行政書士 民法 問115:民法総則・親族
失踪宣告に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア普通失踪(不在者が7年間生死不明の場合)の失踪宣告を受けた者は、失踪宣告の日から死亡したものとみなされる。
- イ特別失踪(戦争・船舶沈没等の危難に遭遇した不在者)の失踪宣告を受けた者は、失踪宣告の審判が確定した日から死亡したものとみなされる。
- ウ失踪宣告後に失踪者が生存していることが判明した場合、家庭裁判所は本人または利害関係人の請求によって失踪宣告を取り消さなければならない。正答
- エ失踪宣告が取り消された場合、失踪者は失踪宣告によって財産を取得した者から、当該財産の全部の返還を求めることができる。
- オ失踪宣告が取り消された場合、失踪宣告による婚姻関係の変動(例:配偶者が再婚した場合)について、前婚は完全に復活し、後婚は当然に無効となる。
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ウが正しいです。民法32条1項は「失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない」と規定しており、請求権者は「本人または利害関係人」(検察官は含まれない)、かつ取消しは義務的(「取り消さなければならない」)です。アは誤りで、普通失踪の死亡みなし時点は失踪宣告の日ではなく「7年間の期間が満了した時」です(民31条)。イは誤りで、特別失踪の死亡みなし時点は審判確定日ではなく「危難が去った時」です(民31条後段)。エは誤りで、失踪宣告取消し後は現存利益の限度でのみ返還義務があります(民32条2項)。オは誤りで、前婚は復活せず、配偶者が善意で再婚した場合は後婚が有効に存続します。
ウが正解です。民32条1項は「失踪者が生存すること…の証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない(義務的取消し)」と規定しています。取消請求者は「本人または利害関係人」であり、「検察官」は明文では含まれていません。ウは条文どおり「本人または利害関係人」の請求による義務的取消しを記述しており、正しい。
アは誤りです。民31条前段は「前条第1項の規定により失踪の宣告を受けた者は、同項の期間(7年間)が満了した時に、死亡したものとみなす」と規定しており、普通失踪の死亡みなし時点は「7年間の期間満了時」(失踪から7年後)です。失踪宣告の日ではありません。
イは誤りです。民31条後段は「危難に遭遇した者の場合には、その危難が去った時に死亡したものとみなす」と規定しており、特別失踪の死亡みなし時点は「危難が去った時」です。審判確定日ではありません。
エは誤りです。民32条2項は「前項の規定による失踪の宣告の取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない」と規定しており、また「取消し前に善意で財産を取得した者はその財産を現に利益を受けている限度において返還する義務を負う(現存利益の返還)」という解釈が通説です。「全部の返還」を求めることはできません。
オは誤りです。失踪宣告取消しによっても、配偶者が善意で再婚した場合は後婚が優先して有効に存続し、前婚は復活しないと解されています(民32条2項の趣旨・取引安全の観点)。
【理論的背景】
失踪宣告(民30条〜32条)は、長期間生死不明の不在者について法律関係の確定を図るために、家庭裁判所が「死亡したものとみなす」審判をする制度です。不在者の財産管理(民25条以下)が不在者の法律上の生存を前提とするのに対し、失踪宣告は「死亡みなし」によって相続・保険金受領・再婚等の法律関係を確定させます。失踪宣告は「みなし規定」(推定ではなく擬制)であるため、反証(生存の証明)によっては覆らず、取消しの審判が必要です。
【条文構造】
民法30条〜32条の規律を整理します。
民30条1項:普通失踪宣告(生死不明が7年間継続→家庭裁判所が失踪の宣告可)。
民30条2項:特別失踪(危難失踪)宣告(戦争・船舶沈没・震災等の危難に遭遇し1年間生死不明→宣告可)。
民31条前段:普通失踪の死亡みなし時点=7年間の期間満了時(失踪宣告の審判確定日ではない)。
民31条後段:特別失踪の死亡みなし時点=危難が去った時(審判確定日ではない)。
民32条1項:失踪宣告の取消し(生存または別の時点での死亡の証明で取消し義務的)。
民32条2項:取消しの効果の制限(善意でした行為には取消しの効果が及ばない)。
【試験での位置づけ】
行政書士試験における失踪宣告の典型論点は、①普通失踪(7年間)と特別失踪(1年間)の期間の違い、②死亡みなし時点(普通=7年間満了時・特別=危難が去った時。いずれも審判確定日ではない)、③取消しの効果(善意の行為への不遡及・現存利益の返還)、④再婚の問題(失踪宣告後に配偶者が善意で再婚した場合の後婚の有効性)の4点です。特に②の死亡みなし時点は頻出の引っかけであり、「失踪宣告の日(審判確定日)から死亡」という誤りパターンに注意が必要です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 誤り。普通失踪の死亡みなし時点は「7年間の期間が満了した時」(民31条前段)。具体例:Aが2010年1月に行方不明となり、2018年1月に失踪宣告の審判が確定した場合、Aは2017年1月(7年間満了時)に死亡したものとみなされる。この点は相続開始時期・保険金の算定等に影響する。
- イ: 誤り。特別失踪の死亡みなし時点は「危難が去った時」(民31条後段)。具体例:Bが乗った船が2010年5月に沈没し、2011年5月に失踪宣告審判が確定した場合、Bは2010年5月(危難が去った時=沈没した時)に死亡したものとみなされる。
- ウ: 正答(民32条1項)。請求権者は「本人または利害関係人」であり、検察官は含まれない(後見開始審判(民7条)等では検察官も請求権者だが、失踪宣告の取消しには検察官の規定はない)。また失踪者の生存等の証明があれば家庭裁判所は失踪宣告を「取り消さなければならない」(義務的取消し)。本選択肢は条文の文言どおりに記述されており、正答である。
- エ: 誤り(民32条2項)。取消しの効果が善意の行為に及ばない点(善意者保護)と、取得した財産の現存利益返還義務が重要。「全部の返還」ではなく「現存する利益の限度」での返還。例:失踪宣告後に相続した1000万円を500万円消費した場合、残り500万円を返還すれば足りる(現存利益)。
- オ: 誤り。失踪宣告取消しによって前婚が復活しないのは、配偶者の再婚の「善意」(配偶者が失踪者の生存を知らなかった)を保護するためです(民32条2項の趣旨)。前婚・後婚双方が有効という重婚状態にならないよう、後婚を優先して有効とする解釈が通説です。
【根拠条文】
民法 第30条(失踪の宣告)、第31条(失踪宣告の効力・死亡みなし時点)、第32条第1項(取消し)、第32条第2項(取消しの効果の制限)
【補足】
普通失踪の死亡みなし時点=7年間満了時(審判確定日ではない)。特別失踪の死亡みなし時点=危難が去った時。失踪宣告取消しの効果は善意の行為に及ばない(民32条2項)。現存利益の返還義務。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第30条(失踪の宣告)、第31条(失踪の宣告の効力)、第32条(失踪の宣告の取消し) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。