民法103民法債権各論

行政書士 民法 問103:民法債権各論

贈与に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか(現行民法に基づいて答えること)。

  • 贈与は、当事者の一方が無償で財産を与える意思を表示し、目的物を現実に引き渡すことによって成立する要物契約であり、書面または引渡しがなければ契約は一切成立しない。
  • 書面によらない贈与は、履行の終わった部分も含め、各当事者がいつでも自由に解除することができる。
  • 死因贈与(贈与者の死亡によって効力を生じる贈与)には、遺贈に関する規定は類推適用されない。
  • 負担付贈与において受贈者がその負担を履行しないときは、贈与者は贈与の解除をすることができるが、この場合でも贈与の解除は将来に向かってのみその効力を生じる。
  • 定期の給付を目的とする贈与は、贈与者または受贈者の死亡によって効力を失う。正答
正答:定期の給付を目的とする贈与は、贈与者または受贈者の死亡によって効力を失う。

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オが正しいです。民法552条は「定期の給付を目的とする贈与は、贈与者又は受贈者の死亡によって、その効力を失う」と規定しており、一身専属的な性格があります。アは誤りで、民549条により贈与は当事者の意思表示の合致のみで成立する諾成契約であり、目的物の引渡しは成立要件ではありません(書面も引渡しも不要で口頭でも成立します。要物契約ではありません)。イは誤りで、書面によらない贈与は「各当事者が解除することができる」とされていますが(民550条本文)、「履行の終わった部分については解除できない」という例外があります(民550条ただし書)。ウは誤りで、死因贈与には遺贈の規定が類推適用されます(民554条)。エは誤りで、負担付贈与の解除は遡及効を生じることがあります(双務契約的規律の準用)。

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オが正解です。民法552条は「定期の給付を目的とする贈与は、贈与者又は受贈者の死亡によって、その効力を失う」と規定しています。定期贈与は継続的な人的信頼関係を基礎とするため、当事者の一方の死亡により当然に終了するという一身専属的性格があります。これは遺贈とは異なり、相続人に効果が承継されません。

アは誤りです。民549条は「贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる」と規定し、贈与は意思表示の合致のみで成立する諾成契約です。目的物の引渡しは成立要件ではなく、口頭でも有効に成立します(書面によらない贈与は民550条により解除できるにとどまる)。「要物契約であり、書面または引渡しがなければ一切成立しない」というアの記述は誤りです。

イは誤りです。民法550条本文は「書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる」(2020年改正で「撤回」→「解除」に変更)とし、ただし書は「ただし、履行の終わった部分については、この限りでない」と規定しています。したがって書面によらない贈与であっても、履行済み部分については解除できません。「履行の終わった部分も含めいつでも自由に解除できる」は誤りです。

ウは誤りです。民法554条は「贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する」と規定しており、死因贈与には遺贈に関する規定(遺留分侵害等)が類推適用されます。

エは誤りです。民法553条は負担付贈与について「双務契約に関する規定を準用する」と規定しており、解除の効果は双務契約の解除の一般規律(民545条)が準用されます。解除の遡及効の問題は双務契約の規律による。

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【理論的背景】

贈与は民法549条以下に規定される無償契約の代表例です。有償契約(売買等)は対価的給付が双方向に生じますが、贈与は贈与者の一方的な無償給付です。民法は贈与について書面によらない贈与の解除可能性(民550条・2020年改正で「撤回」から「解除」に文言変更)という特則を設けており、これは軽率な贈与約束から贈与者を保護するとともに、贈与の成立要件を厳格に解さず(書面不要)、その代わり解除を広く認めるという政策的選択です。なお、書面による贈与は解除できず、それに関する法的紛争は履行強制・損害賠償の問題として処理されます。

【条文構造】

贈与に関する特則を整理します。

民549条:贈与の成立(無償・諾成契約・書面不要)。

民550条:書面によらない贈与の解除可能性(2020年改正で「撤回」→「解除」)。ただし履行済み部分は解除不可(一部履行があれば、その部分は解除不可)。「書面による贈与」には電子メールが含まれるか否かは解釈問題(通常、贈与の意思が明確に示された書面が必要)。

民551条:贈与者の担保責任の特則(无償契約ゆえ、売買の担保責任より軽い:民561条等より軽減)。

民552条:定期贈与(当事者の死亡で効力消滅・一身専属性)。

民553条:負担付贈与(双務契約の規定準用・解除・担保責任は売買規定を準用)。

民554条:死因贈与(遺贈の規定を準用・贈与者の死亡時に効力発生)。

【試験での位置づけ】

行政書士試験で贈与から出題される典型論点は、①書面によらない贈与の撤回可能性と「履行済み部分は撤回不可」という例外(民550条)、②定期贈与の一身専属性・死亡による終了(民552条)、③負担付贈与への双務契約規定の準用(民553条)、④死因贈与への遺贈規定の準用(民554条)の4点です。書面の有無・履行の有無・贈与の類型(定期・負担付・死因)によって適用ルールが変わる点が出題の核心です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 誤り(民549条)。贈与は口頭でも成立する諾成契約であり、引渡しを成立要件とする要物契約ではない。「要物契約・引渡しがなければ一切成立しない」は誤り。書面によらない贈与は民550条により解除が可能になるにとどまる(成立はする)。電子メール・LINEの文書が「書面」に当たるかは個別判断(裁判例により「書面」と認められる場合がある)。
  • イ: 誤り。民550条ただし書「履行の終わった部分についてはこの限りでない」が適用され、履行済みの部分は解除できない。「履行済みでも全体を解除できる」という誤りパターンに注意。贈与の目的物の引渡しが完了していれば、その物の贈与の解除は不可。
  • ウ: 誤り。民554条が「遺贈に関する規定を準用」と明文規定。死因贈与には遺留分侵害額請求の対象となる可能性もあり(判例・最判昭57.11.12)、遺贈に類似した規律が適用される。
  • エ: 誤り。民553条により負担付贈与に双務契約規定が準用される。解除の効果は民545条が準用され、遡及効が生じる(第三者の保護規定を含む)。「将来に向かってのみ」という特則は設けられていない。
  • オ: 正答。民552条の明文規定。定期贈与(例:毎月10万円を5年間贈与する)は当事者の人的信頼に基づくため、贈与者または受贈者のいずれか一方が死亡すれば終了する。相続人への承継はない(一身専属性)。

【根拠条文】

民法 第549条(贈与の成立)、第550条(書面によらない贈与の解除)、第552条(定期贈与の効力)、第553条(負担付贈与への双務契約規定の準用)、第554条(死因贈与と遺贈規定の準用)

【補足】

書面によらない贈与は解除可(2020年改正で「撤回」→「解除」)だが「履行済み部分は解除不可」が最頻出。定期贈与は一身専属性(当事者の死亡で終了・相続不可)。死因贈与には遺贈規定を準用(民554条)。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第549条(贈与の成立)、第550条(書面によらない贈与の解除)、第552条(定期贈与)、第553条(負担付贈与)、第554条(死因贈与) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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