現物出資): 発起人が金銭以外の財産(不動産・有価証券・知的財産権等)を出資する場合。現物出資ができるのは発起人のみ(イ誤り:引受人は不可)。定款に「出資者の氏名または名称・当該財産及びその価額・その者に対して割り当てる設立時発行株式の数」を記載する必要があります(28条1号)。2号(財産引受): 発起人が設立後に会社が取得する財産を、設立前に特定人と売買等を予約する行為。定款記載がなければ無効であり、設立後の追認によっても有効にはならない(ウ誤り:追認不可)。脱法的な財産引受(定款記載なし)は無効であるという判例・通説が確立しています。3号(発起人の報酬・特別利益): 金銭報酬に限らず、財産の給付・債務の免除・優先的な取引機会の提供等も含む広い概念(オ誤り:金銭のみではない)。4号(設立費用): 発起人が設立に要した費用を会社に負担させる場合に定款記載が必要。検査役の調査(会社法33条): 現物出資・財産引受については原則として裁判所選任の検査役による調査が必要。ただし一定基準(総額500万円以下・市場価格のある有価証券で定款価額が市場価格以下・弁護士等の専門家の証明〔不動産はこれに加え不動産鑑定士の鑑定評価〕)の場合は省略可能(会社法33条10項)(エは「弁護士等の証明のみで足りる」とする点が不正確で誤り)。

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【理論的背景】

変態設立事項が特別規制の対象となる理由は、設立の場面で発起人が会社(=設立後の株主・債権者)に対して優位な立場を利用して不当な利益を得ることを防ぐためです。具体的には、①現物出資の過大評価(実際の価値より高い評価で出資し多くの株式を取得する)、②財産引受による高額購入(会社設立後に不当に高い価格で自己の財産を会社に買わせることの事前合意)、③過大な報酬の設定(設立の対価として不相当に高い報酬を確保する)、④水増し設立費用(実際より高い費用を会社に負担させる)が典型的な問題です。これらを防ぐため、定款記載(公示)と検査役調査(第三者による価額の客観的評価)という二重のコントロールが課されています。財産引受の追認が認められない(無効の確定)とされるのは、追認を認めると脱法行為(定款記載を回避して後から追認する)が容易になるからです。

【条文構造】

会社法28条は1号から4号まで変態設立事項を列挙し、各号について定款に「記載」または「記録」しなければ、その効力を生じないと定めます。会社法33条は検査役の選任を規定し、1項で「裁判所に対し、検査役の選任の申立てをしなければならない」と義務付けています(発起人の義務)。同条10項には検査役調査省略事由として、①現物出資財産の価額の総額が500万円を超えない場合、②市場価格のある有価証券で定款記載額が市場価格以下の場合、③弁護士・公認会計士・監査法人・税理士・税理士法人の証明(不動産の場合は加えて不動産鑑定士の鑑定評価も必要)を受けた場合が列挙されています(エの「弁護士等の証明で足りる」は部分的に正しいが不動産の場合に鑑定士評価も必要な点で「のみ」では誤り)。財産引受の追認については、判例(最判昭28.12.3等)が「定款に記載のない財産引受は絶対的無効であり、会社の追認によっても有効とならない」という立場を採っています。

【試験での位置づけ】

行政書士試験での変態設立事項は、①4種類の内容の正確な把握、②現物出資は発起人のみ可(引受人不可)、③財産引受の追認不可(絶対的無効)、④検査役調査省略事由の3点が典型的な出題パターンです。また、変態設立事項と「設立時の発行可能株式数」や「設立時の払込金額」等の設立事項(会社法32条)との区別も問われることがあります。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 正しい。会社法28条が定める4種類(現物出資・財産引受・発起人の報酬等・設立費用)が変態設立事項の全て。定款記載が効力発生要件(相対的記載事項)という性質も正確。
  • イ: 誤り。現物出資ができるのは発起人のみ(会社法28条1号「発起人が」と明示)。設立時募集株式の引受人(会社法59条以下)は金銭出資のみ。
  • ウ: 誤り。財産引受は定款記載がなければ絶対的無効であり、設立後の会社の追認によっても有効とはならない(判例・通説)。脱法行為防止の観点から追認を認めない。
  • エ: 不正確(一部正しいが全体として誤り)。検査役調査の省略事由(会社法33条10項)には①総額500万円以下、②市場価格のある有価証券で定款価額が市場価格以下、③弁護士・公認会計士・監査法人・税理士・税理士法人等の証明(不動産はこれに加え不動産鑑定士の鑑定評価)があり、特に不動産については弁護士等の証明だけでは足りない。「弁護士等の証明で足りる」とだけ言うのは正確でない。
  • オ: 誤り。発起人の報酬その他の特別の利益(28条3号)は金銭報酬に限らず、財産・権利・便宜等の広い利益を含む。「金銭報酬のみ」という限定は誤り。

【根拠条文】

会社法 第28条各号(変態設立事項・現物出資・財産引受・発起人の報酬・設立費用)

会社法 第33条第10項(検査役の調査・省略事由:500万円以下・市場価格有価証券・専門家証明)

会社法 第28条(定款記載が効力発生要件)

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第28条(変態設立事項)、会社法第33条(検査役の調査)、会社法第34条(出資の履行) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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