商法・会社法29代表取締役の権限・表見代表取締役

行政書士 商法・会社法 問29:代表取締役の権限・表見代表取締役

株式会社の代表取締役および代表権限に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 代表取締役は、会社の業務に関する一切の裁判上・裁判外の行為をする権限を有するが、この権限は内部規程により制限することができ、その制限は善意の第三者にも対抗することができる。
  • 取締役会設置会社において、代表取締役が任期満了後に退任した場合、新たな代表取締役が選定されるまでの間、退任代表取締役は代表権を失い、会社を代表することができなくなる。
  • 会社が「副社長」「専務取締役」「常務取締役」などの肩書きを付した取締役を置いている場合、善意の第三者がこれらの者を代表取締役であると信じて取引を行ったとしても、会社はその責任を負わない。
  • 代表取締役は、会社の業務に関する一切の裁判上・裁判外の行為をする権限を有し、定款や取締役会の決議によってこの権限を制限しても、その制限を善意・無過失の第三者に対抗することができない。正答
  • 代表取締役が会社の名において行った行為が、その代表権の範囲内であれば、たとえ取締役会の決議を経ていない場合であっても、会社に対して常に有効な効力を生じる。
正答:代表取締役は、会社の業務に関する一切の裁判上・裁判外の行為をする権限を有し、定款や取締役会の決議によってこの権限を制限しても、その制限を善意・無過失の第三者に対抗することができない。

AI解説(初心者・標準・上級)

理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠条文・判例も明記。

初心者向けまずはここから。やさしく要点を解説

代表取締役の権限に関する問題です。エが正しい。会社法349条4項は、代表取締役は「株式会社の業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有する」と定め、同5項は「前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない」と定めています。つまり内部的な制限(定款・取締役会決議等による)があっても、善意の第三者には対抗できません。エはこれを正確に述べており正しい。アは誤り:制限を善意の第三者に対抗することはできません(349条5項)。ウは誤り:表見代表取締役の規定(354条)により、会社は責任を負う場合があります。

標準試験対策の基準レベル

エが正答の根拠(349条4項・5項の構造)

349条の重要な二段構造:①4項:代表取締役は「業務に関する一切の裁判上・裁判外の行為をする権限」(包括的代表権)を持つ。②5項:この権限に加えた制限は「善意の第三者に対抗できない」。条文は「善意の第三者」のみを保護しており、判例・通説は悪意・有過失の第三者には対抗できると解しています。エは「善意・無過失」と記述していますが、条文文言は「善意」のみです。

補足として、判例は「善意の第三者」には過失がある者も含まれると解する傾向があります(善意≒代表権制限を知らなかった者)が、この点は議論があります。本問では349条5項の文言「善意の第三者」を保護する点の正確な理解として、エを正答とします。

各選択肢の誤りの核心

  • ア: 「その制限は善意の第三者にも対抗することができる」が誤り。349条5項で対抗不可。
  • イ: 退任後も新取締役が選定されるまでは権利義務取締役・代表取締役として残任(346条1項・2項)。会社が代表者不在になることを防ぐための制度。
  • ウ: 354条の表見代表取締役:「社長」「副社長」「専務取締役」等代表権があると認められる名称を付した者が行った行為については、善意の第三者に対して会社が責任を負います(善意・無重大過失の第三者保護)。
  • オ: 取締役会の決議なしに行われた行為は、内部的な決議要件(362条4項の専決事項等)を欠く場合、取引相手が悪意・重過失のときは会社に効力が生じないとする判例があります(最判昭40.9.22)。「常に有効」とするオは誤り。
上級誤答論破・条文/判例まで深掘り

【理論的背景:包括的代表権と取引安全の保護】

代表取締役の包括的代表権(349条4項)は、会社との取引の安全を保護するための制度です。取引の相手方が会社の内部規程(業務分掌規程・稟議規程等)をすべて調査することは不可能であり、そのような調査負担を課すと商取引の円滑が著しく阻害されます。そこで会社法は「会社の業務に関する一切の行為について代表権あり」を推定し、内部的制限の外部効を否定(349条5項)することで取引安全を確保しています。この思想は商法14条(表見支配人)・354条(表見代表取締役)等にも貫かれており、一貫して「会社側の帰責性を重視し、善意の取引相手を保護する」という法政策を採っています。

【実務・条文構造:表見代表取締役(354条)の要件と効果】

354条は次の要件を満たす場合に会社が責任を負うと定めます。①株式会社が、取締役に「社長・副社長・専務取締役・常務取締役その他会社を代表する権限を有するものと認められる名称」を付すこと(名称の付与)。②当該名称を有する取締役が会社を代表する権限を有しないにもかかわらず、第三者と取引を行うこと。③第三者が善意であること(無重大過失を要するとする判例・通説)。効果:会社はその取引について責任を負います。

「名称を付した」という会社の帰責性(外観作出への関与)があることが要件であり、代表権がないと知っていた悪意の第三者は保護されません。また判例は「重大な過失がある場合」も保護されないとしており(最判昭52.10.14等)、「善意・無重大過失」が実質的な保護要件です。

【試験での位置づけ:判例が補完する区別の重要性】

行政書士試験で代表権関連の頻出ポイントは以下の三点です。①349条5項の「善意の第三者」保護:代表権制限の対抗不可(内部制限は外部に効力なし)。②354条の表見代表取締役:名称付与という帰責性を要件に、善意・無重過失の第三者保護。③取締役会決議を欠く代表取締役の行為の効力:専決事項(362条4項)に関する取締役会決議がない場合でも、相手方が善意・無重過失であれば会社に効力が生じる(最判昭40.9.22等)。選択肢オは「常に有効」としているため、悪意の第三者への効力まで認める誤った記述となります。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 「善意の第三者にも対抗できる」は349条5項に明確に反します。内部的な制限の典型例:「専務取締役は5000万円以上の契約を締結できない」という業務分掌規程。この規程を超えて締結した契約でも、相手方(善意)には有効。
  • イ: 権利義務取締役・代表取締役(346条1項・2項)は重要な制度。退任後も後任が就任するまで「権利・義務を有する」として行為し続けることができます。ただしこれは職務上の義務であり、任意に辞退することは許されません。
  • ウ: 354条の適用対象となる「名称」として、判例・通説は「社長・副社長・専務取締役・常務取締役」を例示します。「会長」は会社によって代表権あり/なしが異なりますが、名称から代表権があると外部から認識できる場合は354条が適用されうるとされます。
  • オ: 最判昭40.9.22は「取締役会の承認なしに代表取締役が行った行為は、相手方が悪意のときは会社に効力を生じない」と判示しています。善意の第三者には有効ですが、悪意には無効というのが判例の立場です。

【根拠条文】

会社法 第349条第4項(代表取締役の包括的代表権)・第5項(権限制限の対抗不可)

会社法 第354条(表見代表取締役)

会社法 第346条第1項・第2項(権利義務取締役・代表取締役)

【参照判例】

最高裁判所(小法廷)判決 昭和40年9月22日(代表取締役の行為と取締役会決議の関係)

最高裁判所(小法廷)判決 昭和52年10月14日(表見代表取締役と善意・無重過失)

【補足】

349条4項・5項の「代表権制限→善意第三者に対抗不可」と354条「表見代表取締役→名称付与が要件」は別制度。それぞれの保護要件の違いを整理する。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第349条第4項・第5項(代表取締役の権限)・第354条(表見代表取締役) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

関連論点

代表取締役の権限・表見代表取締役頻出度A

商法・会社法の他の問題

1
商人の意義・固有の商人と擬制商人
2
商行為の種類・絶対的商行為と営業的商行為
3
商業登記の効力・登記事項の対抗力
4
商号・商号選定の自由と制限
5
支配人の権限・表見支配人
6
商事売買の特則・売買の目的物の検査・通知義務

全365問・科目別に解いて、行政書士に最短合格

行政法・民法・憲法を科目別に攻略。各問に根拠条文・判例とAI解説(3レベル)付き。