商法・会社法28取締役会の権限・専決事項

行政書士 商法・会社法 問28:取締役会の権限・専決事項

取締役会設置会社における取締役会に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならないが、代表取締役以外の者を業務執行取締役として選定することはできない。
  • 取締役会は、重要な業務執行の意思決定を行うほか、取締役の職務の執行を監督する権限を有するが、定款で定めれば、この職務執行の監督権限を代表取締役に全面的に委ねて取締役会から排除することができる。
  • 取締役会が重要な財産の処分・譲受けおよび多額の借財を行う場合には、必ず株主総会の特別決議を経なければならない。
  • 取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数をもって行われるが、定款によって出席要件を引き下げることができる。
  • 取締役会の決議を省略するためには、全取締役が書面・電磁的方法による同意の意思表示をしなければならず、監査役設置会社では監査役も全員が異議を述べないことが必要である。正答
正答:取締役会の決議を省略するためには、全取締役が書面・電磁的方法による同意の意思表示をしなければならず、監査役設置会社では監査役も全員が異議を述べないことが必要である。

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取締役会の権限と決議に関する問題です。オが正しい。取締役会の決議省略(書面決議)は、全取締役が書面または電磁的方法で同意し、かつ監査役設置会社では監査役が異議を述べないことが条件です(370条)。アは誤り:業務執行取締役の選定も取締役会の権限です(363条1項2号)。イは誤り:取締役の職務執行の監督権限(362条2項2号)は取締役会の本質的・法定の機能であり、定款によっても排除できず、代表取締役に全面委任することもできません(監督機能を失えば取締役会の存在意義が損なわれるため)。ウは誤り:重要な業務執行の決定は取締役会内部の決議事項であり株主総会は不要。エは誤り:定款による出席要件の引き下げは会社法上認められていません(369条1項は定款による変更を許容していない)。

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オが正答の根拠(370条の書面決議要件)

取締役会の決議省略(370条)は、①定款に規定があること、②議決に加わることができる全取締役が書面・電磁的方法による同意の意思表示をすること、③監査役設置会社では監査役(全員)が異議を述べないことが必要です。「過半数の同意では足りない」「監査役の異議がないことが条件」という二点がポイントです。

各選択肢の誤りの核心

  • ア: 取締役会は代表取締役の選定だけでなく、業務執行取締役(代表取締役以外の取締役であって業務を執行するもの)の選定も行います(363条1項2号)。指名委員会等設置会社では代わりに執行役が業務執行を担いますが、通常の取締役会設置会社では業務執行取締役の選定権が取締役会にあります。
  • イ: 誤り。取締役会の監督権限(362条2項2号)は会社法上の本質的・法定機能であり、定款によって排除することも、代表取締役に全面的に委ねることもできません。イは「定款で排除できる/代表取締役に全面委任できる」としている点で誤りです。
  • ウ: 重要な財産の処分・多額の借財の決定は取締役会の専決事項(362条4項1号・2号)。株主総会の決議は不要(株主総会ではなく取締役会が決定する)。
  • エ: 369条1項の取締役会決議要件(議決加入取締役の過半数出席・過半数賛成)は定款によって引き下げることができません。加重(より高い要件を設定)は可能です。
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【理論的背景:取締役会の二大機能と会社法上の設計】

取締役会は会社法362条によって二つの本質的機能を担います。①意思決定機能:重要な業務執行の決定(362条4項の専決事項)。②監督機能:取締役の職務執行の監督(362条2項2号)。この二機能は相互に補完的です。監督機能があることで、業務執行権限を代表取締役に委ねつつも(363条1項)、その行使を取締役会が監視するという「委任と監視のガバナンス構造」が機能します。令和元年改正(2021年施行)では社外取締役の設置義務化(327条の2)が導入され、監督機能の実効性強化が図られました。

【実務・条文構造:362条4項の専決事項一覧と委任制限】

取締役会の専決事項(362条4項)は代表取締役等への委任が禁じられる事項です。①重要な財産の処分・譲受け、②多額の借財、③支配人その他の重要な使用人の選任・解任、④支店その他の重要な組織の設置・変更・廃止、⑤社債の募集(676条各号事項)、⑥内部統制システムの整備(取締役会設置会社・大会社で義務付け)、⑦取締役会設置会社による定款の定めに基づく役員等の責任免除(426条1項)。

これらは取締役会が直接決議しなければならず、代表取締役の専決事項とすることはできません。一方で「日常の業務執行」は代表取締役に包括委任できます(363条1項1号)。「重要な財産」「多額の借財」の基準は規模・総資産比率等を考慮した判例(最判平6.1.20)があり、「総資産の1〜2%程度」が一応の目安とされていますが個別判断になります。

【試験での位置づけ:専決事項と委任制限の頻出論点】

行政書士試験では「何が取締役会の専決事項か」「何を代表取締役に委任できるか」が問われます。典型的な引っかけは「重要な財産の処分は株主総会の承認が必要」(→誤り。取締役会内部の専決)や「代表取締役に全業務執行を委任できる」(→誤り。専決事項は委任不可)です。また370条の書面決議は「全員の同意+監査役の異議なし」が要件で、取締役会決議の省略を「過半数同意でできる」と誤解させる引っかけも頻出です。369条1項の定足数・賛成数が定款で加重のみ可・引き下げ不可という点も要注意です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 業務執行取締役(363条1項2号)とは代表取締役以外で取締役会が業務執行者として選定した者。公開会社では社外取締役は業務執行取締役になれません(2条15号イ)。
  • ウ: 重要な財産の処分が「株主総会の特別決議不要」なことは重要です。ただし「事業の全部または重要な一部の譲渡」(467条1項1号)は株主総会の特別決議が必要。「財産の処分」全般と「事業譲渡」は区別が必要です。
  • エ: 369条1項の「議決に加わることができる取締役」には特別利害関係を有する取締役は含まれません(369条2項)。利害関係取締役を除いた過半数出席・過半数賛成が必要です。定款による引き下げは不可ですが加重は可能(定款で「3分の2以上の賛成を要する」等)。
  • オ: 370条の「監査役が異議を述べない」という要件は、監査役が取締役会の議事に関与できる地位(議題への意見表明等)を持つことの反映です。監査役が異議を述べた場合は書面決議ができず、実際に取締役会を開催して決議しなければなりません。

【根拠条文】

会社法 第362条第2項・第4項(取締役会の権限・専決事項)

会社法 第363条第1項(業務執行取締役)

会社法 第369条第1項(取締役会の決議要件)

会社法 第370条(取締役会の決議の省略・書面決議)

【補足】

362条4項の専決事項の列挙は暗記必須。370条の書面決議は「全取締役同意+監査役異議なし」。369条の決議要件は定款による引き下げ不可・加重のみ可。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第362条(取締役会の権限)・第369条(取締役会の決議)・第370条(取締役会の決議の省略) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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