民法116民法相続

行政書士 民法 問116:民法相続

遺言執行者に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 遺言執行者は、遺言の内容を実現するために必要な一切の行為をする権限を有し、相続人に対して遺言の内容を通知する義務を負う。
  • 遺言執行者がある場合には、相続人は相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。
  • 遺言執行者は、正当な事由がある場合には、家庭裁判所の許可を得ることなく第三者にその任務を行わせることができる。
  • 遺言執行者は、その任務の開始に際し、遅滞なく遺言の内容を相続人に通知しなければならない。
  • 遺言執行者の指定の委託を受けた者(遺言執行者指定の受託者)は、遅滞なく遺言執行者を指定する義務を負い、就職を拒絶することができない。正答
正答:遺言執行者の指定の委託を受けた者(遺言執行者指定の受託者)は、遅滞なく遺言執行者を指定する義務を負い、就職を拒絶することができない。

AI解説(初心者・標準・上級)

理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠条文・判例も明記。

初心者向けまずはここから。やさしく要点を解説

オが誤りです。遺言執行者の指定の委託を受けた者(指定委託受託者)は、「遅滞なく」遺言執行者を指定する義務がある(民1006条2項)のは正しいですが、「就職を拒絶することができない」という記述は誤りです。指定された遺言執行者は就職を拒絶することができます(民1009条参照・遺言執行者は辞退可能)。アは正しく(民1012条・1007条)、イは正しく(民1013条1項)、ウは正しく(2019年改正後の民1016条1項により遺言執行者は自己の責任で第三者に任務を行わせることができ、家庭裁判所の許可は不要)、エは正しく(民1007条1項)。

標準試験対策の基準レベル

オが誤りです。民1006条2項は遺言執行者の指定の委託を受けた者(受託者)が「遅滞なく遺言執行者を指定して、相続人に通知する義務を負う」とし、また同条3項で「受託者がその指定を辞することができる」旨が読み取れます(指定自体の辞退は可能)。また、指定された遺言執行者は民1009条(遺言執行者の欠格事由)等の規定上、就職を拒絶(辞退)することができます。「就職を拒絶することができない」という記述が誤りです。

アは正しいです。民1012条1項は「遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権限を有する」と規定し、民1007条1項は「遺言執行者は、その任務の開始に際し、遅滞なく遺言の内容を相続人に通知しなければならない」と規定しています。

イは正しいです。民1013条1項は「遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない」と規定しており、相続人の妨害行為は禁止されます。

ウは正しいです。2019年施行の相続法改正により民1016条1項は「遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う」と改められ、復任は原則自由となりました(改正前は「やむを得ない事由がなければ復任できない」と原則禁止でしたが、改正で原則と例外が逆転しました)。いずれにしても遺言執行者の復任に家庭裁判所の許可は不要であり、ウの「家庭裁判所の許可を得ることなく第三者にその任務を行わせることができる」という結論は正しい。

エは正しいです(民1007条1項)。

上級誤答論破・条文/判例まで深掘り

【理論的背景】

遺言執行者(民1006条〜1021条)は、遺言の内容を実現するために選任・指定される者であり、遺言者の意思の実現を担う重要な役割を持ちます。2019年施行の相続法改正(民法・相続関連改正)では、遺言執行者の権限が大幅に明確化されました。特に、①遺言執行者の代理権の明確化(相続人のためではなく「遺言者の遺志を実現する者」として行為する・民1012条2項)、②特定財産承継遺言(特定の相続財産を特定の相続人に承継させる旨の遺言)における遺言執行者の権限(民1014条2項〜4項)、③相続人への通知義務(民1007条1項)の3点が重要な改正点です。

【条文構造】

遺言執行者の権限・義務に関する条文を整理します。

民1006条:遺言執行者の指定(遺言者が指定・または第三者への委託)。

民1007条:任務の開始(就任後遅滞なく遺言内容を相続人に通知・遺産目録の作成)。

民1008条:遺言執行者の権限(遺産目録の作成・相続人への通知義務・財産の管理権・執行に必要な一切の行為権)。

民1012条:一般的な遺言執行者の権限(相続財産の管理等一切の行為権・法定代理人類似の地位)。

民1013条:執行妨害行為の禁止(相続人の妨害行為は無効・遺言執行者への引渡し等は有効)。

民1016条:復任権(2019年改正後は「自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる」=原則自由に復任可。ただし遺言者が遺言で別段の意思を表示したときはその意思に従う。家裁許可不要)。

民1020条:委任規定の準用(遺言執行者は受任者と同様の義務・善管注意義務等)。

【試験での位置づけ】

行政書士試験における遺言執行者の典型論点は、①遺言執行者の権限(一切の行為権・民1012条)、②相続人の妨害行為禁止(民1013条)、③遺言内容の通知義務(民1007条1項・任務開始時の義務)、④復任権(2019年改正後は原則自由に復任可・遺言者の別段の意思があればそれに従う・民1016条)、⑤2019年改正による特定財産承継遺言における遺言執行者の権限強化(民1014条2項)の5点です。遺言執行者の就職拒絶権(辞退可能・法的義務なし)は、「指定されても強制されない」という重要な点として出題されます。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 正しい。民1012条1項(一切の行為権)・民1007条1項(通知義務)の複合的正しい記述。2019年改正で遺言執行者は「遺言者の意思の実現に必要な一切の行為をする権限を有する」ことが明文化され、法定代理権的性格が強調された。
  • イ: 正しい(民1013条1項)。遺言執行者がある場合の妨害禁止は重要。例:遺言で特定の相続人に不動産を相続させる旨が定められている場合、他の相続人が当該不動産を勝手に処分することは禁止される。違反した場合の法律効果(第三者への対抗可否)については民1013条2項・3項で整理されている。
  • ウ: 正しい(民1016条1項・2019年改正後)。改正後は遺言執行者は「自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる」とされ、復任が原則自由となった(改正前の「やむを得ない事由がなければ復任不可」から原則と例外が逆転)。遺言者が遺言で別段の意思を表示したときはその意思に従う。いずれにせよ家庭裁判所の許可は不要であり、ウの結論(許可なく復任可)は正しい。
  • エ: 正しい(民1007条1項)。通知義務は「任務の開始に際し、遅滞なく」という時期的要件がある。遺産目録の作成義務(民1011条)とあわせて、遺言執行者の初期段階の義務として重要。
  • オ: 誤り(正答)。指定された遺言執行者は就職(就任)を拒絶(辞退)することができる(任意的役割)。強制的に就職させる規定はない(民1009条は欠格事由を規定するのみ)。なお、指定の委託受託者(民1006条2項)は「遅滞なく遺言執行者を指定する義務」を負うが、指定された者が就職を強制されるわけではない。

【根拠条文】

民法 第1006条(遺言執行者の指定)、第1007条(任務の開始・通知義務)、第1012条(一切の行為権)、第1013条(執行妨害行為の禁止)、第1016条(復任権)

【補足】

2019年相続法改正で遺言執行者の権限(民1012条)・特定財産承継遺言における権限(民1014条2項)が明文化・強化された。復任権(民1016条)も改正で原則自由化(旧法の「やむを得ない事由がなければ復任不可」→改正後「自己の責任で復任可」)。指定された遺言執行者は就職拒絶(辞退)が可能(オが誤りである理由)。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第1006条(遺言執行者の指定)、第1007条(遺言執行者の任務の開始)、第1012条(遺言執行者の権限)、第1013条(遺言の執行の妨害行為の禁止)、第1016条(遺言執行者の復任権) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

関連論点

遺言執行者の権限・義務頻出度B

民法の他の問題

1
制限行為能力者・未成年者
2
制限行為能力者・被保佐人・被補助人
3
制限行為能力者・取消権・追認
4
意思表示・錯誤の現行規律
5
意思表示・錯誤の重要性・動機の錯誤
6
意思表示・詐欺・強迫

全418問・科目別に解いて、行政書士に最短合格

行政法・民法・憲法を科目別に攻略。各問に根拠条文・判例とAI解説(3レベル)付き。