登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問109:主な医薬品とその作用(外皮用薬・角質軟化・保湿成分)
外皮用薬に配合される角質軟化・保湿成分に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- アサリチル酸は皮膚の角質層にあるケラチンを溶解(軟化・膨潤)させることで角質を除去し、うおのめ・たこ・いぼ等の角化した部位に用いられる。また、殺菌作用も持つためにきびの外用薬にも配合されることがある。正答
- イイオウ(硫黄)は皮膚角質層を溶解させる角質軟化作用のみを持ち、抗菌・抗真菌作用はない。にきびへの配合は、単に脂漏部位の皮脂量を物理的に除去するためである。
- ウ尿素は高濃度(30〜40%)でのみ角質軟化作用を発揮し、一般的な市販の保湿外皮用薬には角質軟化濃度の尿素は含まれていない。
- エグリセリンはその強力な角質溶解作用によって、サリチル酸と同等の角質除去効果を持つ。
- オグリセリンを含む保湿製品の乳幼児への大量使用・広範囲塗布は、皮膚から吸収されてサリチル酸中毒(サリチリズム)を引き起こすおそれがあるため、6歳未満には使用できない。
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正答はア(正しいもの)です。
サリチル酸は角質軟化・殺菌・消炎の三つの作用を持ちます。角質層のケラチンを溶解・軟化させることでうおのめ・たこ・いぼ等に使用でき、殺菌作用によりにきびや皮膚感染予防にも配合されます。
各選択肢の誤りポイント:
- イ(誤): イオウは角質軟化作用に加え、抗菌・抗真菌作用も持ちます。にきびへの配合はその殺菌・皮脂抑制効果も理由です。
- ウ(誤): 尿素は低濃度(10〜20%)でも保湿・角質軟化作用を発揮し、市販品にも配合されています。
- エ(誤): グリセリンは保湿剤であり、角質溶解作用はサリチル酸とは全く異なります。
- オ(誤): サリチリズム(サリチル酸中毒)を起こすのはサリチル酸であり、保湿剤のグリセリンではありません。成分を取り違えた記述で誤りです。
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 旧選択肢オ「サリチル酸の乳幼児大量塗布でサリチリズム」は薬理的に正しく、正答ア(サリチル酸の角質軟化・殺菌)と二重正答となっていた。正答を一意化するため選択肢オを「グリセリンがサリチリズムを起こす」という成分取り違えの明確な誤りに改変。サリチリズムの主体がサリチル酸である事実(手引き第3章 外皮用薬 角質軟化成分)は解説本文・standard・advancedで正しく保持。正答=ア(変更なし)。 -->
角質軟化・保湿成分の分類と特性比較:
| 成分名 | 分類 | 主な作用 | 主な適用 | 注意事項 |
|---|---|---|---|---|
| サリチル酸 | ベータヒドロキシ酸(BHA)系 | 角質溶解・殺菌・消炎 | うおのめ・たこ・いぼ・にきび | 乳幼児大量塗布→サリチル酸中毒 |
| イオウ(硫黄) | 非金属元素 | 角質軟化・抗菌・皮脂分解 | にきび・脂漏性皮膚炎 | 金属と反応→変色注意 |
| 尿素(Urea) | 有機化合物 | 保湿・低濃度で角質軟化 | 乾燥肌・掌蹠角化症・亀裂 | 高濃度は角質軟化強い(処方品) |
| グリセリン(グリセロール) | 多価アルコール | 保湿(吸湿・水分保持) | 乾燥肌全般 | 角質溶解作用はほぼなし |
| ヘパリン類似物質 | 抗凝固・保湿 | 保湿・血行促進 | 乾燥肌・しもやけ(別論点) | 本問の論点とは別 |
各選択肢の解説:
- ア(正): サリチル酸(Salicylic acid)は角質層のケラチン繊維間の結合を切断してケラチンを溶解・軟化させます(角質溶解作用)。うおのめ(鶏眼)・たこ(胼胝)・疣贅(いぼ)等の肥厚した角質部位に高濃度で使用します。また殺菌(抗菌)作用・消炎作用も持つため、にきびの外用薬にも低濃度で配合されます。手引きでも角質軟化成分の代表としてサリチル酸が挙げられています。
- イ(誤): イオウ(硫黄)は角質軟化作用だけでなく、抗菌・抗真菌作用も有します。にきびへの配合は、皮脂の分解・過剰な皮脂の除去作用に加え、アクネ菌等の細菌に対する殺菌作用が目的です。「抗菌・抗真菌作用はない」とする記述は誤りです。
- ウ(誤): 尿素は濃度によって作用が変わります。低濃度(10〜20%)でも保湿・角質軟化作用があり、市販の保湿クリームや乾燥肌対策の外皮用薬にも広く配合されています。「30〜40%以上でのみ角質軟化」とする記述は誤りで、市販品にも角質軟化濃度の尿素が含まれています。高濃度(20〜40%以上)では特に強い角質溶解作用が出ます(処方品の掌蹠角化症治療等)。
- エ(誤): グリセリンは多価アルコール系の保湿剤で、皮膚の水分を保持する(吸湿・水分保持)働きがあります。角質を溶解・除去する作用はほとんどなく、サリチル酸とは作用機序が根本的に異なります。「強力な角質溶解作用」とする記述は誤りです。
- オ(誤): サリチリズム(サリチル酸中毒:耳鳴り・頭痛・過呼吸・意識障害等)を起こすのはサリチル酸であり、保湿剤のグリセリンではありません。グリセリンは多価アルコール系の保湿成分で、経皮吸収による全身毒性(サリチリズム)は起こさず、6歳未満への使用が一律に禁じられているわけでもありません。本肢は成分を取り違えた誤りです。なお、参考までに、サリチル酸製品(高濃度のうおのめ・たこ用パッチ等)を乳幼児に大量・広範囲塗布すると、皮膚バリアが未熟で経皮吸収が高まり、サリチル酸が全身に移行してサリチリズムを生じうる点は事実であり、その注意対象は「サリチル酸」です。
【サリチル酸・イオウ・尿素の薬理機序・サリチル酸中毒・皮膚科的使い分けの深掘り】
サリチル酸(Salicylic acid)の三重作用の詳細機序:
1. 角質溶解機序(Keratolytic action)
- 角質層は死んだ角化細胞(コルネオサイト)がデスモソーム(コルネオデスモソーム:コルネオデスモシン等のタンパク質で接着)によって結合
- サリチル酸はpHを下げ(弱酸性)、コルネオデスモシンの加水分解を促進→細胞間接着が弱まる
- さらにケラチン繊維自体にも作用して軟化・膨潤させる
- 結果:肥厚した角質層が剥離しやすくなる(角質除去・落屑促進)
2. 殺菌・防腐作用(Bacteriostatic action)
- 酸性条件(未解離型のサリチル酸)が細菌の細胞膜を透過→細胞内pHを低下させ代謝阻害
- グラム陽性菌(アクネ菌・黄色ブドウ球菌)への静菌効果
- 真菌(白癬菌)にも一定の効果
3. 消炎作用(Anti-inflammatory action)
- プロスタグランジン産生の一部抑制
- 濃度依存的(高濃度では角質除去が主体、低濃度では消炎・殺菌が主体)
サリチル酸の濃度別用途の整理:
| 濃度 | 用途 | 主な適用 |
|---|---|---|
| 0.5〜2% | 消炎・殺菌・にきびの補助 | にきび薬・化粧品のBHA成分 |
| 5〜10% | 角質軟化・落屑促進 | 頭皮のフケ・乾癬(処方品) |
| 15〜40% | 強い角質除去 | うおのめ・たこ・いぼ(パッチ型・液剤) |
サリチル酸中毒(サリチリズム:Salicylism)のリスクと機序:
サリチル酸(および関連薬アスピリン)の過量摂取・過剰吸収による中毒症状:
急性中毒の症状(血中サリチル酸濃度上昇に比例):
- 軽症(300〜500μg/mL):耳鳴り・頭痛・吐き気
- 中等症(500〜800μg/mL):過呼吸(代謝性アシドーシス+呼吸性アルカローシス)・発熱
- 重症(800μg/mL以上):意識障害・痙攣・腎不全
乳幼児が特に危険な理由:
1. 皮膚のバリア機能が未熟(角質層が薄い・脂質成分が未熟)→経皮吸収率が高い
2. 体表面積/体重比が大きい→同量でも体重あたりの吸収量が多い
3. 腎機能が未熟→排泄が遅い
登録販売者の対応:乳幼児の保護者が高濃度サリチル酸製品(うおのめ・たこ用パッチ等)を購入する際:
- 乳幼児には使用しないよう明確に伝える
- 年齢制限を確認(製品によって使用可能年齢が設定されている)
イオウ(硫黄 Sulfur)の多面的作用の機序:
イオウの角質軟化・抗菌・抗真菌作用の統一的機序:
- 皮膚との反応:イオウが皮膚表面の酸化還元反応→硫化水素(H₂S)・ペンタチオン酸等を生成
- 角質軟化:生成物が角質タンパクを変性・軟化
- 抗菌・抗真菌:H₂Sおよびイオウ酸化物が細菌・真菌の代謝酵素(SH酵素)を阻害
- 皮脂分解:酸化還元作用で皮脂(脂肪酸)を分解→皮脂分泌が多い脂漏部位のコントロール
イオウの注意点:
- 金属(銀・金・革)に接触すると変色・変質させる(硫化物形成)
- 配合禁忌ではないが、宝飾品・金属製品との接触を避ける注意喚起が必要
尿素の角質軟化の濃度依存性と保湿機序:
尿素(Urea H₂N-CO-NH₂)の作用:
保湿機序(低濃度:〜10%):
- 尿素は天然保湿因子(NMF:Natural Moisturizing Factor)の成分の一つ
- 高い吸湿性により角質層の水分を保持
- フィラグリンの分解産物としても皮膚に存在
角質軟化機序(中〜高濃度:10〜40%):
- 角質タンパク(ケラチン)の水素結合を破壊→ケラチンの変性・軟化
- 角質層の厚みを物理的に減少させる(落屑促進)
尿素の適用:
- 10〜20%:乾燥肌・アトピー性皮膚炎の保湿補助
- 20〜40%:掌蹠の角化症・肥厚した角質
グリセリンの保湿機序とサリチル酸との根本的な違い:
グリセリン(C₃H₈O₃:多価アルコール)の保湿機序:
- ヒドロキシ基(-OH)が多数ある→水と強力な水素結合→吸湿
- 角質層内の水分を大気から吸収して保持
- 角質タンパクへの化学的作用はほぼない(溶解・変性作用なし)
このためグリセリンは乾燥予防・保湿が目的で、肥厚した角質の除去・溶解にはほぼ寄与しません。「角質溶解作用がサリチル酸と同等」とする記述は全くの誤りです。
登録販売者の現場判断:角質軟化成分含有製品の販売時確認事項:
| 製品タイプ | 主要成分 | 確認すべき購入者状況 |
|---|---|---|
| うおのめ・たこパッチ(高濃度サリチル酸) | サリチル酸15〜40% | 年齢(乳幼児禁)・患部の確認(正しくうおのめ・たこか)・糖尿病・末梢血管障害の有無 |
| にきび外用薬(低濃度イオウ・サリチル酸) | イオウ・サリチル酸1〜5% | 年齢・使用部位・妊娠の有無(一部注意あり) |
| 乾燥肌保湿クリーム(尿素・グリセリン) | 尿素10〜20%・グリセリン | 傷口への使用可否(尿素は傷口注意)・使用部位 |
特に糖尿病・閉塞性動脈硬化症等の末梢血管障害がある患者には、高濃度サリチル酸製品の使用は壊疽(えそ)のリスクがあるため慎重対応(受診勧奨優先)が求められます。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第13節「外皮用薬」(角質軟化成分・保湿成分) 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。