衛生管理者 関係法令(有害業務以外) 問5:労働基準法
年次有給休暇に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア使用者は、年次有給休暇の付与日数が10日以上である労働者に対し、その付与した日から1年以内に、当該労働者の有する年次有給休暇のうち5日について、使用者が時季を指定して与えなければならない。
- イ雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、少なくとも10日の年次有給休暇を付与しなければならない。
- ウ年次有給休暇の時季変更権は、当該請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合に、使用者が他の時季に変更することができる権利であり、すべての有給休暇申請に対して行使できる。正答
- エ使用者は、労働者が有給休暇を取得したことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
- オ年次有給休暇は、労働者が請求する時季に与えることが原則であり、計画的付与(労使協定による特定の時季への一斉付与)を採用する場合には、労使協定を締結することが必要である。
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誤りはウです。時季変更権は「すべての有給休暇申請に対して行使できる」ものではありません。行使できる条件は「当該請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合」に限定されており(労基法第39条第5項ただし書)、要件を満たさない場合は行使できません。「すべての申請に行使できる」という部分が誤りです。
また、2019年施行の改正労基法により、年10日以上の有給休暇が付与される労働者については、使用者が必ず5日を時季指定して取得させる義務(ア)が生じました。これは「年5日の有給休暇取得確保」を義務化した重要改正です。
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): 労基法第39条第7項の通り、10日以上の付与を受けた労働者に対して、付与日から1年以内に使用者が時季指定して5日を取得させる義務があります。労働者が自主的に5日以上取得した場合は義務が履行されたとみなされますが、取得できていない分について使用者が指定する義務が生じます。
- イ(正): 労基法第39条第1項・第2項の基本要件。雇入れから6か月の継続勤務・全労働日の8割以上出勤で10日付与。その後は継続年数に応じて増加(1年6か月経過後=11日、2年6か月=12日…最大20日)。
- ウ(誤): 時季変更権の行使要件は「事業の正常な運営を妨げる場合」(労基法第39条第5項ただし書)に限定されます。「すべての申請に対して行使できる」は誤り。時季変更権は例外的・限定的な権限であり、乱用は許されません。
- エ(正): 労基法第136条の通り。有給休暇取得を理由とした解雇・降格・賃金減額等の不利益取扱いは禁止されています。有給取得を「皆勤手当の欠格事由」とする慣行も不利益取扱いとして問題があります。
- オ(正): 計画的付与(労基法第39条第6項)は労使協定の締結が必要。ただし計画的付与できるのは全有給日数のうち5日を超える部分のみ(5日は労働者の自由使用分として確保)。
【理論的背景】
年次有給休暇制度(労基法第39条)は、労働者の心身の疲労回復・文化的生活の確保のために設けられた権利です。日本では従来から有給休暇の取得率が低いことが問題視されており、2018年成立(2019年施行)の働き方改革関連法で年5日の取得義務化が導入されました。
有給休暇に関する権利・義務関係:
- 労働者の権利: 時季指定権(請求権)= 希望する時季に取得する権利
- 使用者の権限: 時季変更権 = 事業運営上やむを得ない場合のみ別時季への変更が可能
- 使用者の義務(2019年改正): 5日の時季指定義務 = 10日以上付与者に対して必ず5日を取得させる義務
この三者の関係が整理できると、複合問題にも対応できます。
【実務・条文構造】
時季変更権(労基法第39条第5項ただし書)の行使要件と制限:
- 行使できる場面: 「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合」
- 「事業の正常な運営を妨げる」とは: 代替要員の確保が困難・繁忙期で業務遂行不可能な場合等
- 行使できない場面: 単に人手が足りないという一般的な状況・使用者の主観的不都合・代替要員手配が可能な場合
5日取得義務(労基法第39条第7項)の詳細:
- 対象: 年次有給休暇の付与日数が10日以上の労働者(パートも含む)
- 義務の内容: 使用者が時季を指定して5日を取得させること
- 免除条件: 労働者が自主的に5日以上取得した場合・計画的付与で5日以上取得した場合は不要
- 違反した場合: 30万円以下の罰金(労基法第120条)
計画的付与(労基法第39条第6項)の仕組み:
- 要件: 労使協定の締結
- 付与可能な日数: 年次有給休暇のうち5日を超える部分のみ(最低5日は労働者の自由使用分として残す)
- 形態: 一斉付与型(全従業員に特定日)・班別交替付与型・個別付与型
発生要件の年数別付与日数(労基法第39条第2項・第3項):
継続勤務6か月→10日 / 1年6か月→11日 / 2年6か月→12日 / 3年6か月→14日 / 4年6か月→16日 / 5年6か月→18日 / 6年6か月以上→20日(上限)
【試験での位置づけ】
年次有給休暇問題は出題頻度が高く、「発生要件(6か月・8割出勤・10日)」「5日取得義務(2019年改正)」「時季変更権の行使要件(事業の正常な運営を妨げる場合のみ)」「計画的付与の労使協定要件」の4点が頻出です。特に2019年施行の改正内容(5日の時季指定義務化・30万円罰金)は近年の試験で必ず問われる改正ポイントです。時季変更権の誤り選択肢(「すべての申請に行使可能」「使用者の裁量で行使可能」)は毎回登場します。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 5日取得義務の「付与日から1年以内」という期間制限も重要。入社時に一律10日付与するシステムの事業場では、入社日から1年以内に5日を消化させる管理が必要です。残日数の管理・記録保存(3年間)義務も2019年改正で追加されました。
- イ: パートタイム労働者の発生要件は、所定労働日数と比例付与制度(週の所定労働時間が30時間未満・所定労働日数が週4日以下等の場合)があります。週5日以上・30時間以上のパートは正社員と同じ10日付与です。
- ウ: 時季変更権乱用の典型例として「毎回申請のたびに変更権を行使する」「具体的な業務上の理由なく変更する」「代替要員を探す努力をせずに変更する」があります。これらは権利の乱用として無効とされます。また、産前産後休暇・育児休業中の期間中に有給休暇を消化させることを強制する行為も問題があります。
- エ: 不利益取扱い禁止(労基法第136条)は訓示規定と解されており、罰則はありませんが、不利益取扱いを行った場合の公序良俗違反として民事上の損害賠償責任が生じます。皆勤手当の算定に有給取得を不利益に扱う就業規則の条項は無効と判断されます。
- オ: 計画的付与は夏季休暇・年末年始と組み合わせて「橋渡し休暇」として活用されます。導入には労使協定の締結が必要であり、就業規則への記載も必要です(労基法第89条)。
【根拠法令】労働基準法 第39条第5項ただし書(時季変更権の行使要件)・第7項(5日取得義務・2019年施行)・第6項(計画的付与)・第136条(不利益取扱い禁止)
【補足】時季変更権は「すべての申請に行使可能」ではなく「事業の正常な運営を妨げる場合のみ」。2019年改正の5日取得義務化は最頻出改正ポイント。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働基準法(労基法)第39条第3項・第5項・第6項・第7項(年次有給休暇)・第136条(不利益取扱いの禁止)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。