行政書士 民法 問79:相続財産の管理・遺産共有
遺産共有に関する次のア〜オの記述のうち、現行民法の規定に照らして**誤っているもの**はどれか。
- ア相続開始から遺産分割がされるまでの間、相続財産は共同相続人の共有状態にある。
- イ共同相続人の一人は、遺産分割前においても、その者の法定相続分に相当する相続分を第三者に譲渡することができる。
- ウ遺産共有においては、各相続人は単独でその持分に相当する割合で相続財産を占有し、使用収益することができる。
- エ遺産分割前に共同相続人の一人が自己の相続分を第三者に譲渡した場合、他の共同相続人は、価額及び費用を弁済して相続分の取戻しを請求することができる。
- オ2021年の民法改正により、遺産分割がなされないまま10年を経過した場合、各相続人は法定相続分に従った分割を求める権利を失う。正答
AI解説(初心者・標準・上級)
理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠条文・判例も明記。
2021年の民法改正(民法等の一部を改正する法律・2023年4月1日施行)により、相続開始から10年を経過した後に遺産分割の協議・審判を求める場合は、具体的相続分(寄与分・特別受益を反映した相続分)ではなく、原則として法定相続分に従って分割することになります(民法904条の3等)。つまり10年経過後は「法定相続分での分割しかできなくなる」のであって、「法定相続分に従った分割を求める権利を失う」(オ)は誤りです。アは正しく(民法898条)、イは正しく(民法905条)、ウは正しく(各共同相続人は持分権を有する)、エは正しく(民法905条2項・相続分取戻権)です。
正答はオです。2021年の民法改正(2023年4月1日施行)で民法904条の3が新設され、相続開始時から10年を経過した後に遺産分割を求める場合は、原則として「法定相続分または指定相続分」のみを基準とした分割となり、寄与分や特別受益を主張できなくなります。これは「権利を失う」のではなく、「主張できる内容が限定される(法定相続分に従った分割になる)」という規律です。10年経過後でも遺産分割自体は請求できますが、具体的相続分(寄与分・特別受益反映)は原則として主張できなくなります。オの「法定相続分に従った分割を求める権利を失う」は、むしろ法定相続分での分割が原則となることを逆に述べており誤りです。
各選択肢を確認します。ア(正):民法898条が遺産共有を規定。イ(正):民法905条は共同相続人の相続分譲渡を認めています。ウ(正):各共同相続人は持分権を有し、使用収益できます(民法249条の共有物の使用の規定が準用される場合もある)。エ(正):民法905条2項が相続分取戻権(払戻権)を規定します。
【理論的背景】
遺産共有(相続開始から遺産分割まで相続財産が共同相続人の共有状態にある)は、長期間放置されると不動産登記が複雑化し、所有者不明土地問題の主要原因となっていました。2021年の民法・不動産登記法の一括改正(2023年4月1日施行を中心に段階施行)では、この問題に対応するため複数の改正が行われました。民法904条の3(10年経過後の法定相続分への収斂・2023年4月1日施行)はその一つであり、原則として相続開始時から10年を経過した後は寄与分・特別受益を反映した具体的相続分を主張できず法定相続分(または指定相続分)に収斂しますが、例外として、(1)10年経過前に相続人が家庭裁判所に遺産分割を請求したとき、(2)10年の期間満了前6か月以内にやむを得ない事由により分割請求ができなかった場合にその事由消滅から6か月以内に請求したとき、は具体的相続分による分割を求めることができます。なお改正前に発生した相続にも適用され、2023年4月1日時点で既に10年経過している場合は同日から5年間(2028年3月末まで)の猶予が設けられています。
【実務・条文構造】
遺産共有に関する主要条文を整理します。民法898条1項:「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する」。民法898条2項(2021年改正新設):「相続財産について法第249条から第264条まで(共有の規定)の規定を適用するときは、法定相続分又は指定相続分をもって各相続人の共有持分とする」。民法905条1項:「共同相続人の一人は、遺産の分割前に、その相続分を第三者に譲り渡すことができる」。民法905条2項:相続分取戻権(他の共同相続人が価額と費用を弁償して取り戻せる。1か月以内)。民法904条の3(2021年改正新設・2023年4月1日施行):相続開始時から10年を経過した後に行う遺産分割は、原則として法定相続分または指定相続分で行う(寄与分・特別受益の主張制限)。ただし例外として、10年経過前に審判申立てがあった場合や相続人全員の合意がある場合は具体的相続分での分割が可能。
【試験での位置づけ】
行政書士試験では、2021年の改正(2023年施行)が出題対象に加わります。特に民法904条の3(10年経過後の具体的相続分の主張制限)は新設規定として重要です。また、相続分の第三者への譲渡と取戻権(民法905条)は改正前からの規定ですが、引き続き出題されています。オのような「権利を失う」という誤った表現と、「具体的相続分の主張ができなくなる(法定相続分での分割のみ)」という正確な理解を区別できるかが問われます。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 正しい。民法898条1項が根拠。「共有」という用語が使われているが、遺産共有は通常の共有(民法249条以下)と若干異なる性質を持つ(最大判昭50.11.7)。ただし2021年改正で共有規定の適用が明確化された(民法898条2項新設)。
- イ: 正しい。民法905条1項が根拠。相続分の譲渡が可能であり、譲受人は相続人の地位を承継して遺産分割協議に参加できる(承継取得)。
- ウ: 正しい。各共同相続人は法定相続分に応じた共有持分権を有し、持分に応じた使用収益が認められる。ただし具体的な使用方法については共有者間の合意・管理行為の決定(過半数)が必要な場合がある。
- エ: 正しい。民法905条2項が根拠。取戻権の行使期間は「譲渡の通知を受けた日から1か月以内」。取戻権は第三者への相続分譲渡を抑制し、共同相続人の利益を守る機能を持つ。
- オ: 誤り(正答)。10年経過後に「法定相続分での分割を求める権利を失う」は逆の記述であり誤り。正確には、10年経過後は「具体的相続分(寄与分・特別受益を反映)の主張ができなくなり、法定相続分のみに基づく分割に収斂する」という規律(民法904条の3)。
【根拠条文】
民法 第898条(遺産の共有)、第904条の3(10年経過後の遺産分割の制限・2021年改正新設)、第905条(相続分の取戻権)
【補足】
民法904条の3(2021年改正・2023年4月1日施行)は近年の最重要改正。「10年経過後は具体的相続分の主張ができなくなり法定相続分に収斂する」という規律を正確に理解することが重要。所有者不明土地対策との関連も確認のこと。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第898条・第905条・第907条・第908条の2・第909条 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。