民法8代理・無権代理と本人の追認・相手方の保護

行政書士 民法 問8:代理・無権代理と本人の追認・相手方の保護

次の事例に関する記述のうち、民法の規定および判例の趣旨に照らして**誤っているもの**はどれか。 【事例】AはBから何らの代理権も与えられていないにもかかわらず、BのC所有の土地購入に関する代理人と称してCと売買契約を締結した。

  • Bが当該売買契約を追認した場合、原則として当該契約はBとCの間で有効に成立したものとみなされる。
  • Bが追認しない場合、Cは相当の期間を定めてBに対して追認するかどうかを催告することができ、期間内に確答がなければ追認を拒絶したものとみなされる。
  • CがAに代理権がないことを知らず、かつ知らないことに過失がない場合(善意無過失)、CはBに対して無権代理であることを理由に当該契約の履行または損害賠償を請求することができる。
  • Aが無権代理行為に係るBの相続人となった場合、Aは当該行為を追認することを拒絶することができる。正答
  • Cが善意かつ無過失である場合、CはBの追認があるまでの間、当該契約を取り消すことができる。
正答:Aが無権代理行為に係るBの相続人となった場合、Aは当該行為を追認することを拒絶することができる。

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エが誤りです。無権代理人Aが本人Bを相続した場合、AはBとしての追認拒絶権を主張することができないとするのが判例(最判昭40.6.18)です。無権代理人が本人を相続した場合、無権代理行為は有効なものとして確定します(追認拒絶は信義則上許されない)。アは正しく(民116条)、イは正しく(民114条・催告に対し確答なければ追認拒絶とみなす)、ウは正しく(民117条1項・無権代理人は善意無過失の相手方に対して履行または損害賠償の責任を負う)、オは正しく(民115条・善意の相手方は追認あるまで取消可)です。

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エが誤りです。判例(最判昭40.6.18)は、「無権代理人が本人を相続した場合、本人として無権代理行為の追認を拒絶することは、信義則に反して許されず、無権代理行為は有効に確定する」と判示しています。Aは無権代理行為の主体であり、その立場と本人としての追認拒絶を兼ねて主張することは矛盾行為として許されないからです。したがって「追認を拒絶することができる」は誤りです。

ア:正しい。民法116条は「追認は、別段の意思表示がない限り、契約の時に遡ってその効力を生ずる」と規定しており(遡及効が原則)、追認によって当初から有効な契約として扱われます(ただし第三者の権利を害することができません)。

イ:正しい。民法114条は「無権代理について本人の追認のない間は、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる」とし、「本人が相当の期間内に確答しないときは、追認を拒絶したものとみなす」と規定しています。

ウ:正しい。民法117条1項は「他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができなかったときは、相手方の選択に従い、相手方に対して履行または損害賠償の責任を負う」と規定しています。ただし相手方が悪意または過失があった場合はこの限りでない(117条2項)。

オ:正しい。民法115条は善意の相手方(悪意の相手方は除く)の取消権を認めています。取消しは本人が追認した後はできません。

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【理論的背景】

無権代理は、代理権のない者が他人(本人)のために代理行為をした場合をいいます。代理権は本人の授権(法定代理の場合は法律の規定)によってのみ発生するため、無権代理行為は原則として本人に効果が帰属しません(本人の不確知状態)。民法はこの不確定状態を解消するために、①本人の追認(遡及的有効化)、②追認拒絶(確定的無効)という手段を用意しつつ、③相手方の保護制度(催告権・取消権・無権代理人の責任)を設けています。

無権代理人が本人を相続した場合の判例法理は、代理制度・相続制度・信義則の交差点に位置する重要論点です。

【条文構造】

無権代理に関する条文整理:

[民法113条]:無権代理行為の効力(原則として本人に帰属しない)

[民法114条]:相手方の催告権と追認拒絶擬制

[民法115条]:善意の相手方の取消権(本人が追認しない間に限る)

[民法116条]:追認の効果(遡及的有効化・第三者保護あり)

[民法117条]:無権代理人の責任(履行または損害賠償)

  • 1項:善意無過失の相手方への履行または損害賠償責任
  • 2項:相手方が悪意または過失がある場合は免責(2020年改正で整理)

判例(最判昭40.6.18・第二小法廷):無権代理人が本人を相続した場合、追認拒絶は信義則上許されず無権代理行為は当然有効に確定。

判例(最判昭37.4.20・第二小法廷):本人が無権代理人を相続した場合は、本人は追認拒絶が可能(追認拒絶は信義に反しない)。ただし無権代理人の責任(民117条)は相続により承継する(無権代理人が相続した場合と扱いが逆になる)。

【試験での位置づけ】

行政書士試験の無権代理論点では、以下の場面が頻出です。

1. 無権代理人が本人を相続した場合:追認拒絶不可・行為は有効(最判昭40.6.18)

2. 本人が無権代理人を相続した場合:追認拒絶可(最判昭37.4.20)。ただし無権代理人の責任は承継する

3. 第三者(無権代理人でも本人でもない者)が相続した場合:原則として通常の承認・拒絶ルールによる

4. 催告権(民114条):確答なし→追認拒絶擬制(表見代理の催告と方向が逆)

「無権代理人が本人を相続した→追認拒絶できない」「本人が無権代理人を相続した→追認拒絶できる」という対比が試験の典型的な引っかけパターンです。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 追認の遡及効(民116条)は「別段の意思表示がない限り」として原則化。ただし第三者の既得権(第三者が善意で取得した権利)を害することはできない(民116条ただし書)。
  • イ: 民114条の催告に対し確答がない場合の擬制は「追認拒絶」(相手方保護のため、不確定状態の継続を避ける趣旨)。民20条(制限行為能力者の催告→確答なしで追認擬制)と方向が逆であることに注意。
  • ウ: 民117条1項の無権代理人責任は「代理権の証明ができず、かつ本人の追認を得られなかった場合」の選択的責任(履行または損害賠償)。2020年改正で相手方の「過失」がある場合も免責される旨が明文化(117条2項2号)。なお無権代理人が制限行為能力者である場合は責任を負わない(117条2項1号)。
  • エ: 正答(誤りの選択肢)。判例(最判昭40.6.18)は「信義則上、追認拒絶は許されない」として無権代理行為の有効確定を認める。無権代理人が自ら行った行為の責任を相続によって免脱することは矛盾行為であり、許されないという趣旨。
  • オ: 民115条の取消権は「善意の相手方」(悪意の相手方は除外)に認められる。本人が追認した後は取消不可。取消しの効果は取消時から遡及的に無権代理の効力を否定する(無効確定)。

【根拠条文】

民法 第113条(無権代理)、第114条(相手方の催告権)、第115条(相手方の取消権)、第116条(追認の効果)、第117条(無権代理人の責任)

【参照判例】

無権代理人が本人を相続した場合の追認拒絶不可・当然有効(最判 昭和40年6月18日・第二小法廷)

本人が無権代理人を相続した場合の追認拒絶可(最判 昭和37年4月20日・第二小法廷。無権代理人の責任は承継)

【補足】

民117条2項は2020年改正で整理。相手方の「過失」がある場合も無権代理人が免責される旨が明文化された点に注意(改正前は「悪意のみ」免責だった解釈もあり)。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第113条(無権代理)、第114条(無権代理の相手方の催告権)、第115条(無権代理の相手方の取消権)、第117条(無権代理人の責任)、第116条(追認の効果) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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