登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問5:主な医薬品とその作用(鎮咳去痰薬)
鎮咳去痰薬に配合されるコデインリン酸塩水和物に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- アコデインリン酸塩水和物は非麻薬性の成分であり、依存性は認められていない。
- イコデインリン酸塩水和物は、作用が穏やかな末梢性鎮咳成分であり、延髄の咳中枢には作用しない。
- ウコデインリン酸塩水和物は12歳未満の小児には使用禁忌とされており、OTC医薬品においても同様の取り扱いとなっている。正答
- エコデインリン酸塩水和物を含む製品は、妊娠中の女性であっても問題なく使用できる。
- オコデインリン酸塩水和物は、痰を溶解・排出させるための去痰成分として鎮咳去痰薬に配合される。
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正答はウです。
コデインリン酸塩水和物は12歳未満の小児への使用が禁忌とされています。小児での呼吸抑制リスクが問題になったため、2019年に厚労省の通知でOTC医薬品にも適用されました。
アは誤りで、コデインはオピオイド系成分であり麻薬性・依存性があります。イは誤りで、コデインは延髄の咳中枢に直接作用する中枢性鎮咳成分です。エは誤りで、コデイン系成分は妊婦への使用に注意が必要です(特に分娩前後・授乳中)。オは誤りで、コデインは鎮咳成分であり去痰成分ではありません。
コデインリン酸塩水和物の主な特性:
| 特性 | 内容 |
|---|---|
| 分類 | 中枢性鎮咳成分(麻薬性) |
| 作用部位 | 延髄の咳中枢を直接抑制 |
| 依存性 | あり(オピオイド受容体作用) |
| 12歳未満禁忌 | あり(2019年通知・呼吸抑制リスク) |
| 妊婦 | 要注意(特に分娩前後・授乳中) |
各選択肢の解説:
- ア(誤): コデインはオピオイド(麻薬性鎮痛薬)の一種であり、μオピオイド受容体に作用します。連続使用・大量使用で依存性が生じ、「濫用等のおそれのある医薬品」として販売記録・数量制限の対象です。
- イ(誤): コデインは末梢性ではなく中枢性鎮咳成分です。延髄の咳中枢にあるμ受容体に結合して咳反射の閾値を上昇させます。非麻薬性・末梢性の鎮咳成分はデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物です。
- ウ(正): 2019年に小児(特に超高速代謝型遺伝子型の子ども)でコデインがモルヒネへ急速変換され呼吸抑制・死亡例が発生したことを受け、厚労省は12歳未満の小児へのコデイン系成分(コデインリン酸塩・ジヒドロコデインリン酸塩)使用を禁忌とする通知を発出しました。OTC医薬品も対象です。
- エ(誤): コデイン系成分を妊娠後期・分娩前後に使用すると、新生児にオピオイド離脱症候群(哺乳不全・けいれん・呼吸抑制)が生じる可能性があります。授乳中もコデインが母乳に移行し乳児に影響を与えるリスクがあります。妊婦・授乳中の女性はコデイン含有製品の使用前に医師・薬剤師に相談することが求められます。
- オ(誤): コデインは鎮咳成分です。去痰成分(痰を薄めて排出する)ではありません。コデインによって咳反射が抑制されると気道の自浄作用(線毛運動による異物除去)も低下するため、湿性咳嗽(痰が絡む咳)では去痰成分との使い分けが重要です。
【コデインの薬理:オピオイド受容体とCYP2D6代謝の重要性】
コデイン(コデインリン酸塩水和物)はプロドラッグとして機能します。コデイン自体はμオピオイド受容体への親和性がモルヒネの約200分の1と低いですが、肝臓のCYP2D6によって10%程度がモルヒネ(活性代謝物)に変換されます。このモルヒネが鎮痛・鎮咳・呼吸抑制を主に担います。
残りの大部分(約80%)はCYP3A4でノルコデインに、UGT2B7でコデイン-6-グルクロニドに代謝され不活性化されます。
CYP2D6遺伝子多型と小児への影響:
ヒトのCYP2D6には100以上の遺伝子多型があり、代謝速度が個体によって大きく異なります:
- 不活性代謝型(PM: poor metabolizer): CYP2D6機能なし→モルヒネ産生なし→鎮痛効果弱い・依存性低い
- 通常代謝型(EM): 標準的なモルヒネ産生
- 超高速代謝型(URM: ultra-rapid metabolizer): CYP2D6過活性→通常用量でも大量のモルヒネを急速産生→呼吸抑制リスク
小児ではCYP2D6の酵素活性が加齢とともに発達し、特に乳幼児では酵素活性が低いとされますが、超高速代謝型の子どもでは逆に成人以上の変換速度を示すことがあります。2012年にFDA(米国食品医薬品局)は扁桃摘出術後の小児にコデインを処方した事例で死亡が報告されたことを受け警告を発し、2019年には日本でも同様の対応が取られました。
【12歳未満禁忌と実務上の影響】
登録販売者の実務での影響:
1. 購入者が「子どもの咳に使えますか」と尋ねた際、12歳未満の子どもへのコデイン含有製品の販売を断り、デキストロメトルファン含有製品や小児用製剤を案内する
2. 保護者が自分用に購入し子どもに与える可能性を考慮した確認
3. 第5章「濫用等のおそれのある医薬品」として、単独購入・大量購入への注意(コデイン系はリスト対象)
【デキストロメトルファンとの比較】
コデインに代わる主要な中枢性鎮咳成分がデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物です:
| 項目 | コデイン | デキストロメトルファン |
|---|---|---|
| 麻薬性 | あり | なし |
| 依存性 | あり | 比較的低い(ただし乱用事例あり) |
| 12歳未満禁忌 | あり | 記載なし(別途確認要) |
| 鎮咳機序 | μオピオイド受容体 | NMDA受容体拮抗・シグマ受容体 |
| 便秘副作用 | あり | 少ない |
デキストロメトルファンは麻薬性がなく小児にも使いやすいとされていましたが、近年は高用量での幻覚・解離症状(いわゆる「DXM乱用」)が問題になっており、日本でも濫用等のおそれのある医薬品リストへの追加が検討されています。
【授乳中のコデイン禁忌例(世界的薬害教訓)】
2006年にカナダで、授乳中の母親がコデイン含有鎮痛薬を服用し、乳児が呼吸抑制で死亡した事例が報告されました(NEJM 2006 報告)。解剖でモルヒネの血中濃度が成人の致死域に達していたことが判明し、原因は母親が超高速代謝型でコデインが大量のモルヒネに変換→母乳に移行→乳児に致死的量が摂取されたと結論されました。この事例はコデインの授乳中使用リスクを世界に示した転換点です。
登録販売者は授乳中の女性がコデイン含有製品を購入しようとした際に必ずリスクを説明し、医師・薬剤師への相談を勧めることが求められます。
【根拠】厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章第3節
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): コデインリン酸塩水和物の12歳未満「してはいけないこと(服用しないこと)」=呼吸抑制リスクで2019年禁忌移行・令和8年4月手引き反映済。正答ウ(コデイン12歳未満禁忌は正しい)一意確認。ア=麻薬性で誤り/イ=中枢性で誤り/エ=妊娠中も問題なくは誤り(妊婦は相談・分娩前後/授乳注意)/オ=去痰でなく鎮咳で誤り、すべて正しい引っかけ。妊婦・授乳中の表現は手引きの「相談すること」相当で、解説の「相談・受診勧奨」と整合。デキストロメトルファンの濫用おそれ医薬品指定はadvancedで言及(2023年指定)で問題なし。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第3節「鎮咳去痰薬」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。