行政書士 民法 問107:民法債権各論
民法上の組合に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア組合の業務執行は、組合員の過半数をもって決定するのが原則であるが、定款によって一人の業務執行組合員に委ねることはできない。
- イ各組合員は、組合の財産(組合財産)についての持分を単独で処分することができる。
- ウ組合員は、組合に損失が生じた場合でも、組合に対して出資した範囲を超えて責任を負うことはない。
- エ組合の業務を行う組合員(業務執行組合員)は、他の組合員に対して善管注意義務を負う。正答
- オ組合の解散事由として、組合の目的である事業の成功またはその成功の不能が規定されており、その場合は各組合員の請求を待たずに当然に解散する。
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エが正しいです。業務執行組合員は、組合事務の処理において委任の規定が準用される(民671条)ため、善管注意義務(民644条)を負います。アは誤りで、業務執行を一人の組合員に委ねることは可能です(民670条3項)。イは誤りで、組合員は組合財産の持分を単独で処分することはできません(民676条1項)。ウは誤りで、損益分配の割合は当事者の合意または出資の価額に応じて定まり(民674条)、組合員は出資額を超えて損失を分担する場合があるほか、組合債権者は各組合員に対し損失分担割合(または等しい割合)に応じて権利を行使できます(民675条2項)。オは誤りで、組合の解散事由(民682条)に「目的事業の成功または成功不能」は含まれますが、当然解散ではなく清算等の手続が必要です。
エが正解です。民法671条は「第644条から第650条までの規定は、業務執行者について準用する」と規定しており、委任の規定が業務執行組合員に準用されます。これにより業務執行組合員は民644条の善管注意義務(委任者=他の組合員に対してその事務を処理する受任者と同様の義務)を負います。
アは誤りです。民670条3項は「組合員の中から業務執行者を選任することができる」と規定しており、一人の業務執行組合員への委任は可能です。「できない」という記述が誤りです。
イは誤りです。民676条1項は「各組合員は、組合財産についての持分を処分したときは、その処分をもって組合及び組合と取引をした第三者に対抗することができない」と規定しており、実質的に組合財産の持分の単独処分は組合・第三者に対抗できないことから、単独処分は制限されています(合有)。
ウは誤りです。損益分配の割合は当事者の合意がなければ各組合員の出資の価額に応じて定まり(民674条1項)、組合員は出資額を超えて損失を分担しうるほか、組合の債権者は組合財産から弁済を受けられないとき各組合員に対して損失分担割合(または等しい割合)で権利を行使できます(民675条2項)。この責任は出資額に限定されるものではありません。
オは誤りです。民682条各号が解散事由を列挙していますが、「目的事業の成功・成功不能」(民682条1号・2号)が生じた場合は清算手続が必要となり、「当然解散」とは区別されます。
【理論的背景】
民法上の組合(民667条〜688条)は、複数の当事者が出資して共同事業を営む契約です。会社(法人格を持つ)とは異なり、組合は法人格を持たない「組合体」であり、組合財産は組合員全員の合有(合手的拘束のある共同所有)となります。合有は共有(各自の持分の自由な処分が可能)と異なり、持分の単独処分に制限があり、組合の存続・目的のために結合が維持されます。組合は、合同事業・共同事業(不動産の共同開発・弁護士の共同事務所等)に実務上多く利用されており、民法組合の理解は法律実務において重要です。
【条文構造】
民法組合の核心規定を整理します。
民667条:組合の成立(出資+共同事業の契約・諾成契約)。
民668条:組合財産の合有的性質(組合員全員の共有=合有)。
民670条:組合の業務執行(原則:組合員全員の過半数で決定。業務執行組合員の選任も可)。
民671条:委任規定の準用(業務執行組合員への善管注意義務等の準用)。
民674条:損益分配の割合(特約なければ各組合員の出資の価額に応じる)。
民675条:組合債権者の権利の行使(組合財産に対する行使・各組合員に対する損失分担割合または等しい割合での行使)。
民676条:組合員の持分の処分の制限(持分の単独処分は組合・第三者に対抗不可)。
民682条:解散事由(目的事業の成功・不能、存続期間満了、組合員全員の同意、その他)。
民683条:任意解散(各組合員は、已むことを得ざる事由があるときはいつでも解散請求可)。
【試験での位置づけ】
行政書士試験における組合の出題頻度は低め(頻出度C)ですが、以下の論点が問われます。①組合財産の合有的性質と持分の単独処分制限(民676条)、②業務執行の過半数決定原則と業務執行組合員の選任可能性(民670条)、③業務執行組合員への善管注意義務の準用(民671条・委任準用)、④組合の解散事由(民682条)と清算手続(民685条以下)。会社(株式会社・有限会社等)の法人格との対比(組合は法人格なし)や、民法の組合と商法上の合名・合資会社との関係も整理しておくとよいでしょう。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 誤り。民670条3項により業務執行組合員の選任は可能。業務執行組合員が選任された場合、その者が組合の業務を執行し、他の組合員は個別に業務執行権を持たなくなる(民670条3項後段参照)。
- イ: 誤り。民676条は組合財産の合有的拘束を規定。持分の処分は「組合及び組合と取引をした第三者に対抗不可」とされるため、実質的に単独処分は制限される。共有(各持分を自由に処分できる)との本質的な違いを理解することが重要。
- ウ: 誤り。損益分配の割合は特約または出資の価額に応じて定まり(民674条)、出資額の限度に限らない。組合債権者は、組合財産から弁済を受けられないとき、その選択に従い各組合員に対して損失分担割合(または等しい割合)で権利を行使できる(民675条2項)。出資額を超える責任を負いうる点で「出資の範囲を超えて責任を負わない」とするウは誤り。
- エ: 正答。民671条による委任規定の準用(民644条:善管注意義務)。業務執行組合員は組合の業務処理に際して他の組合員に対して善管注意義務を負い、怠ると債務不履行責任が生じる。
- オ: 誤り(部分的に正しい情報を含む)。民682条は解散事由を列挙(1号:目的事業の成功不能、等)するが、解散後は清算手続に入る(民685条以下)。「当然解散」という表現は厳密ではなく、解散決定→清算という手続を要する。
【根拠条文】
民法 第667条(組合の成立)、第670条(業務執行の決定)、第671条(委任規定の準用)、第674条(損益分配の割合)、第675条(組合債権者の権利の行使)、第676条(組合員の持分の処分の制限)、第682条(解散事由)
【補足】
組合財産の合有性(民668条・676条)と業務執行組合員への善管注意義務準用(民671条・644条)が核心論点。組合は法人格なし→持分の処分に制限あり(合有)という構造理解が重要。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第670条(組合の業務執行の決定)、第671条(委任規定の準用)、第674条(損益分配の割合)、第675条(組合債権者の権利の行使)、第676条(組合員の持分の処分の制限等)、第682条(組合の解散事由) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。