民法80遺言の撤回・抵触行為

行政書士 民法 問80:遺言の撤回・抵触行為

遺言の撤回に関する次のア〜オの記述のうち、現行民法の規定に照らして**正しいもの**はどれか。

  • 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、前の遺言は抵触する部分について撤回されたものとみなされるが、抵触しない部分は有効に存続する。正答
  • 遺言と抵触する生前処分(遺言目的物の売却等)を行った場合でも、その生前処分は遺言を撤回する意思がなければ撤回の効力を持たない。
  • 遺言書を故意に破棄した者は相続欠格事由に該当するが、遺言者自身が遺言書を破棄した場合は遺言の撤回とはならない。
  • 一度撤回した遺言は、その後新たな遺言を作成して「撤回を撤回する」ことで、元の遺言の効力が回復する。
  • 遺言者が遺言書作成後に認知症となり意思能力を失った場合、その遺言は当然に無効となる。
正答:前の遺言が後の遺言と抵触するときは、前の遺言は抵触する部分について撤回されたものとみなされるが、抵触しない部分は有効に存続する。

AI解説(初心者・標準・上級)

理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠条文・判例も明記。

初心者向けまずはここから。やさしく要点を解説

前の遺言が後の遺言と矛盾・抵触する場合、抵触する部分については前の遺言が撤回されたものとみなされます(民法1023条1項)。ただし抵触しない部分は有効に存続します。これがアの根拠で正答です。イは誤りで、民法1023条2項は「遺言者がその遺言後に遺言と抵触する行為をしたときは、その抵触する部分については、遺言を撤回したものとみなす」と規定し、撤回の意思は不要です(客観的抵触で自動的に撤回とみなされます)。ウは誤りで、遺言者が故意に遺言書を破棄した場合は撤回とみなされます(民法1024条)。エは誤りで、撤回された遺言は「撤回の撤回」によっても効力が回復しません(民法1025条)。オは誤りで、遺言の有効性は遺言作成時の意思能力で判断されます。

標準試験対策の基準レベル

正答はアです。民法1023条1項は「前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす」と規定します。「抵触する部分のみ」が撤回とみなされ、抵触しない部分は有効に存続します。これがアの正確な内容です。

各選択肢を確認します。イ(誤):民法1023条2項は「遺言者がその遺言後に遺言と抵触する行為をしたときは、その抵触する部分については、遺言を撤回したものとみなす」と規定しており、生前処分による抵触も撤回の効力を持ちます。撤回の意思は不要であり、客観的な抵触事実で足ります。ウ(誤):民法1024条は「遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす」と規定します。遺言者自身による破棄は撤回として扱われます。エ(誤):民法1025条本文は「前三条の規定により撤回された遺言は、その撤回の行為が、取り消され、又は効力を生じなくなるに至ったときであっても、その効力を回復しない」と規定し、撤回した遺言の効力は原則として回復しません。オ(誤):遺言の効力は遺言作成時の意思能力によって判断されるため、後から認知症になっても既存の遺言の効力には影響しません。

上級誤答論破・条文/判例まで深掘り

【理論的背景】

遺言の撤回自由の原則(民法1022条)は、遺言者の最終意思を法的に実現するための根本的な保障です。人の意思は生涯を通じて変わりうるものであり、かつて作成した遺言に遺言者が死亡まで縛られるのは不合理です。撤回は新しい遺言・遺言と抵触する生前行為(売却等)・遺言書の破棄の3形態があります(民法1022条〜1024条)。「撤回の撤回」(民法1025条)が原則として効力を持たない理由は、遺言者が「撤回を撤回する」という迷いを繰り返す場合に相続関係が混乱するのを防ぐためです。ただし、撤回行為が詐欺・強迫によって取り消された場合は元の遺言の効力が回復する例外があります(民法1025条ただし書)。

【実務・条文構造】

遺言の撤回・抵触に関する主要条文を整理します。民法1022条:遺言はいつでも撤回できる(方式に従って)。民法1023条1項:後の遺言が前の遺言と抵触する場合、抵触部分のみ撤回とみなす。民法1023条2項:遺言後の抵触行為(生前処分等)は、抵触部分の遺言撤回とみなす(意思不要・客観的抵触で足りる)。民法1024条:遺言者が故意に遺言書を破棄した場合は、破棄した部分について撤回とみなす。故意の偽造・変造の場合は欠格事由(民法891条5号)にも注意。民法1025条:撤回された遺言は原則として効力を回復しない(例外:撤回行為自体が詐欺・強迫で取り消された場合)。遺言の意思能力:遺言時に遺言能力が必要(遺言能力は15歳から認められる・民法961条)。遺言作成後の能力喪失は既存の遺言の効力に影響しない(遺言時の能力が基準)。

【試験での位置づけ】

行政書士試験での遺言撤回の論点は、(1)撤回の3形態(新しい遺言・抵触行為・破棄)、(2)部分的撤回(抵触しない部分は有効)、(3)撤回の撤回(効力回復しない・民法1025条)、(4)遺言作成後の意思能力喪失(効力に影響しない)が中心です。エの「撤回を撤回すれば元の遺言が有効になる」は典型的な誤りです(民法1025条)。また、オの「後から認知症になったら遺言が無効」という誤り(遺言時の意思能力が基準)も頻出の引っかけです。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 正しい(正答)。民法1023条1項の規定通り。「抵触する部分のみ撤回」「抵触しない部分は有効存続」という「部分的撤回」の理解が重要。例えば第1遺言でA建物をBに、第2遺言でA建物をCに(Bへの遺贈を撤回せず)とした場合、A建物についてはCへの遺贈が優先される。
  • イ: 誤り。民法1023条2項は客観的な抵触事実のみで撤回効を認め、撤回の意思は不要。例えば遺言でA土地をBに遺贈するとしながら、生前にA土地をCに売却した場合、売却(生前処分)が遺言を撤回したものとみなされ、Bへの遺贈は撤回される。
  • ウ: 誤り。民法1024条前段は「遺言者が故意に遺言書を破棄したときは…遺言を撤回したものとみなす」と規定し、遺言者自身による故意の破棄を撤回として扱う。故意でない場合(紛失・火災等)は撤回とはならない。なお、相続欠格事由(民法891条5号)となるのは「相続人が遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した場合」であり、遺言者自身の破棄は欠格事由ではない。
  • エ: 誤り。民法1025条本文が根拠。「撤回の撤回」によっても元の遺言の効力は回復しない。ただし民法1025条ただし書により、撤回行為自体が詐欺・強迫により取り消された場合は例外的に元の遺言の効力が回復する。
  • オ: 誤り。遺言の有効性(遺言能力の有無)は遺言作成時において判断される(民法963条が準用する民法3条の2に関連する考え方)。作成後に認知症になっても既存の遺言は有効であり、遺言作成時に意思能力があった点が争われる形になる。

【根拠条文】

民法 第1022条(遺言の撤回の自由)、第1023条(前の遺言と後の遺言の抵触)、第1024条(遺言書の破棄による撤回)、第1025条(撤回された遺言の効力)

【補足】

「撤回の撤回による効力回復なし」(民法1025条)と「遺言能力は遺言作成時が基準」は頻出の誤りパターン。遺言撤回の3形態(新遺言・抵触行為・破棄)と部分的撤回(抵触しない部分は有効)をセットで押さえること。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第1022条・第1023条・第1024条・第1025条 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

関連論点

遺言の撤回・抵触行為頻出度B

民法の他の問題

1
制限行為能力者・未成年者
2
制限行為能力者・被保佐人・被補助人
3
制限行為能力者・取消権・追認
4
意思表示・錯誤の現行規律
5
意思表示・錯誤の重要性・動機の錯誤
6
意思表示・詐欺・強迫

全365問・科目別に解いて、行政書士に最短合格

行政法・民法・憲法を科目別に攻略。各問に根拠条文・判例とAI解説(3レベル)付き。