民法91民法総則

行政書士 民法 問91:民法総則

心裡留保(真意を留保した意思表示)に関する次のア〜オの記述のうち、民法の規定に照らして**正しいもの**はどれか。

  • 心裡留保による意思表示は、表意者が真意でないことを相手方が知っていた場合であっても、常に有効である。
  • 心裡留保による意思表示が無効とされる場合、その無効は善意の第三者にも対抗することができる。
  • 心裡留保による意思表示は、原則として表意者の真意が何であるかにかかわらず有効であるが、相手方が表意者の真意を知り、または知ることができたときは無効となる。正答
  • 相手方が表意者の真意を知っていた(悪意)場合の心裡留保は、取り消すことができる行為であり、表意者が取消権を行使して初めて無効となる。
  • 心裡留保は第三者を欺く詐欺的行為であるため、善意の第三者への対抗可否にかかわらず、取引安全よりも表意者の保護が優先される。
正答:心裡留保による意思表示は、原則として表意者の真意が何であるかにかかわらず有効であるが、相手方が表意者の真意を知り、または知ることができたときは無効となる。

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ウが正しいです。民法93条1項は「意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない」(原則:有効)と定め、ただし書で「ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする」と規定しています。つまり、原則有効で、相手方の悪意または有過失の場合に限り無効となります。アは誤りで、相手方が知っている場合は無効です。イは誤りで、心裡留保の無効は善意の第三者に対抗できません(民93条2項)。エは誤りで、心裡留保の効果は「無効」であり、取消しではありません。

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ウが正解です。民法93条1項本文は表意者が内心の真意と異なる意思表示をした場合でも「原則として有効」とし、これは表示行為の外観・取引安全を保護するためです。ただし書では「相手方が表意者の真意を知り(悪意)、または知ることができた(有過失)」ときは無効としており、相手方を保護する必要がない場合に効力を否定します。

アは誤りです。相手方が表意者の真意を知っていた場合(悪意の相手方)は、ただし書により意思表示は無効となります。「常に有効」は誤りです。

イは誤りです。民法93条2項は「前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない」と定めており、善意の第三者は保護されます(無効を主張できない)。

エは誤りです。心裡留保が無効となる場合(悪意・有過失の相手方との関係)の効果は「無効」であり、「取り消すことができる」という効果ではありません。取消しと無効の区別は民法の基本的概念です。

オは誤りです。民93条2項が善意の第三者を保護しており、取引安全は重要な保護法益です。心裡留保は必ずしも詐欺的行為ではなく(本人が内心に留保するだけ)、取引安全優先の立場がとられています。

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【理論的背景】

民法93条の心裡留保は、表意者が「自分は本当はそう思っていないが、表面上はそのような意思表示をする」という場合を規律します。典型例は冗談・社交辞令・脅迫による表示等です。意思表示の効力に関する民法の基本構造は「表示主義」(外部から認識できる表示行為を基準に効力を判断する)と「意思主義」(内心の真意を基準にする)の調和です。民法93条は、原則として表示主義(表示=外観による有効性)を採用しつつ、例外として相手方が悪意・有過失の場合には意思主義(真意の欠缺による無効)を認め、取引安全と真意尊重のバランスを図っています。

【条文構造】

民法93条の規律を整理します。

1項本文:心裡留保による意思表示→原則有効(表示主義)

1項ただし書:相手方が「悪意」または「有過失(知ることができた)」→無効(意思主義の例外的適用)

2項:1項ただし書による無効→善意の第三者には対抗不可(取引安全の保護)

他の意思表示の瑕疵(錯誤・詐欺等)との比較:

  • 錯誤(民95条):取消し(1項)・善意無過失の第三者に対抗不可(4項)
  • 詐欺(民96条):取消し(1項)・善意無過失の第三者に対抗不可(3項)
  • 強迫(民96条):取消し(1項)・第三者保護規定なし
  • 心裡留保(民93条):無効(ただし書)・善意の第三者に対抗不可(2項)

心裡留保は「無効」であり「取消し」ではない点が重要です。これは、心裡留保において表示の外観は存在するが、法律行為の効力根拠が存在しないためです。錯誤と比べ、心裡留保では相手方の悪意・有過失が要件であり(相手方を保護すべき必要性がないとき無効)、錯誤では表意者の重大な過失が取消しを制限するという構造の違いに注目することが大切です。

【試験での位置づけ】

行政書士試験で心裡留保から出題される典型論点は次の3点です。①原則有効・例外無効(相手方悪意/有過失のとき)という構造、②「取消し」ではなく「無効」という効果の区別、③93条2項の善意の第三者への対抗不可。錯誤(95条)・詐欺(96条)・強迫(96条)との横断比較として問われることも多く、それぞれ「取消し」か「無効」かという効果の違い、第三者保護要件の違いを一覧で整理しておくことが得点につながります。また、「有過失の相手方に対して有効か無効か」という点(無効)も出題されます。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 相手方悪意の場合は1項ただし書により無効。「常に有効」は誤り。なお、相手方善意(かつ無過失で足りる)のときは原則通り有効であり、その意思表示を有効として扱う相手方を保護するのが93条の趣旨。
  • イ: 93条2項の善意の第三者保護は明文で規定されている。これは通謀虚偽表示(94条2項)の第三者保護と同じ構造。「善意の第三者にも対抗できる」は誤りであり、取引安全の原則に反する。
  • ウ: 正答。93条1項の原則(有効)とただし書(悪意・有過失のとき無効)の正確な記述。
  • エ: 「取り消すことができる」は錯誤(95条)・詐欺・強迫(96条)の効果。心裡留保が無効となる場合(ただし書)は当初から「無効」であり、取消権の行使は不要。
  • オ: 93条は表示主義を原則とし、取引安全を保護する構造。相手方善意のときは表意者が真意でなくとも有効とされることからも、「取引安全を犠牲にして表意者を保護」という立場は誤り。

【根拠条文】

民法 第93条第1項(心裡留保・原則有効・例外無効)、第93条第2項(善意の第三者保護)

【補足】

心裡留保の効果は「無効」(取消しではない)。錯誤・詐欺・強迫(いずれも「取消し」)との区別を正確に覚えること。善意の第三者保護(93条2項)は94条2項と同様の構造。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第93条(心裡留保) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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