行政書士 民法 問21:抵当権・順位・後順位抵当権者
抵当権の順位に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア同一の不動産に複数の抵当権が設定されている場合、抵当権の順位は登記の先後によって定まる。
- イ抵当権者は、他の抵当権者との合意によって、抵当権の順位を変更することができる。
- ウ抵当権の順位の変更は、利害関係を有する者(後順位抵当権者・用益権者等)の承諾がなければ、効力を生じない。
- エ抵当権の順位の変更は、当事者である抵当権者の合意のみで効力を生じ、その登記は第三者対抗要件にすぎない。正答
- オ先順位の抵当権が被担保債権の弁済によって消滅した場合、後順位の抵当権の順位が繰り上がる(順位上昇の原則)。
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エが誤りです。抵当権の順位の変更は、各抵当権者の合意に加えて、その登記をしなければ効力を生じません(民374条2項。改正前373条と同趣旨。登記は対抗要件ではなく効力要件)。「登記は対抗要件にすぎない」とするエは誤りです。アは正しく(民373条・登記の先後)、イは正しく(民374条1項・合意による順位変更)、ウは正しく(民374条2項・利害関係者の承諾)、オは正しく(先順位抵当権が弁済で消滅すれば後順位が繰り上がる=順位上昇の原則。日本民法は順位確定主義をとらない)。
エが誤りです。抵当権の順位の変更は、①各抵当権者の合意、②利害関係を有する者があるときはその承諾、に加えて、③登記をしなければその効力を生じません(民374条1項・2項)。この登記は単なる対抗要件ではなく効力発生要件である点が重要で、民法の登記=対抗要件という一般原則の例外です。「登記は第三者対抗要件にすぎない」とするエは誤りです。
ア:正しい。民法373条は「同一の不動産について数個の抵当権が設定されたときは、その抵当権の順位は、登記の前後による」と明文で規定しています。
イ:正しい。民法374条1項本文は「抵当権の順位は、各抵当権者の合意によって変更することができる」と規定し、当事者の合意によって順位変更が可能です。
ウ:正しい。民法374条1項ただし書は「利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならない」と規定しており、転抵当権者等の利害関係者の承諾が必要です。
オ:正しい。先順位の抵当権が被担保債権の弁済等によって消滅した場合、後順位の抵当権の順位が繰り上がります(順位上昇の原則)。日本民法は順位確定主義をとらず、先順位の消滅による利益は後順位抵当権者に及びます。
【理論的背景】
複数の抵当権が設定された不動産では、各抵当権者の優先弁済の順序(順位)が重要となります。民法373条は「登記の前後」によって順位が決まると定めています。この順位は固定的なものではなく、当事者の合意(民374条・順位変更)や法律行為(民376条・抵当権の処分)によって変動します。
日本民法は「順位確定主義」(先順位が消滅しても後順位は繰り上がらず空き順位が残る方式)を採用せず、「順位上昇の原則(順位昇進の原則)」を採ります。すなわち、先順位の抵当権が被担保債権の弁済等で消滅すると、後順位の抵当権の順位が当然に繰り上がります。
【条文構造】
抵当権の順位に関する規定を整理します。
[民法373条:順位の原則]
- 同一不動産上の複数抵当権→登記の前後で順位決定
[民法374条:順位の変更]
- 各抵当権者の合意による変更可(1項本文)
- 利害関係を有する者(転抵当権者等)があるときはその承諾が必要(1項ただし書)
- 登記をしなければその効力を生じない(2項)=登記は効力発生要件(単なる対抗要件ではない点が重要)
[民法376条:抵当権の処分(順位の譲渡・放棄等)]
- 順位の譲渡:自己の抵当権の順位を特定の者に譲渡(処分者と受益者の間で順位が入れ替わる)
- 順位の放棄:自己の順位を特定の者に放棄(処分者と受益者が同順位となり債権額に応じて按分配当)
- 抵当権の譲渡・放棄(一般債権者への抵当権利益の譲渡・放棄)
- 効果:処分した抵当権者と相手方(受益者)の間にのみ相対的効力が及び、他の抵当権者の順位は不変
[順位変更(374条)と順位の譲渡・放棄(376条)の違い]
- 順位変更:関係当事者全員の合意+登記で、順位そのものを絶対的に入れ替える
- 順位の譲渡・放棄:処分者と受益者の二者間のみの相対的効力
【試験での位置づけ】
行政書士試験での抵当権順位論点は①登記先後による順位(373条)、②順位変更の要件(合意+利害関係者の承諾+登記が効力要件・374条)、③順位上昇の原則、④順位の譲渡・放棄(376条)と順位変更(374条)の効力の違い(相対的 vs 絶対的)が定番です。特に「順位変更の登記は対抗要件にすぎない」という誤りパターン(本問エ。正しくは効力要件)が頻出です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 順位の登記先後(民373条)。同一日の登記は受付番号の先後で先後を判断(登記実務)。
- イ: 順位変更の合意(民374条1項本文)。順位の入れ替えにより影響を受ける抵当権者全員の合意が必要。
- ウ: 利害関係者の承諾(民374条1項ただし書)。「利害関係を有する者」=転抵当権者・抵当権を目的とした質権者等。承諾を欠く順位変更はその効力を生じない。
- エ: 正答(誤りの選択肢)。民374条2項は「順位の変更は、その登記をしなければ、その効力を生じない」と規定し、登記を効力発生要件とする(民法の登記=対抗要件という一般原則の例外)。「登記は第三者対抗要件にすぎない」は誤り。
- オ: 正しい。順位上昇の原則。1番抵当権が弁済で消滅すれば2番が1番に繰り上がる。日本民法は順位確定主義をとらない(後順位者は先順位消滅の利益を受ける)。なお民376条の「順位の放棄」は別概念で、処分者と受益者が同順位になる相対的効力にとどまる(他の抵当権者の順位は不変)点と混同しないこと。
【根拠条文】
民法 第373条(抵当権の順位)、第374条(抵当権の順位の変更)、第376条(抵当権の処分)
【補足】
順位変更(民374条)は「合意+利害関係者の承諾+登記(効力要件)」がセット。登記は対抗要件ではなく効力発生要件である点が頻出の誤りポイント。先順位抵当権の弁済消滅→後順位が繰り上がる「順位上昇の原則」(日本民法は順位確定主義をとらない)も正確に。順位変更(374条・絶対的効力)と順位の譲渡・放棄(376条・相対的効力)の区別に注意。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第373条(抵当権の順位)、第374条(抵当権の順位の変更)、第376条(抵当権の処分) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。