民法26意思表示・通謀虚偽表示・第三者保護

行政書士 民法 問26:意思表示・通謀虚偽表示・第三者保護

通謀虚偽表示(民法94条)に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 通謀虚偽表示による意思表示の無効は、善意の第三者に対しても主張することができる。
  • 通謀虚偽表示によって外形上所有権移転登記がなされている場合、その登記を信頼して当該不動産を取得した善意の第三者は保護されるが、登記を備えていなくてもよい。
  • 通謀虚偽表示の「第三者」には、当事者の一般承継人(相続人等)は含まれない。正答
  • 通謀虚偽表示によって隠れた行為(心裡留保された行為)も当然に無効となる。
  • 民法94条2項の「第三者」が善意である場合、その後さらに転得した者がいれば、転得者が悪意であっても転得者は保護される。
正答:通謀虚偽表示の「第三者」には、当事者の一般承継人(相続人等)は含まれない。

AI解説(初心者・標準・上級)

理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠条文・判例も明記。

初心者向けまずはここから。やさしく要点を解説

ウが正しいです。民法94条2項の「第三者」は「当事者またはその一般承継人(相続人等)以外の者」であり、通謀した当事者の包括承継人(相続人等)は第三者に含まれません。包括承継人は被相続人の地位をそのまま引き継ぐため、虚偽表示の無効を対抗できます。アは誤りで(民94条2項・善意の第三者には無効主張不可)、イは誤りで(善意の第三者は登記不要という判例があるが、少なくとも善意という主観要件は必要)、エは誤りで(隠れた行為は通謀虚偽表示の問題ではなく、別の法律行為の有効性の問題)、オについては「絶対的構成」か「相対的構成」かで議論があり、判例は絶対的構成(前主たる善意の第三者が保護されれば後の悪意転得者も保護)に立ちます(最判昭45.7.24)が、本問ではウが最も端的かつ争いなく正しい選択肢です。

標準試験対策の基準レベル

ウが正解です。民法94条2項の「第三者」とは、「当事者及びその一般承継人以外の者」と解されています(判例・通説)。一般承継人(相続人等)は被相続人(当事者)の法的地位をそのまま引き継ぐため、虚偽表示の当事者と同視され、第三者として保護されません。したがって虚偽表示の無効を相続人に主張することはできます(相続人は当事者として扱われる)。ウの記述は正確です。

ア:誤りです。民法94条2項は「前項(通謀虚偽表示の無効)の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない」と明文で規定しており、善意の第三者には無効を対抗できません。

イ:誤りです(部分的に不正確)。民法94条2項の「善意の第三者」の保護に登記(権利保護要件)が必要かどうかについては、判例は不要とする立場(善意で取引に入れば足りる・最判昭44.5.27)を採るとされますが、「登記を備えていなくてもよい」という部分のみが正しいだけで、「善意であることは依然として必要」という要件を看過してはなりません。選択肢の表現が「登記を備えていなくてもよい」のみを強調し、善意の要件を正確に示していない点で正確ではありません。

エ:誤りです。通謀虚偽表示の「隠れた行為」(第二の行為)とは、虚偽の外観の下に隠れている真の合意のことです(例:贈与を隠すために売買契約の外観を作った場合の「贈与契約」)。この隠れた行為が有効かどうかは、その行為自体の要件(方式・条件等)を満たすかどうかで判断します(民94条1項の「無効」は外形上の行為に適用)。

上級誤答論破・条文/判例まで深掘り

【理論的背景】

通謀虚偽表示(民94条)は、当事者が通謀して真意と異なる意思表示(虚偽の外観)を作出した場合に関する制度です。例えば、強制執行を免れるためにA所有の不動産をBに売却したように見せかける(実際はBに所有権を移転する意思がない)場合が典型例です。当事者間では無効ですが(民94条1項)、善意の第三者(Cが真の売主はAではなくBと信じて取引した場合)への保護が94条2項で規定されています。

94条2項の趣旨は「虚偽の外観を作出した者が、自らその外観の無効を善意の第三者に対して主張することを禁じる」(禁反言・エストッペルの趣旨)にあります。外観を信頼した善意の第三者を保護することで取引安全を確保します。

近時重要なのは「94条2項の類推適用」(最判昭45.9.22・民集24巻10号1424頁等)です。通謀虚偽表示でなくても、本人が虚偽の外観の作出に関与した場合(本人の帰責性)と、その外観を信頼した善意の第三者がいる場合に、94条2項を類推適用して第三者を保護する法理です。

【条文構造】

民法94条の規律:

[1項:虚偽表示の無効]

相手方と通謀して行った虚偽の意思表示は無効

[2項:善意の第三者保護]

1項の無効は善意の第三者に対抗できない

94条2項の「第三者」の範囲:

  • 含まれる者:虚偽表示の外観を信頼して新たに利害関係に入った者(買主・転買主・担保権者等)
  • 含まれない者:当事者・一般承継人(相続人等)

登記の要否(判例):

  • 94条2項の保護に登記は不要(善意で取引に入れば足りる)
  • ただし94条2項の類推適用場面では「無過失」を要求する判例もある

転得者の保護:

  • 善意の第三者Cからさらに転得したD(悪意)の扱いは学説上、絶対的構成(Cが保護されればDも保護)と相対的構成(各取得者個別に善悪判断)の対立がある。判例は絶対的構成に立つ(最判昭45.7.24・民集24巻7号1116頁)

【試験での位置づけ】

行政書士試験の94条論点は①善意の第三者への対抗不可(94条2項)、②「第三者」に一般承継人が含まれない、③94条2項の類推適用(帰責性ある外観作出+善意の第三者)が頻出です。「一般承継人も94条2項の第三者」という誤りパターン(ウと逆)が典型的引っかけです。また94条2項の「善意」のみで足りるか(無過失不要)か「善意かつ無過失」が必要かは場面によって異なります(本条では善意のみ・類推適用場面では無過失も要求されることがある)。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 民94条2項の効果:善意の第三者には無効を対抗できない(第三者側から無効を主張することはできる)。「善意の第三者にも無効を主張できる」は誤り。
  • イ: 94条2項の保護に登記は不要(判例)。ただし悪意・有過失の者には無効を主張できる(善意無過失かどうかは第三者の主観的事情で判断)。「登記を備えていなくてもよい」という部分は正しいが、「善意であること」を要件として明示していないため不完全。
  • ウ: 正答。一般承継人(相続人・合併後の存続会社等)は当事者と同視され94条2項の第三者に含まれない。これは94条1項の「無効」を承継するため。虚偽表示をしたAを相続したBは、Aと同様に虚偽表示の無効を第三者Cに主張できない(Aの地位を引き継ぐ)。
  • エ: 「隠れた行為」(心裡留保)は民法93条の問題(単独の内心留保)と混同しやすい。94条の「隠れた行為」とは、虚偽外観の下に存在する真の合意(例:贈与の外観の下に実は担保設定合意)であり、その有効性は当該行為自体の実質的要件で判断する(方式不備・法律上の禁止等がなければ有効なことも)。
  • オ: 転得者の扱いは学説上、絶対的構成(善意の第三者が一度現れれば後の悪意転得者も保護)と相対的構成(各取得者個別に善悪を判断)の対立がある。判例は絶対的構成に立つ(最判昭45.7.24・民集24巻7号1116頁。法律関係の早期安定・簡明の要請が根拠)。したがってオの記述(善意の第三者の後の悪意転得者も保護)自体は判例の立場に沿うが、本問では「正しいものはどれか」に対しウがより端的かつ争いなく正しい選択肢である。

【根拠条文】

民法 第94条第1項(虚偽表示の無効)、第94条第2項(善意の第三者への対抗不可)

【参照判例】

民法94条2項の類推適用(最判 昭和45年9月22日・民集24巻10号1424頁)

転得者の保護と絶対的構成(最判 昭和45年7月24日・民集24巻7号1116頁)

【補足】

94条2項の「第三者」には一般承継人(相続人等)は含まれない(当事者として扱われる)。善意の第三者への保護に登記は不要(判例)。94条2項類推適用(帰責性ある外観作出+善意の第三者)も重要な関連論点。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第94条(虚偽表示) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

関連論点

意思表示・通謀虚偽表示・第三者保護頻出度A

民法の他の問題

1
制限行為能力者・未成年者
2
制限行為能力者・被保佐人・被補助人
3
制限行為能力者・取消権・追認
4
意思表示・錯誤の現行規律
5
意思表示・錯誤の重要性・動機の錯誤
6
意思表示・詐欺・強迫

全365問・科目別に解いて、行政書士に最短合格

行政法・民法・憲法を科目別に攻略。各問に根拠条文・判例とAI解説(3レベル)付き。