行政書士 民法 問30:物権変動・動産売買の先取特権と即時取得の競合
担保物権の特色と物権変動に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア担保物権の付従性とは、担保物権が被担保債権と同一の債権者に帰属しなければならないという性質をいう。
- イ担保物権の随伴性とは、被担保債権が第三者に譲渡された場合、担保物権も当然にその者に移転するという性質をいう。正答
- ウ抵当権は担保物権の不可分性を有しないため、被担保債権の一部が弁済されれば、残債権に応じて抵当権の効力が縮小される。
- エ先取特権の物上代位性とは、先取特権の目的物が売却・賃貸・滅失した場合に、その目的物の代価・賃料・保険金等に対しても先取特権の効力が及ぶという性質をいい、民法304条が規定する。
- オ担保物権の不可分性は、すべての担保物権(留置権・先取特権・質権・抵当権)に認められる性質である。
AI解説(初心者・標準・上級)
理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠条文・判例も明記。
イが正しいです。担保物権の随伴性とは、被担保債権が譲渡等で第三者に移転した場合に担保物権もそれに随伴して移転するという性質です(民398条の7等・随伴性の根拠)。Aの抵当権付き貸付債権をBに譲渡した場合、抵当権もBに移転するのが原則です。アは誤りで、付従性は「担保物権が被担保債権に従属する(被担保債権なくして担保物権が単独では存在できない)」という性質です(同一性の問題ではない)。ウは誤りで、抵当権には不可分性があり(民372条・296条準用)、被担保債権の一部弁済があっても抵当権全体が残存します。エは正しい内容ですが、規定は民304条です(イの方が明確に正しい)。オは誤りで、不可分性の具体的な認否は担保物権の種類によって異なる場合があります。
イが正解です。担保物権の随伴性とは、「被担保債権が第三者に譲渡・移転した場合、担保物権(例:抵当権)も当然にその第三者に移転する」という性質です。例えば、AがBに対して抵当権付きの貸付債権を有し、これをCに譲渡した場合、抵当権もCに当然移転します(民398条の7参照・根抵当権については例外あり)。「被担保債権の移転に担保物権が随伴する」という性質が随伴性です。
ア:誤りです。付従性とは「担保物権は被担保債権に付従する(被担保債権の発生・消滅に連動する)」という性質です。被担保債権がなければ担保物権は発生せず(発生における付従性)、被担保債権が消滅すれば担保物権も消滅します(消滅における付従性)。「同一の債権者に帰属しなければならない」という内容は随伴性(債権と担保権が一緒に移転)のことを指しており、付従性の正確な説明ではありません。
ウ:誤りです。抵当権は不可分性を有します(民372条・296条の準用)。不可分性とは「債権の全部の弁済を受けるまで目的物の全部について担保物権の効力が及ぶ」という性質です。被担保債権の一部弁済があっても、残債権全額について抵当権全体が存続します。
エ:内容として正しいです。先取特権(および抵当権への準用・民372条・304条)の物上代位性とは、目的物が売却・賃貸・滅失等によって変形した場合に、その代価等(保険金・賃料・損害賠償等)に対しても担保権の効力が及ぶという性質です。ただしイの方が明確な正答です。
オ:誤りです。不可分性は留置権(民296条・「债権の全部の弁済を受けるまで全部について留置できる」)・先取特権(民305条・301条の準用)・質権(民350条・296条準用)・抵当権(民372条・296条準用)の全担保物権に認められるという理解もありますが、各担保物権での適用の強度・例外は異なります。「すべての担保物権に認められる」という断言は注意が必要です。
【理論的背景】
担保物権には共通して認められる性質が複数あります。学説・判例が整理する主な性質は次の4つです。①付従性:被担保債権なければ担保物権なし(被担保債権への従属性)。②随伴性:被担保債権が移転すれば担保物権も移転(被担保債権の移転への追随)。③不可分性:债権全部の弁済があるまで目的物全体に効力(目的物の一部でも債権全体を担保)。④物上代位性:目的物の価値変形物にも効力が及ぶ(抵当権・先取特権等に認められる・留置権には原則認められない)。これらは「担保物権の通有性」とも呼ばれます。
ただし、各担保物権によって認められる性質やその程度に差異があります。特に物上代位性は留置権には認められない(留置権は目的物の「留置」によってのみ機能する)という点が重要です。
【条文構造】
担保物権の通有性と根拠条文:
[付従性]
- 発生:被担保債権が成立しなければ担保物権も成立しない
- 消滅:被担保債権の消滅(弁済・時効・相殺等)→担保物権消滅
- 根拠:各担保物権の条文の構造(明文規定は個々の条文)
[随伴性]
- 被担保債権の譲渡・包括承継→担保物権も移転
- 根拠:担保物権の付従性の帰結
- 例外:根抵当権(民398条の7・元本確定前は随伴しない)
[不可分性]
- 债権の全部の弁済を受けるまで目的物全体に効力
- 留置権:民296条
- 先取特権:民305条(民296条準用)
- 質権:民350条(民296条準用)
- 抵当権:民372条(民296条準用)
[物上代位性]
- 目的物の売却代金・賃料・保険金・損害賠償等に効力が及ぶ
- 先取特権:民304条(物上代位の払渡し・引渡し前の差押え要件)
- 抵当権:民372条(民304条準用)
- 留置権:物上代位性なし(民302条の反対解釈等・留置権は占有によってのみ機能)
【試験での位置づけ】
行政書士試験の担保物権総論問題では、4つの通有性の意味・根拠条文・例外の理解が求められます。典型的な出題は「随伴性の意味は何か」「不可分性があれば一部弁済で担保が消えるか(消えない)」「物上代位は全担保物権に認められるか(留置権には認められない)」です。根抵当権の随伴性の例外(元本確定前)も出題対象です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 付従性の正確な定義:被担保債権に従属(ついていく)という性質。被担保債権が消滅→担保消滅(消滅における付従性)・被担保債権が成立しない→担保も成立しない(発生における付従性)。「同一の債権者に帰属」は随伴性の議論であり、付従性の定義として不正確。
- イ: 正答。随伴性の典型例:抵当権付き貸付債権の譲渡(債権譲渡)→抵当権も当然に移転(民398条の7の反対解釈で普通抵当権は随伴性あり)。ただし根抵当権(元本確定前)は随伴性がない(根抵当権の担保する債権の特定性がないため)。
- ウ: 不可分性(民296条・372条准用)の実際:残金10万円になっても抵当権全体が消えない。被担保債権全額の弁済があって初めて抵当権消滅。一部弁済で抵当権が縮小するのは契約で定めない限りない(不可分性の趣旨:債権者保護・担保目的物の一部だけ明渡しを強いられる不合理を回避)。
- エ: 物上代位(民304条・372条准用)の「払渡しまたは引渡しの前に差押え」要件:価値変形物(保険金等)が債務者に渡ってしまってから差し押さえても他の債権者への混同を防げないため、事前の差押えを要件とする。留置権には物上代位性がない(留置権は占有が核心であり、目的物の変形物まで効力を及ぼす制度設計がない)。
- オ: 担保物権の通有性として物上代位性が「留置権にはない」という点が最重要。留置権に物上代位性がない理由:留置権は「物を留置する」という事実上の圧力が本質であり、目的物がなくなった後に変形物に効力を及ぼす必要性・設計がない。物上代位が認められる担保物権:先取特権(304条)・抵当権(372条・304条準用)・質権(350条・304条準用)。
【根拠条文】
民法 第296条(留置権の不可分性)、第304条(先取特権の物上代位)、第305条(先取特権の不可分性)、第350条(質権への留置権・先取特権の準用)、第372条(抵当権への先取特権・質権の準用)
【補足】
担保物権の通有性4つ(付従性・随伴性・不可分性・物上代位性)の正確な意味と例外。「留置権には物上代位性がない」「根抵当権(元本確定前)には随伴性がない」が頻出論点。不可分性は一部弁済後も担保全体が残存する(被担保債権全額弁済まで)。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第296条(留置権の不可分性)、第305条(先取特権の物上代位)、第304条(先取特権の物上代位)、第372条(抵当権への準用) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。