登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問88:主な医薬品とその作用(まれな重篤副作用・横断テーマ)
皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群:SJS)および中毒性表皮壊死症(TEN)に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア皮膚粘膜眼症候群(SJS)の初期症状として発熱・口腔粘膜のびらん(口内炎のような状態)・目の充血・皮膚の発疹・水疱が現れ、重症化すると皮膚が広範囲に剥離する中毒性表皮壊死症(TEN)に移行することがある。
- イSJSおよびTENは医薬品(解熱鎮痛薬・抗菌成分等)が原因となることがあり、一般用医薬品のかぜ薬・解熱鎮痛薬を使用中にも発症することがある。
- ウSJS・TENはいずれも発症頻度が低く(発生は非常にまれ)、発症の予測が極めて困難な重篤な副作用であるが、いったん発症すると皮膚や粘膜の障害が急速に拡大し、致命的な転帰をたどることがある。
- エSJS・TENは症状が軽微であれば市販の外用ステロイド薬で対処できるため、発症後すぐに医師へ受診する必要はなく、皮膚症状が悪化してから受診すれば間に合う。正答
- オSJSの初期に現れる発熱・口腔内のただれ・目の充血等の症状に気づいた場合は、使用中の医薬品を直ちに中止し、速やかに皮膚科・眼科等の専門医を受診する必要がある。
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正答はエ(誤っているもの)です。
SJS・TENは外用ステロイドで対処できる軽微な副作用ではなく、命に関わる重篤な疾患です。初期症状が出た時点で使用中の医薬品を中止し、直ちに医師(皮膚科・眼科)を受診することが必要です。「重症化してから受診」では手遅れになる可能性があります。
SJS・TENの基本整理:
- SJS(スティーブンス・ジョンソン症候群):発熱・口腔粘膜びらん・目充血・皮膚発疹・水疱
- TEN(中毒性表皮壊死症):SJSより重症。皮膚が広範囲(体表面積の10%超)に剥離。致命的となることがある
- 原因:解熱鎮痛薬・かぜ薬・抗菌成分等のOTC薬も含む
ゴロ:「SJSはスゴイ(重篤)症状・即中止即受診」
SJSとTENの基本(手引き準拠):
- SJS(皮膚粘膜眼症候群):高熱・粘膜(口・目)のただれ・全身の発疹や水疱が現れる。表皮の剥離は比較的限られる。
- TEN(中毒性表皮壊死症):SJSより重症で、体表面積の10%を超える広い範囲で表皮が剥離する。
- 両者とも発症は非常にまれ・予測が極めて困難だが、いったん発症すると急速に進行し致命的となることがある。原因は医薬品(解熱鎮痛成分・かぜ薬・抗菌成分・一部の漢方等)が多く、OTC薬でも起こりうる。
> 注:発症頻度や致死率の精密な数値は文献により幅があり、手引きの範囲を超えます。登録販売者試験では「まれだが予測困難で重篤」という性質の理解が問われます。
各選択肢の要点:
- ア(正):初期症状(発熱・口腔粘膜びらん・眼充血・発疹・水疱)と、広範囲の表皮剥離でTENへ移行するという流れは正確。
- イ(正):解熱鎮痛薬・かぜ薬等のOTC薬も原因となりうる(手引き記載)。
- ウ(正):「まれ・予測困難・急速進行・致命的となりうる」という性質の記述として正しい。
- エ(誤・正答):SJS・TENは外用ステロイドで対処できる軽微な副作用ではなく、全身性の重篤疾患。初期症状の時点で中止・受診が必須で、「重症化してから受診」は誤りかつ危険。
- オ(正):初期症状に気づいたら使用中の薬を直ちに中止し、速やかに専門医(皮膚科・眼科等)を受診する、という対応は正しい。
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): standardを選択肢ごとの要点に簡潔化(段差性回復:standard<advanced)。原因は特定製品名を断定せず「解熱鎮痛成分・かぜ薬・抗菌成分・一部漢方」で手引き準拠に統一。精密統計(発症頻度・致死率%)は手引き範囲外のため非掲載。TENの定義は体表面積10%超で維持。 -->
【SJS・TENの免疫病態と登録販売者が知るべき早期警告サイン】
SJS・TENの免疫学的機序:
SJS・TENは遅延型(Ⅳ型)アレルギー反応に分類される薬剤性皮膚障害です。
1. 薬剤または代謝産物が皮膚・粘膜のタンパクとハプテンを形成
2. 抗原提示細胞(ランゲルハンス細胞・樹状細胞)が薬剤-タンパク複合体をT細胞に提示
3. 薬剤特異的細胞傷害性T細胞(CD8+)が活性化
4. 活性化CTLが表皮ケラチノサイトに対してFasL-Fas系・グランザイム・ペルフォリンを介した細胞障害を引き起こす
5. 大量の表皮細胞がアポトーシス→表皮の壊死・剥離
特にT細胞由来のグランリシン(granulysin)というタンパクがTENにおける大量の表皮壊死の主要メディエーターのひとつとして報告されており、病態理解の進展に寄与しています(研究知見であり、登録販売者試験で問われる範囲ではない参考情報です)。
初期症状の時系列(早期発見のために):
SJS・TENは「かぜがこじれた」と誤解されやすい順序で進みます。
1. 発熱・倦怠感などのかぜ様症状(先行・見落としやすい)
2. 口腔・咽頭粘膜のびらん(口内炎のような、しかし急に多発・悪化するただれ)
3. 眼の充血・目やに・まぶしさ(羞明)
4. 皮膚の紅斑・発疹(中心が暗く周囲が赤い標的状の病変が特徴的)
5. 水疱・びらんが拡大
6. (TEN)体表面積の10%を超える広範囲で表皮が剥離し、やけど(熱傷)に似た状態に至る
「発熱」と「口・目・皮膚の複数の粘膜・皮膚症状」が同時に重なることが、ただの口内炎やかぜとSJSを見分ける最大のポイントです。
HLA(ヒト白血球抗原)との関連:
特定のHLA型を持つ人では薬剤性SJS・TENのリスクが著しく高まることが知られています。
| HLA型 | 関連薬剤 | 主な対象民族 |
|---|---|---|
| HLA-B*15:02 | カルバマゼピン(抗てんかん薬) | 東アジア系(タイ・中国・マレーシア等) |
| HLA-B*57:01 | アバカビル(抗HIV薬) | 欧米系 |
| HLA-A*31:01 | カルバマゼピン | 日本人を含む複数 |
一般用医薬品に関連するNSAIDsについてはHLA型との明確な関連は現時点で確立されていませんが、遺伝的感受性が存在することは医学的に認識されています(この表は処方薬を含む参考であり、登録販売者試験の出題範囲ではありません)。
原因となりうる成分・カテゴリの横断整理:
SJS・TENの重要な特徴は、「特定の1成分だけ」ではなく多くの医薬品で起こりうることです。手引きも原因を特定成分に限定列挙していません。第3章の各論で別々に学ぶ成分が、この副作用では横断的に関わります。
| 成分・カテゴリ | 主に含まれる製品 | 登録販売者の着眼点 |
|---|---|---|
| 解熱鎮痛成分(アスピリン・イブプロフェン・アセトアミノフェン・サザピリン等) | 解熱鎮痛薬・かぜ薬 | 最も相談機会が多い。「かぜ薬・痛み止めを飲んでいて皮膚・粘膜症状」は要警戒 |
| かぜ薬(複数成分の複合配合) | 総合感冒薬 | どの配合成分が原因か特定困難。製品全体を中止し受診へ |
| 抗菌・抗ヒスタミン等の配合成分 | 鼻炎薬・外用消炎薬等 | OTC含有の有無を製品ごとに確認 |
| 一部の漢方・生薬製剤 | 漢方処方 | 漢方でも報告例あり。「自然だから安全」ではない旨を伝える |
> 特定の製品名・処方名を「これがSJSの原因」と断定して伝えることは避けます。原因は使用中の医薬品全般にありうるため、疑わしければ使用中の薬を中止して受診という対応が安全です。
OTC薬による発症例の特徴と登録販売者が知るべきこと:
解熱鎮痛薬・かぜ薬による発症例の特徴:
- 初回使用時より、過去に問題なく使用していた薬でも発症することがある(免疫感作・交差反応等)
- 発症は薬剤開始から数日〜4週間以内が多い
- 初期に「かぜをひいている」と誤解しやすい(発熱・倦怠感が先行する)
初期症状の見分け方(登録販売者が相談を受けた際の確認ポイント):
| 症状 | SJSを疑うポイント |
|---|---|
| 口の中がただれる・食べられない | 通常の口内炎と異なる急激な悪化・多発病変 |
| 目が充血・目やにが多い | 眼科疾患でなく全身症状の一部として出現 |
| 皮膚に発疹・水疱 | 標的状(中心が暗く周囲が赤い)病変が特徴的 |
| 発熱 | かぜ薬・解熱鎮痛薬使用中に出現している場合は注意 |
| 上記が複数重なる | SJS・TENの可能性を強く疑う |
登録販売者の対応フロー:
1. 医薬品(解熱鎮痛薬・かぜ薬等)使用中の皮膚・粘膜・眼症状の相談
- 「口の中がただれてきた・目が充血している・皮膚に発疹・水疱がある」という組み合わせがあれば、SJSの可能性を念頭に置く
2. 即時中止と医師受診の指示
- 「使用中の薬を今すぐ中止してください」
- 「皮膚科または救急外来(症状が重篤な場合)を速やかに受診してください」
- 「受診時に使用している薬の名前・成分を医師に伝えてください」
3. 外用薬での自己対処を勧めない
- 「とりあえず市販の塗り薬を」は絶対に言わない
- SJS・TENは外用薬での対処は不適切であり、遅延は症状の急速な悪化をもたらす
4. 医療機関での標準治療(参考知識)
- 原因薬の中止(最優先)
- 免疫グロブリン大量静注療法(IVIG)
- 熱傷に準じた集中管理(水分・電解質・感染管理)
- 眼科・皮膚科・救急科の連携
SJS・TENはまれな副作用ですが、発見が1日遅れることで重症化・死亡リスクが増大します。登録販売者が販売現場で早期警告サインを認識し、適切に受診勧奨することが患者の命を守る最前線となります。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 主な医薬品の副作用(皮膚粘膜眼症候群・中毒性表皮壊死症) 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。