衛生管理者 関係法令(有害業務以外) 問13:健康診断
健康診断の結果に基づく事業者の措置に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア事業者は、健康診断の結果、異常の所見があると診断された労働者について、健康診断実施日から6か月以内に医師の意見を聴かなければならない。
- イ医師の意見を聴いた事業者は、その意見を勘案して必要があると認めるときは、就業場所の変更・作業の転換・労働時間の短縮・深夜業の回数を減らすこと等の就業上の措置を講じなければならない。正答
- ウ事業者は、就業上の措置として労働者の作業を転換した場合は、当該転換の理由を記録し、転換した旨を所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。
- エ事業者が就業上の措置を決定するにあたっては、当該措置の内容について、あらかじめ当該労働者の同意を得なければならない。
- オ就業上の措置として講じた内容は、当該労働者のプライバシー保護のため、衛生委員会への報告は禁止されている。
AI解説(初心者・標準・上級)
理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠法令も明記。
正しいのはイです。安衛法第66条の5第1項は、医師の意見を聴いた事業者が「必要があると認めるとき」に就業場所の変更・作業の転換・労働時間の短縮・深夜業の回数の減少等の就業上の措置を講じなければならないと定めています。「必要があると認めるとき」という条件付きであり、全員に必ず措置を講じるわけではありません。
各誤り: ア→医師意見聴取の期限は「健康診断が行われた日から3か月以内」(安衛則第51条の2第1項)であり、「6か月以内」は誤りです。ウ→届出義務はありません。エ→労働者の同意は就業上の措置の要件ではありません。オ→衛生委員会への報告は禁止されておらず、むしろ法定事項です。
健康診断後の措置フロー(安衛法第66条の4・第66条の5):
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): 医師意見聴取の対象(安衛法第66条の4)は「異常の所見があると診断された労働者」であり、対象の範囲そのものは正しいですが、期限が誤りです。安衛則第51条の2第1項は意見聴取を「健康診断が行われた日から3か月以内」に行うと定めており、「6か月以内」とするアは期限の数値が誤りです。
- イ(正): 安衛法第66条の5第1項の規定通り。就業上の措置は「必要があると認めるとき」に講じるものであり、医師の意見聴取→必要性の判断→措置という流れです。
- ウ(誤): 就業上の措置について所轄労働基準監督署長への届出義務はありません。事業者の内部的な措置として実施されます。
- エ(誤): 就業上の措置を決定するにあたって労働者の同意は要件とされていません。ただし、事前に労働者の意見を聴く配慮は望ましいとされています(義務ではない)。
- オ(誤): 安衛法第66条の5第2項により、事業者は就業上の措置の内容を衛生委員会に報告しなければなりません。これは措置内容の透明性確保と委員会での審議のためです。「禁止されている」は正反対の誤り。
就業上の措置の内容(安衛法第66条の5第1項):
- 就業場所の変更
- 作業の転換
- 労働時間の短縮
- 深夜業の回数を減らすこと
- その他の適切な措置
【理論的背景】
健康診断は実施して終わりではなく、「結果に基づく適切な事後措置」まで一体として安衛法上の義務です。健康診断→異常所見の把握→医師意見聴取→就業上の措置→衛生委員会報告というフローは「健康管理サイクル」として理解できます。
この制度が設けられた背景には、「健康診断の結果が活用されず、異常所見を持つ労働者が同じ環境で働き続けて健康障害が進行する」という問題がありました。就業上の措置義務化(安衛法第66条の5)は、健診結果を職場改善につなげるための仕組みです。
「必要があると認めるとき」という条件(選択肢イ)の意味: 医師が就業上の措置の必要性を意見として示した場合、事業者はそれを勘案して措置を講じます。医師が「措置不要」と意見した場合は措置義務が発生しません。ただし医師の意見を「勘案」する義務はあり、理由なく無視することはできません。
【実務・条文構造】
健康診断後の措置フロー(詳細):
1. 健康診断の実施(安衛則第44条等)
2. 結果を労働者に通知(安衛法第66条の6)→通知期限の規定なし(速やかに)
3. 異常所見がある労働者について医師意見を聴取(安衛法第66条の4・安衛則第51条の2)
- 期限: 健康診断が行われた日(法人の場合は全員の健診完了日)から3か月以内
- 意見聴取先: 健診を行った医師(または他の医師・産業医)
4. 医師の意見を勘案し、必要な場合は就業上の措置を決定(安衛法第66条の5第1項)
- 就業場所の変更・作業の転換・労働時間の短縮・深夜業の回数減少・その他
- 措置決定前に労働者と産業医への聴取が推奨される(義務ではない)
5. 講じた措置の内容を衛生委員会等に報告(安衛法第66条の5第2項)
- 記録・保存(5年間)が必要
就業上の措置に関する重要な法的留意点:
- 措置の内容は「業務の軽減」が中心であり、「解雇・降格・配置転換(不利益な取扱い)」は許されません
- 就業制限(一時的な就業禁止・限定)も措置の一形態として認められます
- 長期の就業制限が必要な場合は休職手続き等の検討が必要(安衛法の義務範囲外の労働法的問題)
「医師の意見聴取」vs「医師の指示への服従」の違い:
- 法律は「意見を聴く義務」を課していますが「医師の指示に従う義務」を直接課してはいません
- 実務では医師の意見を無視した場合に安全配慮義務違反(民法・労契法)として民事責任が問われるリスクがあります
【試験での位置づけ】
健康診断後の措置に関する問題では「医師意見聴取の期限(3か月以内)」「就業上の措置の種類(就業場所変更・作業転換・労働時間短縮・深夜業減少等)」「衛生委員会への報告義務」「届出義務がないこと」の4点が頻出です。「衛生委員会への報告が禁止」という選択肢オのような誤りは逆説的な引っかけとして出題されます。就業上の措置に労働者の「同意」が必要とする誤りも頻出です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 安衛法第66条の4の文言は「異常の所見があると診断された労働者に係るもの(健康診断の結果)に基づき…医師の意見を聴かなければならない」となっており、対象が「異常所見のある労働者」である点は正しい。誤りは期限で、安衛則第51条の2第1項により意見聴取は「健康診断が行われた日から3か月以内」に行わなければなりません(本肢の「6か月以内」が誤り)。一斉健診の場合は全員の健診完了日を起算日とする点も押さえておきましょう。
- イ: 「就業場所の変更・作業の転換・労働時間の短縮・深夜業の回数を減らすこと」という4つの具体的措置の列挙は条文通りです。この4つを正確に暗記しておくことで選択肢の真偽判断が容易になります。
- ウ: 就業上の措置は事業場内の労働管理であり、行政機関への届出対象ではありません。衛生委員会での内部審議・報告は必要ですが、行政への届出・報告は不要です(労基監督署への届出義務があると誤解されやすい)。
- エ: 労働者の同意は、就業上の措置決定プロセスの法的要件ではありません。しかし実務的には医師・産業医・労働者三者の協議で措置内容を決定するアプローチが推奨されており、労働者への十分な説明と配慮が重要です。
- オ: 衛生委員会への報告義務(安衛法第66条の5第2項)は、職場全体の健康管理の改善につなげるための透明性確保の仕組みです。個別の労働者の氏名等は秘匿する形で集計・報告するケースが実務上多いですが、報告義務そのものは禁止とは逆に義務化されています。
【根拠法令】労働安全衛生法 第66条の4(医師の意見聴取義務)・第66条の5第1項(就業上の措置)・第66条の5第2項(衛生委員会への報告)、労働安全衛生規則 第51条の2(意見聴取期限3か月以内)
【補足】医師意見聴取は健診実施日から3か月以内。就業上の措置の内容(就業場所変更・作業転換・労働時間短縮・深夜業減少)は条文通りに暗記。衛生委員会への報告は義務(禁止ではない)。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働安全衛生法(安衛法)第66条の4(医師の意見聴取)・第66条の5第1項・第2項(就業上の措置)、労働安全衛生規則(安衛則)第51条の2(医師の意見聴取期限)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。