民法20抵当権・法定地上権・一括競売

行政書士 民法 問20:抵当権・法定地上権・一括競売

次のア〜オの記述のうち、民法の規定および判例の趣旨に照らして**正しいもの**はどれか。

  • 土地と建物の両方に抵当権が設定されている場合に、競売によって土地と建物が別々の者に帰属した場合、法定地上権は成立しない。
  • 更地(建物のない土地)に抵当権を設定した後に、その土地上に建物が建築された場合、抵当権実行時に法定地上権が成立する。
  • 抵当権の設定当時、土地の上に建物が存在していた場合において、競売によって土地と建物が別人に帰属した場合、法定地上権が成立する。正答
  • 抵当権者は、抵当地に建てられた建物について、土地と建物を一括して競売することができるが、この場合、建物の代価からも優先弁済を受けることができる。
  • 根抵当権は、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するものであり、被担保債権の変更はできない。
正答:抵当権の設定当時、土地の上に建物が存在していた場合において、競売によって土地と建物が別人に帰属した場合、法定地上権が成立する。

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ウが正しいです。法定地上権(民388条)は、抵当権設定当時に土地上に建物が存在しており、競売によって土地と建物が別人の所有に帰した場合に、建物所有者のために土地に地上権が法定される制度です。この要件を充足するウが正しい。アは誤りで、土地と建物の両方に抵当権が設定されていた場合でも法定地上権は成立します(要件充足の問題)。イは誤りで、更地への抵当権設定後の建物建築は法定地上権の成立要件(設定時に建物が存在)を欠くため、原則として法定地上権は成立しません。エは誤りで、一括競売においても優先弁済は「土地の代価」のみから受けられ、建物の代価からは受けられません(民389条2項)。オは誤りで、根抵当権の被担保債権の範囲は元本確定前に変更できます(民398条の4)。

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ウが正解です。民法388条の法定地上権は次の要件を充足した場合に成立します。①抵当権の設定当時、土地の上に建物が存在したこと、②土地と建物が同一の所有者に属したこと(同一人所有)、③競売によって土地と建物が別人の所有に帰したこと。ウはこれらの要件を充足する典型的な事例であり、法定地上権が成立します。

ア:誤りです。土地と建物の両方に抵当権が設定されていた場合でも、設定時に建物が存在し、競売によって別人に帰属した場合は法定地上権が成立します。「両方に設定されていれば成立しない」は誤りです。

イ:誤りです。更地(建物なし)に抵当権を設定した後に建物が建築された場合は、設定時に建物が存在しないため、原則として法定地上権の成立要件(①)を欠き、法定地上権は成立しません。この場合、抵当権者は土地と建物を一括競売できます(民389条)が、建物代価からは優先弁済を受けられません。

エ:誤りです。民法389条2項は「前項の規定による建物の競売における買受人は、建物のみを競売した場合と同様に取り扱う」と規定しており、一括競売の場合でも土地の抵当権者は「土地の代価」からのみ優先弁済を受けます。建物の代価から優先弁済を受けることはできません。

オ:誤りです。根抵当権では、元本確定前に被担保債権の範囲を変更することができます(民398条の4第1項・元本確定前の変更)。ただし元本確定後は被担保債権が特定されます。

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【理論的背景】

法定地上権は、建物と土地が一体として経済的価値を有するという現実を踏まえ、土地と建物が競売によって別人に帰属した場合に建物の存続を保護するために法律が当然に設定する地上権です(民388条)。設定当事者の意思によらず法律の規定によって生じる点で「法定」地上権と呼ばれます。

法定地上権の趣旨は建物所有者(土地と建物が分離した後の建物の占有者)が土地を適法に使用できる権利を確保することにあり、建物のない土地(更地)に抵当権を設定した場合には、土地の交換価値を評価して融資したのに後から建物が建てられて価値が下落することを防ぐ観点から、法定地上権を成立させないという理解が確立されています。

【条文構造】

民法388条(法定地上権)の要件と効果:

[要件]

1. 抵当権設定当時、土地上に建物が存在した(建物の存在)

2. 土地と建物が同一の所有者に属した(同一所有者)

3. 競売によって土地と建物が別人の所有に帰した(所有の分離)

[効果]

  • 建物のために法定地上権が設定されたものとみなす
  • 地代は当事者が協議・定め、不調の場合は裁判所が定める

民法389条(一括競売):

  • 抵当地上の建物を抵当権者は土地と一括競売できる
  • ただし建物の代価からは優先弁済を受けられない(土地代価のみから)

根抵当権(民398条の2〜398条の22):

  • 一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度で担保
  • 元本確定前:被担保債権の範囲変更可(民398条の4)、元本確定請求可
  • 元本確定後:普通抵当権と同様の規律

【試験での位置づけ】

法定地上権は行政書士試験の最頻出抵当権論点の一つです。出題パターンは①要件の充足・非充足(更地→法定地上権不成立)、②一括競売の代価弁済(土地代価のみ)、③根抵当権との区別(普通抵当との比較)です。判例として最重要なのは「更地への抵当権設定後の建物建築では法定地上権不成立(最判昭36.2.10)」です。抵当権者は土地を更地として高く評価して融資しており、後の建物築造で法定地上権を成立させると交換価値が下落して抵当権者が不測の損害を被るため、というのが理由です(抵当権者が建物築造を予め承認していた場合でも同様)。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 土地と建物の両方に抵当権が設定されている場合でも、法定地上権の成立要件(①設定時に建物存在・②同一所有者・③競売後に分離)を充足すれば法定地上権が成立する。「両方設定→成立しない」は誤り。ただし競売によって同一人が土地と建物を取得した場合は法定地上権は成立しない(③不充足)。
  • イ: 更地への抵当権設定後の建物建築では法定地上権が不成立(要件①不充足)。これにより抵当権者(土地の価値で融資した者)の利益が保護される。なおこの場合、抵当権者は一括競売(民389条)で建物も含めて競売できる(建物代価からは優先弁済不可)。
  • ウ: 正答。法定地上権の典型的な成立場面。建物の存在+同一所有者+競売による分離という三要件が揃った場合。地代の協議不調時は裁判所が定める(民388条後段)。
  • エ: 一括競売(民389条)の代価弁済の制限は重要。「一括競売したのだから建物代価からも優先弁済を受けられる」という誤解が典型的な引っかけ。土地抵当権者が建物の代価から優先弁済を受けられないのは、建物への抵当権がないためで、一括競売はあくまでも競売の方法の問題。
  • オ: 根抵当権(民398条の2)は普通抵当権と異なり「不特定の債権」を一定の極度額まで担保する。元本確定前は被担保債権の範囲・極度額の変更が可能(民398条の4・398条の5)。元本確定後は普通抵当権と同様の規律が適用される。

【根拠条文】

民法 第388条(法定地上権)、第389条(抵当地上の建物の競売等)、第398条の2(根抵当権)、第398条の4(根抵当権の被担保債権の範囲及び債務者の変更)

【参照判例】

更地への抵当権設定後の建物建築と法定地上権の不成立(最判 昭和36年2月10日・民集15巻2号219頁)

【補足】

法定地上権の3要件(設定時建物存在・同一所有者・競売分離)を正確に覚える。一括競売(民389条)では建物の代価から優先弁済を受けられない点は頻出。根抵当権は元本確定前に被担保債権の範囲変更が可能(普通抵当との差異)。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第388条(法定地上権)、第389条(抵当地上の建物の一括競売)、第398条の2(根抵当権の内容) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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