登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問84:主な医薬品とその作用(まれな重篤副作用・横断テーマ)
偽アルドステロン症に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア偽アルドステロン症はグリチルリチン酸(カンゾウ由来)等の代謝産物が腎臓でアルドステロン様作用を示すことで生じ、血液中のアルドステロン濃度が正常または低下しているにもかかわらずアルドステロン過剰症と同様の症状が現れることを特徴とする。
- イ偽アルドステロン症の主な症状として、ナトリウムと水の貯留による浮腫・高血圧、カリウムの尿中排泄増加による低カリウム血症(脱力感・筋力低下・こむらがえり)がある。
- ウ偽アルドステロン症のリスク因子として、高齢・低カリウム食(野菜・果物の少ない食事)・利尿薬との併用・複数のカンゾウ含有薬の重複使用が挙げられる。
- エ偽アルドステロン症を引き起こす代表的な原因成分はグリチルリチン酸のみであり、他の医薬品成分やカンゾウを含まない漢方処方が原因となることはない。正答
- オ偽アルドステロン症の初期症状(手足のだるさ・筋力低下・浮腫)が現れた場合は、使用している医薬品を直ちに中止し、速やかに医師の診察を受けることが必要である。
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正答はエ(誤っているもの)です。
偽アルドステロン症を引き起こす代表的な成分はグリチルリチン酸ですが、カンゾウを含まない成分(甘草を含まないグリチルリチン酸製剤等)も原因になりえます。また医薬品によっては複数の原因が重なる場合もあります。「グリチルリチン酸のみが原因」という断定が誤りです。
偽アルドステロン症の基本整理:
- 原因:グリチルリチン酸→代謝産物グリチルレチン酸→腎臓でアルドステロン様作用
- 症状:浮腫・高血圧・低カリウム血症(脱力・こむらがえり・筋力低下)
- 特徴:血中アルドステロン濃度は正常〜低下しているのに症状が出る
- 初期症状でも即中止・受診が必要
ゴロ:「偽アルドはカンゾウが犯人(グリチルリチン酸)、浮腫んでカリウムが逃げる」
偽アルドステロン症の概要:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 機序 | グリチルレチン酸(グリチルリチン酸の代謝産物)が腎臓の11β-HSD₂を阻害→コルチゾールがアルドステロン受容体を活性化 |
| 本質的な特徴 | 血中アルドステロン濃度は正常/低下しているのに過剰症と同じ症状が出る |
| ナトリウム貯留の影響 | 水分貯留→浮腫・体重増加・血圧上昇 |
| カリウム排泄増加の影響 | 低カリウム血症→筋力低下・脱力感・こむらがえり・重症では横紋筋融解症 |
| 高リスク群 | 高齢者・利尿薬使用中・複数のカンゾウ製剤重複・低カリウム食 |
各選択肢の解説:
- ア(正): 偽アルドステロン症の定義として正確な記述です。真のアルドステロン症(副腎からのアルドステロン過剰分泌)とは異なり、血中アルドステロン濃度は正常または低下しているのに同様の症状が現れる点が特徴です。本物のアルドステロン分泌は正常なので「偽(にせ)」と呼ばれます。
- イ(正): 偽アルドステロン症の典型的な症状の正確な記述です。ナトリウム・水貯留→浮腫・高血圧、カリウム排泄増加→低カリウム血症(脱力感・筋力低下・こむらがえり)が代表症状です。重症化すると横紋筋融解症・不整脈・急性腎障害に至ります。
- ウ(正): 偽アルドステロン症のリスク因子の正確な記述です。高齢(腎機能低下→排泄遅延)、低カリウム食(野菜・果物が少ない食事でカリウム不足→症状悪化)、利尿薬との併用(K排泄型利尿薬→低カリウム血症が加算)、複数カンゾウ製品の重複(グリチルリチン酸の総量増加)が高リスク因子です。
- エ(誤・正答): グリチルリチン酸が代表的な原因成分であることは正しいですが、「グリチルリチン酸のみ」という断定は誤りです。また甘草を多量に含む漢方薬(芍薬甘草湯等)もカンゾウを介してグリチルリチン酸を摂取することになり原因となります。さらに稀ではありますが、グリチルリチン酸以外の機序で偽アルドステロン症様の症状が生じることもあります。
- オ(正): 偽アルドステロン症の初期症状が現れた場合の対応として正確な記述です。早期発見・早期中止が重症化(横紋筋融解症・腎障害等)の予防に重要です。添付文書にも「このような症状が現れた場合は直ちに使用を中止し医師の診察を受けること」と記載されています。
【偽アルドステロン症の臨床像と登録販売者が担う早期発見の役割】
偽アルドステロン症と真のアルドステロン症の鑑別:
| 項目 | 真のアルドステロン症(原発性) | 偽アルドステロン症 |
|---|---|---|
| 原因 | 副腎腫瘍・過形成→アルドステロン過剰分泌 | グリチルレチン酸による11β-HSD₂阻害 |
| 血中アルドステロン値 | 高い(過剰分泌) | 正常または低下 |
| 血中レニン活性 | 低下(フィードバック抑制) | 低下(同様に抑制) |
| 電解質異常 | 低カリウム・高ナトリウム | 低カリウム・高ナトリウム(同様) |
| 症状 | 高血圧・浮腫・筋力低下 | 高血圧・浮腫・筋力低下(同様) |
| 原因除去後の回復 | 腫瘍摘出・薬物療法 | 原因薬の中止で回復可能 |
この鑑別が重要な理由:医師が「アルドステロン検査で正常・低値なのに症状がある」という状況に気づき、グリチルリチン酸含有薬の服用歴を問診することで診断に至ります。登録販売者が販売記録・服用歴を正確に把握していることが早期診断に貢献します。
低カリウム血症の連鎖的悪化:
偽アルドステロン症による低カリウム血症は、適切な処置をしないと悪化します。
1. 血清カリウム濃度低下(正常値3.5〜5.0 mEq/L)
2. 筋細胞膜の電位が変化→筋力低下・こむらがえり(初期症状)
3. さらに低下→横紋筋融解症(筋肉細胞の大量壊死)
4. ミオグロビン(筋肉由来タンパク)が大量血中遊離→腎尿細管を閉塞→急性腎障害
5. 不整脈(心室頻拍・細動)→心停止(最重症)
横紋筋融解症の早期症状(登録販売者が知るべき警告サイン):
- 筋肉痛・筋力低下(特に近位筋)
- 褐色尿(ミオグロビン尿)
- 全身倦怠感・発熱
これらが現れた場合は即時の医療機関受診が必要です。
グリチルリチン酸の蓄積と個人差:
偽アルドステロン症の発症には個人差があり、次の要素が影響します:
- 腸内細菌叢の差(グリチルリチン酸→グリチルレチン酸への変換効率が個人で異なる)
- 腎機能(高齢者では排泄が遅延し血中濃度が高く維持される)
- 11β-HSD₂の遺伝的多型(酵素活性に個人差)
- 食事(低カリウム食がリスクを高める)
このため、同じ量のグリチルリチン酸含有薬を使用しても発症する人としない人がおり、「今まで問題なかったから大丈夫」とは言えません。
カンゾウを含む主な漢方処方(重複使用への注意):
芍薬甘草湯は甘草(カンゾウ)を通常の処方量より多く含む処方として知られています。芍薬甘草湯を服用しながら、カンゾウを含む他の漢方薬(補中益気湯・六君子湯・小青竜湯等)やグリチルリチン酸を含むかぜ薬を重複使用すると、グリチルリチン酸の総摂取量が大幅に増加します。
登録販売者の実務上の対応フロー:
1. 販売前の問診
- 現在服用中の薬(漢方含む)を確認
- 高齢者・利尿薬服用中・心臓病・腎臓病の有無を確認
- カンゾウ含有製品の重複使用がないか確認
2. 販売時の指導
- 「手足のだるさ・むくみ・血圧の上昇があれば直ちに中止し医師へ」と伝える
- カンゾウを含む他の薬との重複を避けるよう指導
- 特に高齢者への長期使用は定期的な医師確認を勧める
3. 使用中の症状相談への対応
- 筋力低下・脱力・浮腫の訴え→直ちに使用中止・受診指導
- 受診時には「グリチルリチン酸含有薬を使用中」と医師に伝えるよう指導
偽アルドステロン症は重篤ですが、早期発見・早期中止で回復可能な副作用です。登録販売者が日常的な販売・服薬指導の場面でこのリスクを認識し、適切な情報提供を行うことが患者安全の要です。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 主な医薬品の副作用(偽アルドステロン症) 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。