行政書士 民法 問92:民法総則
民法上の法人に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。
- イ法人の設立・存続は法律の規定によるものとされており、法律の根拠なく私人が法人を創設することはできない。
- ウ法人は、代表者の行為について、その不法行為によって生じた損害を賠償する責任を負うが、その場合でも代表者個人の不法行為責任は免除される。正答
- エ法人の理事その他の代理権を有する者の代理行為は、法人のために行うものとして相手方に示されていれば、その効果は法人に帰属する。
- オ法人の財産をもって義務を完済することができない場合において、その旨を登記したときは、法人は、当該登記の後に生じた義務についてのみ有限責任となる。
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ウが誤りです。法人の代表者がその職務を行うについて第三者に損害を加えた場合、法人は損害賠償責任を負います(一般社団法人法78条等。なお旧民法44条は2006年の一般法人法整備で削除され、現在は一般法人法78条等が規律します)が、代表者個人の不法行為責任(民709条)が免除されるわけではありません。法人と代表者は連帯して損害賠償責任を負います。アは正しく(民34条)、イは正しく(法人は法律上の根拠によってのみ成立する法定主義・民33条)、エは正しく(代理の一般原則)、オは法人の有限責任の登記に関する記述です(一般社団法人法等の規定による)。
ウが誤りです。一般社団法人法78条は「一般社団法人は、代表理事その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」と規定しており、法人が損害賠償責任を負います(旧民法44条は2006年の一般法人法整備で削除され、現在はこの一般法人法78条等が規律します)。しかしこれは代表者個人の不法行為責任(民709条)を免除するものではなく、法人と代表者が連帯して損害賠償責任を負うと解されています(不真正連帯)。「代表者個人の責任が免除される」という記述が誤りです。
アは正しいです。民34条は「法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う」と規定しています。
イは正しいです。日本民法は法人の設立に関して法定主義(法律の根拠によってのみ法人を設立できる)を採用しています(民33条1項)。
エは正しいです。法人の代表者が法人のために行う行為の効果は、代理の一般原則(民99条等)により法人に帰属します。
オは正しいです(一般社団法人法・一般財団法人法における有限責任規定の趣旨を踏まえた記述です)。
【理論的背景】
法人とは、自然人以外で法律上の権利能力が与えられた組織体です。日本民法は、法人の設立について「法定主義」(民33条)を採用しており、法律の根拠なく私人が任意に法人格を創設することはできません。これは権利能力のない社団(権利能力なき社団)の問題と対比されます。法人には、社団法人(人の集合体)と財団法人(財産の集合体)の2種類があり、現行法では一般社団法人と一般財団法人(一般社団・財団法人法)および公益社団法人・公益財団法人(公益法人認定法)という体系になっています。2006年の法改正以前は、社団法人・財団法人の設立に主務官庁の許可が必要でしたが(旧民法34条)、現行法では準則主義(要件を満たせば設立可能)に変更されました。
【条文構造】
民法の法人規定(民33条〜84条)の核心を整理します。
民33条(法人の成立):法律の規定によらなければ法人とならない(法定主義)。
民34条(法人の能力):法令・定款の目的範囲内で権利義務を有する(目的による制限)。
一般社団法人法78条(代表者の行為についての損害賠償責任):代表者が職務上行った不法行為について法人が賠償責任を負う。旧民法44条は2006年の一般法人法整備で削除され、現在はこの規定が法人の不法行為責任を規律する。この場合、法人と代表者の関係は不真正連帯責任(各自が全額について責任を負い、一方が弁済すれば他方の責任も消滅する)となります。
「目的の範囲」の解釈:最高裁判例(最大判昭45.6.24)は、「目的の範囲内」に含まれるか否かは、定款に明示された目的だけでなく、「目的を遂行するために必要な行為」も含まれると広く解釈しています。したがって、定款に明記されていない行為でも、目的遂行に合理的に関連する行為は目的範囲内とされます。
【試験での位置づけ】
行政書士試験の民法総則「法人」から出題される典型論点は、①法人の設立に関する法定主義(民33条)、②目的の範囲による能力の制限(民34条)と判例の広義解釈、③代表者の不法行為責任と法人の連帯責任(一般社団法人法78条等。旧民44条は削除)の三点です。「代表者個人の責任が消えるか」という点(消えない)と、「法人は目的外の行為を一切できないか」という点(目的遂行に必要な行為は可能)が典型的な引っかけパターンです。また、一般社団法人と権利能力なき社団の区別(法人格の有無による法律効果の差異)も出題されます。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 正しい。民34条の明文規定。「目的の範囲内」には判例(昭45年最大判)によって「目的遂行に必要な行為」も含まれる広義解釈が採用されており、定款文言の字義的限定を超えた理解が必要。
- イ: 正しい。民33条1項「法人は、この法律その他の法律の規定によらなければ、成立しない」という法定主義。権利能力なき社団(法人格なし)との対比で理解する。権利能力なき社団は法人の不法行為責任規定(一般社団法人法78条等)が直接適用されず、代表者個人の責任が問題となる。
- ウ: 誤り(正答)。法人の不法行為責任(一般社団法人法78条等。旧民法44条は2006年の一般法人法整備で削除)は、代表者個人の不法行為責任(民709条)を免除しない。法人と代表者は不真正連帯責任を負う。実務上、被害者は法人・代表者双方に請求できる。
- エ: 正しい。法人の代理(代表)行為の効果が法人に帰属するのは代理の一般原則(民99条・顕名主義)による。ただし、代表者が法人の目的範囲外の行為をした場合や、代表権制限の登記がある場合には、法人への効果帰属が制限される場合がある。
- オ: 正しい(一般社団法人法等における社員・設立者の有限責任の趣旨を踏まえた記述)。一般社団法人・一般財団法人では社員・設立者は出資の限度で責任を負うにとどまる(持分会社の無限責任社員と異なる)。本問では誤りはウであり、オの正誤は結論に影響しない。
【根拠条文】
民法 第33条第1項(法人の成立・法定主義)、第34条(法人の能力・目的の範囲)、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 第78条(代表者の行為についての損害賠償責任)
【参照判例】
最大判昭和45年6月24日(法人の目的の範囲の広義解釈)
【補足】
法人の不法行為責任(一般社団法人法78条等。旧民法44条は2006年の一般法人法整備で削除)は代表者個人の709条責任と並立する(不真正連帯)。「代表者個人の責任が免除される」という誤りパターンは頻出。法人の設立に関する法定主義(民33条)も確認すること。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第33条(法人の成立等・法定主義)、第34条(法人の能力)、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 第78条(代表者の行為についての損害賠償責任) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。