民法44弁済・相殺

行政書士 民法 問44:弁済・相殺

弁済および相殺に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか(現行民法に基づいて答えること)。

  • 弁済は、原則として債務の本旨に従って行わなければならず、金銭債務の弁済は必ず現金(日本銀行券)で行わなければならない。
  • AはBに対して50万円の貸金債権を、BはAに対して80万円の売掛金債権を有している場合、Aは相殺の意思表示をすることによって両債権を対等額(50万円)で消滅させることができる。正答
  • 相殺の意思表示は、条件または期限を付けることができる。
  • 弁済の提供をすれば、債権者が受領を拒んでいても、その提供によって債務そのものが消滅する。
  • 弁済を行う第三者は、債権者との間で弁済の合意をしなければ、有効に弁済することができない。
正答:AはBに対して50万円の貸金債権を、BはAに対して80万円の売掛金債権を有している場合、Aは相殺の意思表示をすることによって両債権を対等額(50万円)で消滅させることができる。

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相殺の要件(505条)は、(1)同種の目的(両者の債権が金銭債権など同種)、(2)弁済期の到来(自働債権が弁済期)、(3)相殺禁止事由なし(法律・特約の禁止なし)であり、これらを満たせば相殺の意思表示(506条1項)をもって対当額で両債権を消滅させることができます。イはこれを正確に表現しており正しい。アは誤りで、金銭債務の弁済は振込・為替・小切手等でも有効です(「必ず現金」は誤り)。ウは誤りで、相殺の意思表示には条件・期限を付けることができません(506条1項ただし書「条件又は期限を付することができない」)。エは誤りで、弁済の提供(492条)の効果は債務者が「遅滞の責任を免れる」ことであって、債務そのものが消滅するわけではありません。債権者が受領を拒む場合に債務を消滅させるには、別途「供託」(494条)が必要です。オは誤りで、474条2項により利害関係のない第三者は債務者の意思に反して弁済できません(合意がなく、かつ債務者の意思に反する場合は不可)。

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イが正しい理由を505条・506条で確認します。民法505条1項「二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる」。イの事例はA(50万円の貸金債権・自働債権)とB(80万円の売掛金債権・受働債権)の双方が金銭債権(同種)で弁済期が到来している前提であれば、Aは相殺の意思表示(506条1項)をして50万円の対当額(Aの債権の全額)を消滅させることができます(イは正しい)。ウについて、506条1項後段「前項の意思表示は、条件又は期限を付することができない」として明文で禁止されています(ウは誤り)。アについて、金銭債務の弁済方法に「必ず現金」という制約はなく、銀行振込等でも有効(但し債権者が拒絶した場合の問題はある)。エについて、弁済の提供(492条・493条)の効果は「債務者が遅滞の責任を免れる」ことと「債権者が受領遅滞に陥る」ことであり、債務自体は消滅しません。債権者が受領を拒む場合に債務を消滅させるには供託(494条)が必要であるため、「提供によって債務そのものが消滅する」とするエは誤りです。オについて、474条2項の「利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済することができない」が根拠で、「合意なしに常に不可」ではなく、「利害関係あれば合意なしに弁済可」なのでオは誤り。

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【理論的背景】

弁済と相殺は債権消滅原因の中でも最重要の事由です。弁済は債権の目的・給付を実現することで債権が満足的に消滅するものであり、相殺は同種の債権を対当額で消滅させる意思表示です。相殺の機能は実質的には「自動担保機能」(相手方に対して持っている債権が自分の債務の担保として機能する)と「簡易な決済機能」(互いに支払いを行う手間を省く)であり、金融取引・商取引において重要な地位を占めています。2020年改正では相殺についても一定の改正(不法行為債権を受働債権とする相殺の制限・509条の整理)がありましたが、基本的な要件は維持されています。

【条文構造の精密な理解】

弁済関係の主要条文。

  • 474条: 第三者弁済。1項:第三者も弁済できる(原則)。2項:利害関係のない第三者は債務者の意思に反して弁済できない(オの誤りの根拠)。
  • 492条: 弁済の提供の効果→債務者は遅滞の責任を免れる。
  • 493条: 弁済の提供の方法→現実の提供(原則)・口頭の提供(例外)。

相殺関係の主要条文。

  • 505条1項: 相殺の要件(同種・弁済期・相殺禁止なし)。
  • 505条2項: 当事者の一方のみが期限の利益を有する場合も含む整理。
  • 506条1項: 相殺の方法(意思表示・条件・期限付け禁止)。
  • 506条2項: 相殺の効果(相殺適状時に遡及して消滅)。
  • 509条: 不法行為等に基づく損害賠償債務を受働債権とする相殺の禁止(悪意による不法行為・人身損害)。

【試験での位置づけ】

行政書士試験における弁済・相殺の典型的な出題パターンは、(a)第三者弁済の要件(利害関係の有無・債務者の意思との関係)、(b)弁済の提供の効果と方法(口頭の提供vs現実の提供)、(c)相殺の要件(同種・弁済期・禁止なし)、(d)相殺の意思表示への条件・期限付け禁止(ウのような問題)、(e)相殺適状時への遡及効(506条2項)の5パターンです。特に(d)相殺の意思表示は「条件・期限を付けることができない」という明文規定は受験生が見落としやすいため注意が必要です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 誤り。金銭債務の弁済は「債務の本旨に従った弁済」(407条参照)が必要ですが、「必ず現金」という制約はない。銀行振込は現代の取引慣行として有効な弁済方法。但し「持参債務の原則」(債権者の住所で弁済・484条)との関係で現実の弁済方法には注意が必要。
  • イ: 正しい(正答)。505条・506条の要件を満たす相殺の典型例。Aの自働債権(50万円)が対当額であり、Bの受働債権(80万円)のうち50万円分が消滅し、Bに30万円の残債権が残る。
  • ウ: 誤り。506条1項後段「条件又は期限を付することができない」。相殺は対当額での即時的消滅を本質とするため、不確定な条件・将来の期限を付すことは認められない。
  • エ: 誤り。弁済の提供(492条)の効果は「債務者が遅滞の責任を免れる」ことであり、債務そのものを消滅させる効果はない。債権者が受領を拒絶している場合に債務を消滅させるには、供託(494条)をする必要がある。「提供によって債務が消滅する」とする点が誤り。
  • オ: 誤り。474条は原則として第三者弁済を認める(1項)が、利害関係のない第三者は債務者の意思に反しては弁済できない(2項)。「合意なしに常に不可」ではなく、「利害関係あれば合意不要で弁済可」「利害関係なければ債務者の意思に反しては不可」というのが正確な規律。

【根拠条文】

民法 第474条第1項・第2項(第三者弁済)

民法 第492条(弁済の提供の効果)

民法 第505条第1項(相殺の要件)

民法 第506条第1項(相殺の方法・条件・期限付け禁止)

民法 第506条第2項(相殺の遡及効)

【参照判例】

(本論点は主に条文問題として整理)

【補足】

相殺の「条件・期限付け禁止」(506条1項後段)と、相殺の「遡及効」(506条2項・相殺適状時まで遡及して消滅)を合わせて理解すること。不法行為債務を受働債権とする相殺禁止(509条)も行政書士試験では出題されうる。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第474条・第492条・第493条・第505条・第506条 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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