行政書士 民法 問65:親権・親権の喪失
親権に関する次のア〜オの記述のうち、現行民法の規定に照らして**誤っているもの**はどれか。
- ア父母が婚姻中は、父母が共同して親権を行使する。
- イ父母が離婚する場合は、その協議で、父母の一方を子の親権者と定めなければならない。
- ウ親権者は、子の利益のために子の財産を管理する権限を有するが、子に代わって法律行為をする権限は有しない。正答
- エ親権者が子の財産について自己のために子の財産を処分した場合、その行為は無権代理となりうる。
- オ父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるときは、家庭裁判所は、子・検察官等の請求により、その父又は母について親権の喪失を宣告することができる。
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親権には、子の身上を監護・教育する権利義務(民法820条)と、子の財産を管理し子を代表する権利義務(民法824条・826条)が含まれます。親権者は子に代わって法律行為をする権限(法定代理権)も当然に有します。よってウが誤りです。ウは「法律行為をする権限は有しない」としていますが、これは誤りで、親権者は子の法定代理人として子に代わって法律行為を行う権限があります(民法824条)。アは正しく(民法818条)、イも正しく(民法819条)、エは利益相反行為に関する正しい記述で(民法826条)、オも民法834条の正しい記述です。
正答はウです。民法824条は「親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する」と規定しており、親権者は財産管理権だけでなく法定代理権(子を代表して法律行為を行う権限)も有します。したがって「法律行為をする権限は有しない」は誤りです。
各選択肢を確認します。ア(正):民法818条1項「成年に達しない子は、父母の親権に服する」、3項「父母の婚姻中は、父母が共同して親権を行う」。イ(正):民法819条1項・2項により、協議離婚の場合も裁判上の離婚の場合も、父母の一方を親権者と定めることが必要です。エ(正):民法826条は親権者と子の利益が相反する行為(利益相反行為)について、親権者が子のために特別代理人を選任することを請求しなければならないと定めます。親権者が子の財産を自己のために処分した場合は利益相反行為となり、無権代理として扱われます。オ(正):民法834条は虐待・悪意の遺棄等の場合に家庭裁判所が親権喪失宣告をできる旨を定めており、請求権者として子・検察官等が規定されています。
【理論的背景】
親権は、かつて「親の権利」として観念されていましたが、現代法では「子の利益のために行使される義務を伴う権利」として位置づけられています。民法820条が「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う」と規定するのはこの趣旨です。2011年(平成23年)の民法改正では、親権喪失の要件を「親権の濫用」から「子の利益を著しく害する」ものへと整理し、親権停止制度(民法834条の2)を新設しました。さらに、懲戒権の規定(旧822条)は2024年4月1日施行の改正で削除され、体罰等の禁止が明文化されました(現行民法821条)。
【実務・条文構造】
親権の内容は、身上監護権(民法820条〜823条)と財産管理権(民法824条〜826条)から成ります。身上監護権には、居所指定権(民法821条)・職業許可権(民法823条)・懲戒権(旧822条・2024年改正で削除)が含まれていましたが、現行法では体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならないと規定されています(民法821条)。財産管理権・法定代理権(民法824条)の行使において、親権者と子の利益が相反する場面では特別代理人の選任が必要となります(民法826条1項)。兄弟姉妹間で利益が相反する場合(民法826条2項)も同様です。親権の喪失(民法834条)は2年を超えて親権を行使できない状況が想定される場合に、親権停止(民法834条の2)は最長2年間の停止として使い分けられます。
【試験での位置づけ】
行政書士試験では、親権の内容(身上監護 vs 財産管理・法定代理)と利益相反行為(特別代理人の選任)が頻出です。「親権者は子の法定代理人か」という点は最も基本的な論点であり、ウのように「法律行為をする権限はない」と否定する選択肢は典型的な誤りです。また、親権喪失と親権停止の違い(要件・期間)も問われます。懲戒権の削除(2024年4月1日施行の改正)も近年の重要改正として注意が必要です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 正しい。民法818条3項が根拠。婚姻中は父母の共同親権、父母が離婚等で婚姻が解消された場合は民法819条により父母の一方を親権者と定める(離婚後単独親権)。本問は現行法(基準日時点で施行済みの法令)に基づく出題であり、現行の離婚後単独親権を前提とする。
- イ: 正しい。民法819条は協議離婚・裁判上の離婚いずれの場合も父母の一方を親権者と定めることを要求する。親権者の定めのない離婚は認められない。
- ウ: 誤り(正答)。民法824条は財産管理権と法定代理権をともに規定する。「法律行為をする権限はない」は明確に誤り。
- エ: 正しい。民法826条の利益相反行為の判断は外形標準説(行為の外形上利益相反であれば足りる)による(最判昭42.4.18)。親権者が特別代理人を選任せずに利益相反行為を行った場合は無権代理となり、追認がなければ子に対して効力を生じない。
- オ: 正しい。民法834条が根拠。2011年改正で親権停止(民法834条の2・2年以内)も創設されており、喪失と停止を使い分ける点も重要。
【根拠条文】
民法 第818条(親権者)、第819条(離婚又は認知の場合の親権者)、第820条(監護及び教育の権利義務)、第824条(財産の管理及び代表)、第826条(利益相反行為)、第834条(親権喪失の審判)
【補足】
2024年4月1日施行の改正で懲戒権(旧822条)は削除され体罰禁止が明文化された(現行821条)。本問は基準日時点で施行済みの現行法(離婚後単独親権・民法819条)を前提とする。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第818条・第819条・第820条・第824条・第826条・第834条 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。