登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問60:主な医薬品とその作用(漢方処方製剤・生薬)
竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)、八味地黄丸(はちみじおうがん)、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア竜胆瀉肝湯は体力が虚弱な人(虚証)に向く処方であり、排尿痛・頻尿・残尿感があって体力のない人に用いられる。
- イ八味地黄丸は体力が中等度以下の人に向き、疲れやすく四肢が冷えやすい人の排尿困難・夜間頻尿・むくみなどに用いられる。正答
- ウ牛車腎気丸は下肢の浮腫・倦怠感がある人に向く処方であるが、ダイオウ(大黄)を含むため妊婦への使用は禁忌とされている。
- エ竜胆瀉肝湯はマオウ(麻黄)を含む処方であり、心臓病・高血圧の人には使用前に医師への相談が必要である。
- オ八味地黄丸と牛車腎気丸はほぼ同じ組成で互いに代替可能であり、証も同一であるため使い分ける必要はない。
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正答はイ(正しいもの)です。
八味地黄丸は「体力が中等度以下・冷えやすい」人の排尿困難・夜間頻尿・むくみに用いる処方です。
3処方の証の違いを整理すると:
- 竜胆瀉肝湯: 実証寄り(比較的体力がある)・炎症系の排尿症状(排尿痛・残尿感)
- 八味地黄丸: 虚証〜中間(体力中等度以下)・冷えを伴う排尿困難・夜間頻尿
- 牛車腎気丸: より虚弱(下肢浮腫・手足の冷え強め)・排尿困難+下肢の浮腫
ア(竜胆瀉肝湯が虚証)は誤り(実証寄り)、ウ(ダイオウ含有)は誤り、エ(マオウ含有)は誤り、オ(八味地黄丸と牛車腎気丸が同一)は誤りです。
3処方の証・組成比較:
| 項目 | 竜胆瀉肝湯 | 八味地黄丸 | 牛車腎気丸 |
|---|---|---|---|
| 体力の目安(証) | 比較的体力がある(実証寄り) | 中等度以下(虚証〜中間) | 中等度以下(虚弱寄り) |
| 主な適応 | 排尿痛・残尿感・频尿・陰部のかゆみ(炎症性) | 排尿困難・夜間頻尿・むくみ・冷え・手足のほてり | 排尿困難・頻尿・下肢浮腫・腰痛・しびれ(冷え強め) |
| カンゾウ含有 | あり | なし | なし |
| マオウ含有 | なし | なし | なし |
| ダイオウ含有 | なし | なし | なし |
| ブシ含有 | なし | あり(少量) | あり(少量) |
| 特徴的な追加生薬 | リュウタン・オウゴン・タクシャ等(利湿清熱) | ジオウ・サンシュユ・ブシ等(補腎陽) | 八味地黄丸の全成分+ゴシツ・シャゼンシ(下肢浮腫改善強化) |
各選択肢の解説:
- ア(誤): 竜胆瀉肝湯は実証寄りの処方。体力があり、炎症性の排尿症状(排尿痛・残尿感)がある人に向く。虚弱な人には不向き。
- イ(正): 八味地黄丸は体力中等度以下で冷えやすい人の排尿困難・夜間頻尿・むくみに適する。正しい記述。
- ウ(誤): 牛車腎気丸にダイオウは含まれない。妊婦禁忌の根拠はない(ただしブシを含むため妊婦には一般的に慎重投与)。
- エ(誤): 3処方いずれもマオウを含まない。マオウ注意(心臓病・高血圧)はこれらには適用されない。
- オ(誤): 八味地黄丸と牛車腎気丸は証・適応が異なる。牛車腎気丸は八味地黄丸の基本構成にゴシツ(牛膝)・シャゼンシ(車前子)を追加し、下肢浮腫・しびれに対する効果を強化した処方。代替不可。
【竜胆瀉肝湯の「実証・湿熱(しつねつ)」理論と泌尿器への作用】
竜胆瀉肝湯は「肝経(かんけい)の湿熱(しつねつ)」を取り除く処方として位置づけられます。
漢方医学での「肝経」: 解剖学的な肝臓ではなく、肝・胆・生殖器・外陰部・鼠径部を巡る経絡の系統。「湿熱(しつねつ・水分が偏在して熱を帯びた状態)」が肝経に生じると、泌尿器・生殖器の炎症(排尿痛・残尿感・おりもの・陰部のかゆみ)が出る。
主成分リュウタン(竜胆)の薬理:
- ゲンチアナ科センブリ近縁種の根・根茎
- ゲンチアニン(苦味配糖体)→苦味健胃・消化液分泌促進
- 抗炎症(COX-2阻害・TNF-α抑制)
- 利胆(胆汁分泌促進)
【八味地黄丸・牛車腎気丸の「腎陽虚(じんようきょ)」理論と薬理】
漢方医学の「腎」は泌尿器だけでなく、生命エネルギー(腎精・腎気)・生殖・老化・骨・水液代謝を担う臓器概念。
腎陽虚(腎の陽気が衰えた状態):
- 冷え(特に下半身・手足)
- 夜間頻尿(腎が膀胱を温められず「気化」が弱まる)
- 排尿困難・残尿感
- 腰が重だるい・膝が弱い
- むくみ(水液代謝低下)
八味地黄丸の核心: 六味地黄丸(補腎陰)+ケイヒ(肉桂)+ブシ(附子)= 「補腎陰で滋養しながら、ケイヒ・ブシの温熱で腎陽を補う」
| 生薬群 | 代表生薬 | 役割 |
|---|---|---|
| 六味地黄丸(補腎陰) | ジオウ・サンシュユ・サンヤク・タクシャ・ブクリョウ・ボタンピ | 腎を滋養・補腎陰 |
| 温腎陽 | ケイヒ・ブシ(炮附子) | 腎陽を温める・温熱作用 |
牛車腎気丸が八味地黄丸より適する状態:
牛車腎気丸は八味地黄丸の全成分に以下を追加:
- ゴシツ(牛膝: ヒユ科イノコヅチの根): 活血・強膝(膝・腰の強化)・下行(水分・血を下に引き下げる)→下肢浮腫・膝の痛み改善
- シャゼンシ(車前子: オオバコ科オオバコの種子): 利尿・止瀉・利湿(余分な水分排出)→浮腫改善
適応の違いを実務で判断するポイント:
- 「夜間にトイレが多く冷える」→八味地黄丸
- 「夜間頻尿+足がむくみやすい・しびれがある・膝が痛い」→牛車腎気丸
【ブシ(附子)を含む漢方処方の注意事項:八味地黄丸・牛車腎気丸共通】
ブシ含有処方の注意:
- 心臓病(不整脈): アコニチン系成分の心毒性リスク
- 服用後に口・舌・四肢のしびれが出た場合は即中止・受診
- 高齢者(腎機能低下): ブシの排泄が遅れて蓄積リスク
登録販売者の実務での3処方選択の案内フロー:
1. 体力は? → 比較的ある(実証)なら竜胆瀉肝湯、中等度以下なら八味地黄丸系
2. 症状は炎症性(痛み・かゆみ)か、冷え・虚弱性か? → 炎症は竜胆瀉肝湯、冷えは八味地黄丸系
3. 足のむくみ・しびれが強いか? → はいなら牛車腎気丸、なければ八味地黄丸
上位資格への接続: 腎陽虚(腎機能低下)は加齢とともに進行するため、高齢化社会における八味地黄丸・牛車腎気丸の需要は増加している。老年医学・泌尿器科での使用実績も多く、薬剤師国家試験ではブシの薬理機序・副作用・適応疾患(夜間頻尿・ED・腰痛・糖尿病性腎症補助等)として横断的に出題される。
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 正答イ(八味地黄丸=体力中等度以下・冷え・夜間頻尿・むくみ)は正しく一意。竜胆瀉肝湯のカンゾウ含有有無の確認結果=標準的にカンゾウを含む(コタロー/ツムラ/クラシエいずれも甘草配合)ため、表記を「あり(製品による)」→「あり」に確定(マオウ・ダイオウは非含有)。八味地黄丸・牛車腎気丸はブシ含有・カンゾウ/マオウ/ダイオウ非含有で、ウ(牛車腎気丸=ダイオウ含有)・エ(竜胆瀉肝湯=マオウ含有)・オ(八味地黄丸と牛車腎気丸が同一)はいずれも誤りで確定。ブシ含有処方の注意(しびれ・心毒性)は手引き準拠。「ぎっつねつ」→「しつねつ」の誤記も訂正。出典: コタロー/ツムラ竜胆瀉肝湯・ツムラ7八味地黄丸・ツムラ107牛車腎気丸添付文書。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第15節「漢方処方製剤・生薬製剤」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。