民法106民法債権各論

行政書士 民法 問106:民法債権各論

寄託に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか(現行民法に基づいて答えること)。

  • 現行民法上、寄託は諾成契約とされており、当事者間の合意のみで成立し、物の引渡しは契約の成立要件ではない。
  • 無償の寄託において、受寄者は自己の財産に対するのと同一の注意義務をもって寄託物を保管すれば足りる。
  • 受寄者は、寄託者の承諾を得ることなく、第三者(再受寄者)に寄託物を保管させることができる。正答
  • 受寄者が寄託物について権限なく処分した場合、寄託者は受寄者に対して不法行為または債務不履行に基づく損害賠償請求をすることができる。
  • 消費寄託(金銭等の消費できる物の寄託)において、受寄者は寄託物と同種・同等・同量の物を返還する義務を負い、元本に利息を付すかどうかは特約による。
正答:受寄者は、寄託者の承諾を得ることなく、第三者(再受寄者)に寄託物を保管させることができる。

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ウが誤りです。受寄者は、寄託者の承諾を得たとき、またはやむを得ない事由があるときでなければ、第三者(再受寄者)に寄託物を保管させることができません(民658条2項・2020年改正後)。原則として寄託者の承諾が必要であり、「承諾なく保管させることができる」とするウは誤りです。アは正しく(現行民法は寄託を諾成契約とした・2020年改正で明文化・民657条)、イは正しく(無償受寄者の注意義務の軽減・民659条)、エは正しく(損害賠償請求は競合して行使可能)、オは正しく(消費寄託の規律・民665条の2)。

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ウが誤りです。民法658条2項は「受寄者は、寄託者の承諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、寄託物を第三者に保管させることができない」と規定しており(2020年改正後)、受寄者は原則として寄託者の承諾(またはやむを得ない事由)なく再保管させることはできません。再受寄者は、寄託者に対して、その権限の範囲内において受寄者と同一の権利義務を負います(民658条3項)。ウの「承諾なく保管させることができる」という記述が誤りです。

アは正しいです。2020年施行の改正民法(民657条)は、寄託を「諾成契約」として明文化しました(改正前は要物契約と解されていた)。

イは正しいです。民659条は「無償で寄託を受けた者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管する義務を負う」と規定し、有償寄託(善管注意義務・民644条準用)より軽い義務に軽減されています。

エは正しいです。受寄者の権限外処分は債務不履行(寄託契約違反)と不法行為(民709条)の両方を構成しえます(請求権競合)。

オは正しいです。民665条の2第1項は「金銭その他の代替物の引渡しを目的とする寄託においては、受寄者は、受け取った物と種類、品質及び数量の同じ物をもって返還しなければならない」と規定し、利息については消費貸借の規定を準用します(民665条の2第3項・民589条:特約なければ無利息)。

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【理論的背景】

寄託(民657条〜666条)は、当事者の一方(寄託者)が相手方(受寄者)に物の保管を委託し、受寄者がこれを承諾する契約です。2020年施行の改正民法では、寄託を諾成契約として明文化(民657条)し、物の引渡しなしに合意のみで契約が成立するとしました。改正前は「受け取ること」を要件とする要物契約と解されていたため、実務(銀行の寄託契約書の締結等)との整合性のために改正されました。なお、書面によらない寄託は、物の引渡しがあるまで寄託者が解除できます(民657条の2第1項・消費貸借の書面規定と同様の構造)。

【条文構造】

寄託規定の核心を整理します。

民657条:寄託の成立(諾成契約・2020年改正で明文化)。

民657条の2:書面によらない寄託の場合、物の引渡し前に寄託者が解除可能。

民658条:1項(受寄者は寄託者の承諾なく寄託物を使用できない)。2項(受寄者は寄託者の承諾を得たとき、またはやむを得ない事由があるときでなければ、寄託物を第三者に保管させることができない)。3項(再受寄者は、寄託者に対し、その権限の範囲内で受寄者と同一の権利義務を負う)。いずれも2020年改正後の規律。

民659条:無償受寄者の注意義務の軽減(固有の注意=自己の財産と同一の注意)。有償受寄者は善管注意義務(民644条準用)。

民665条の2:消費寄託(同種・同等・同量の返還義務。利息については消費貸借の規定を準用)。

【試験での位置づけ】

行政書士試験における寄託の典型論点は、①2020年改正による諾成契約への変更(民657条)、②無償受寄者の注意義務の軽減(固有の注意・民659条)と有償受寄者の善管注意義務の対比、③受寄者の再保管の制限(原則として寄託者の承諾必要・民658条)、④消費寄託の規律(同種同等同量の返還・利息特約なければ無利息)の4点です。特に②の有償・無償の注意義務の差異は委任との比較問題として出題されやすい(委任・請負・雇用も含めた総合的な契約法の理解が必要)。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 正しい(2020年改正の核心)。改正前の要物契約説では、物を受け取らなければ寄託契約が成立せず、受寄者が物を受け取り拒んでも責任を負わなかった。改正後は諾成契約となったため、合意後に受寄者が引受けを拒むと債務不履行となる。ただし書面によらない寄託では寄託者に引渡し前の解除権がある(657条の2)。
  • イ: 正しい(民659条)。無償受寄者の軽減された注意義務(固有の注意)は「自己の財産と同程度の注意」であり、完璧な注意を要しない。例:自宅の倉庫と同様の管理で足りる。有償受寄者(例:倉庫業者)は善管注意義務(より高い注意水準)が求められる。
  • ウ: 誤り(正答)。民658条2項の承諾(またはやむを得ない事由)必要原則(2020年改正後)。倉庫業者の二次倉庫の利用等の実務問題と関連する。再受寄者は寄託者に対し、その権限の範囲内で受寄者と同一の権利義務を負う(民658条3項)。なお改正前の旧658条2項にあった「無断再保管は不可抗力でも責任あり」という規定は、改正により削除されている点に注意。
  • エ: 正しい。請求権競合(不法行為と債務不履行の競合)は民法の一般理論。寄託者は損害の全額賠償を求めるという同一目的のために、どちらの請求権も行使できる(重複回収は不可)。
  • オ: 正しい(民665条の2)。消費寄託の典型は銀行預金(消費寄託として金銭を預ける・銀行は同額を返還する義務)。利息(普通預金・定期預金の利率)は消費寄託契約の特約として定まる(原則無利息)。消費貸借(借主が使う目的)と消費寄託(保管を委託・受寄者が使用権を持つ)の違いにも注意。

【根拠条文】

民法 第657条(寄託の成立・諾成契約)、第658条第2項(再保管の制限・承諾またはやむを得ない事由)、第658条第3項(再受寄者の権利義務)、第659条(無償受寄者の注意義務)、第665条の2(消費寄託)

【補足】

2020年改正で寄託が要物→諾成契約に変更(民657条)。再保管の制限(寄託者の承諾またはやむを得ない事由が必要・民658条2項)は最重要論点(改正前の旧658条2項の「無断再保管は不可抗力でも責任」は削除済み)。無償受寄者の軽減された注意義務(固有の注意・民659条)も頻出。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第657条(寄託の成立)、第658条(受寄者による第三者への保管)、第659条(無償受寄者の注意義務)、第665条の2(消費寄託) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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