商法・会社法17株式の譲渡制限・譲渡承認手続

行政書士 商法・会社法 問17:株式の譲渡制限・譲渡承認手続

株式の譲渡制限に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 株式会社の株式は、原則として自由に譲渡することができるが、定款によって譲渡を制限することができ、この場合にはすべての株式について一律に譲渡制限を付さなければならない。
  • 譲渡制限株式を譲渡しようとする株主は、会社に対して当該株式の譲渡の承認を請求することができ、この承認の有無を決定する機関は、定款に別段の定めがない限り取締役会(取締役会設置会社の場合)または株主総会(取締役会非設置会社の場合)である。
  • 会社が承認の請求を受けた場合に承認しない旨の決定をしたときは、会社は株主が譲渡しようとした相手方(指定買取人等)への売渡請求のみを行うことができ、会社自身が買い取ることはできない。
  • 株式の譲渡制限に反する株式の譲渡(無承認譲渡)は、会社に対して無効であるが、当事者間(譲渡人と譲受人の間)では有効である。正答
  • 譲渡制限の定めは、特別決議ではなく普通決議によって定款を変更することで設けることができる。
正答:株式の譲渡制限に反する株式の譲渡(無承認譲渡)は、会社に対して無効であるが、当事者間(譲渡人と譲受人の間)では有効である。

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株式は原則として自由に譲渡できます(会社法127条)。定款で譲渡制限を設けることができますが、アの「すべての株式に一律」というのは誤りで、種類株式として一部の株式のみに制限を付すことも可能です。承認機関は取締役会設置会社は取締役会(または定款で別機関を指定)、非設置会社は株主総会であり(イ正しい)。承認拒否の場合は会社が自己株式として買い取ることも、指定買取人への売渡しも選択できます(ウ誤り:会社自身の買取りも可)。無承認譲渡の効力(エ正しい):当事者間(譲渡人・譲受人)では有効ですが、会社に対して(対会社的に)は無効です。全株式に譲渡制限を設ける定款変更は、通常の特別決議よりも加重された特殊決議(会社法309条3項1号・議決権を行使できる株主の半数以上かつ議決権の3分の2以上)が必要です(オ誤り:普通決議では足りない)。

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株式の譲渡制限と承認手続の体系を整理します。自由譲渡性(127条):株式は原則自由に譲渡できる(株式の流通性・換価性の保障)。定款による制限(107条・108条1項4号):全株式に制限(107条)または種類株式として特定の種類のみに制限(108条1項4号)が可能(ア誤り:一律ではなく種類株式での一部制限も可)。承認手続:譲渡制限株式の譲渡には会社の承認が必要(136条〜)。承認請求先は会社(136条)。承認機関は定款に別段の定めがなければ、取締役会設置会社は取締役会、非設置会社は株主総会(139条1項)(イ正しい)。承認拒否の場合の対応:会社が承認しない場合は、①会社が自ら買い取る(140条1項)または②指定買取人(会社が指定する第三者)が買い取る(140条4項)のどちらかを選択できます(ウ誤り:会社自身の買取りも可能)。無承認譲渡の効力(エ正しい):無承認で行われた譲渡は、会社に対しては無効(株主名簿への名義書換不可・議決権行使不可等)ですが、当事者間では有効。定款変更の要件(オ誤り):株式の全部に譲渡制限を設ける定款変更は、株主の自由譲渡性を制限する重大性から、特別決議よりも加重された特殊決議(309条3項1号)が必要。普通決議では足りない。

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【理論的背景】

株式の自由譲渡性(127条)は株式会社の根本的な特質の一つであり、株主が事業から撤退するためのルートを常に開いておくことで、投資家が安心して株式に投資できる環境を保障します。しかし、閉鎖会社(同族会社・中小企業)では「望まない第三者が株主になること」を防ぎたいというニーズがあります。そこで定款による譲渡制限という制度が設けられており、これにより「株式は持っているが自由に売れない」という閉鎖的な会社形態(非公開会社)が作れます。無承認譲渡が当事者間では有効・会社に対して無効という相対的無効構成は、譲渡人と譲受人の私的な合意の効力(契約自由の原則)を尊重しつつ、会社の株主管理(名義書換・議決権の帰属)における不測の損害を防ぐための調和的解決です。

【条文構造】

会社法136条は「譲渡制限株式を譲渡しようとする株主は、当該株式会社に対し、当該譲渡制限株式の譲渡の承認をするか否かの決定をすることを請求することができる」と規定します。139条1項は「株式会社が第136条…の承認の請求をした場合において、株式会社がすべきかどうかの決定は…取締役会(取締役会設置会社)又は株主総会(それ以外)」と定め、但書で「定款に別段の定めがある場合はその定めに従う」としています。140条1項は会社による自己株式の買取り、同条4項は指定買取人の指定を規定し、承認拒否の場合の二択を明示しています。定款変更は原則として特別決議(309条2項11号・出席議決権の3分の2以上)によりますが、全株式に譲渡制限を設ける定款変更は会社法309条3項1号により特殊決議(議決権を行使できる株主の半数以上であって、その議決権の3分の2以上の多数)が必要です(オ誤り:普通決議では足りない)。

【試験での位置づけ】

行政書士試験での株式譲渡制限の問われ方は、①承認機関(取締役会or株主総会・定款で変更可)、②承認拒否時の対応(自己株式買取or指定買取人・二択)、③無承認譲渡の効力(対会社的無効・当事者間有効)、④定款変更の要件(全株式への譲渡制限設定は特殊決議=309条3項1号)の4点が典型です。本問エの「対会社的無効・当事者間有効」は最重要論点です。なお譲渡制限の「設定」は特殊決議だが、譲渡制限の「廃止」は特別決議(309条2項11号)である点も整理しておくとよい。また、株式の譲渡制限と「指定買取人への売渡請求」の手続(通知・供託・価格決定の申立て等)も発展問題として出題されることがあります。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 誤り。種類株式として特定の種類のみに譲渡制限を付すことも可能(108条1項4号)。全株式に一律でなければならないという限定はない。
  • イ: 正しい。会社法139条1項による。取締役会設置会社は取締役会が承認の有無を決定。非設置会社は株主総会。定款で別機関の指定も可能(例:取締役会非設置会社でも取締役の決定等)。
  • ウ: 誤り。140条1項により会社自身が自己株式として買い取ることも可能。指定買取人への売渡しが唯一の選択肢ではない。
  • エ: 正しい。無承認譲渡は対会社的に無効(株主名簿書換不可・議決権行使不可)だが、譲渡当事者間の合意(売買契約・贈与等)は有効(相対的無効)。
  • オ: 誤り。株式の全部に譲渡制限を設ける定款変更は特殊決議(309条3項1号:議決権を行使できる株主の半数以上、かつその議決権の3分の2以上)が必要。普通決議(過半数)でも通常の特別決議でも足りない。

【根拠条文】

会社法 第127条(株式の自由譲渡性)

会社法 第136条(譲渡承認の請求)

会社法 第139条第1項(承認機関・取締役会or株主総会)

会社法 第140条第1項・第4項(承認拒否時の会社買取・指定買取人)

会社法 第309条第3項第1号(全株式に譲渡制限を設ける定款変更の特殊決議)

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第127条(株式の自由譲渡性)、会社法第107条(全部の株式に譲渡制限を付す定款の定め)、会社法第136条〜140条(譲渡承認手続)、会社法第309条第3項第1号(全株式に譲渡制限を設ける定款変更の特殊決議) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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