関係法令(有害業務以外)6健康診断・メンタルヘルス

衛生管理者 関係法令(有害業務以外) 問6:健康診断・メンタルヘルス

長時間労働者への面接指導およびストレスチェック制度に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 使用者は、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた時間が1か月当たり80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められるすべての労働者に対して、医師による面接指導を行わなければならない。
  • ストレスチェック制度は、常時使用する労働者が50人以上のすべての事業場に対して、年1回のストレスチェックの実施が義務づけられており、50人未満の事業場は実施してはならない。
  • ストレスチェックの結果は、検査を実施した医師または保健師等から直接事業者に通知されるものとされている。
  • 事業者は、ストレスチェックによって高ストレス者と判定された者全員に対して、医師による面接指導を行わなければならない。
  • 面接指導の結果に基づく就業上の措置(労働時間の短縮等)は、医師の意見を勘案した上で、事業者が決定するものであり、医師の指示に必ず従う義務はない。正答
正答:面接指導の結果に基づく就業上の措置(労働時間の短縮等)は、医師の意見を勘案した上で、事業者が決定するものであり、医師の指示に必ず従う義務はない。

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正しいのはオです。医師が面接指導の結果に基づいて就業上の措置を「意見申述」しますが、実際の措置(労働時間の短縮・作業転換等)を決定するのは事業者です。医師の意見を勘案した上で事業者が最終的な判断をします(安衛法第66条の8第5項)。医師の意見に必ず従う義務はありません(ただし無視することは現実的に問題になります)。

各誤りの要点: ア→面接指導は「すべての労働者」ではなく「労働者の申出」が必要。イ→50人未満は義務ではなく努力義務(実施を禁止しているわけではない)。ウ→ストレスチェック結果は事業者ではなく労働者本人に通知(プライバシー保護)。エ→面接指導は高ストレス者「全員」ではなく申出た者のみ。

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各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(誤): 時間外労働80時間超という要件は正しいですが、「疲労の蓄積が認められるすべての労働者」に面接指導が義務付けられるわけではありません。安衛法第66条の8第1項では「疲労の蓄積が認められる者」のうち「申出を行った者」について面接指導を行う義務が生じます。労働者の申出がない場合、事業者に面接指導の実施義務は発生しません。
  • イ(誤): ストレスチェックは常時50人以上が義務(安衛法第66条の10第1項)ですが、50人未満は「努力義務」であり、実施が禁止されているわけではありません。「実施してはならない」は明らかに誤りです。
  • ウ(誤): ストレスチェックの結果は労働者本人に直接通知されます(安衛法第66条の10第2項)。事業者は労働者の同意なく結果を入手できません。プライバシー保護の観点から、医師・保健師等→本人通知→本人が任意に事業者へ提供という流れです。
  • エ(誤): 高ストレス者と判定された者が面接指導を受けるには本人の申出が必要です(安衛法第66条の10第3項)。事業者が全員に強制的に面接指導を受けさせることはできません(プライバシー保護)。
  • オ(正): 面接指導を行った医師からの意見申述(安衛法第66条の8第4項)を受けて、就業上の措置の内容を決定するのは事業者(安衛法第66条の8第5項)。医師は意見を言う立場であり、最終決定権は事業者にあります(ただし合理的理由なく無視することは問題)。
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

【理論的背景】

長時間労働による健康障害防止対策(面接指導)とメンタルヘルス対策(ストレスチェック)は、2018年施行の働き方改革関連法で強化された制度群です。これらの制度は「事前予防(一次予防)」の観点から設計されており、健康障害が発生してから対応するのではなく、リスクが高い労働者を事前に把握して措置を講じる仕組みです。

両制度のプライバシー保護の設計思想が試験で問われるポイントです。労働者の健康情報(ストレスチェック結果・面接指導内容)は労働者本人のプライバシーに係る情報であり、本人の同意なく事業者が入手・活用することを制限しています。このため「結果を本人に通知→本人の同意でのみ事業者へ提供」という流れになっています。

【実務・条文構造】

面接指導の義務発生の流れ(安衛法第66条の8):

1. 毎月の時間外・休日労働時間の把握(安衛法第66条の8の3・タイムカード等の客観的方法が原則)

2. 80時間超の時間外労働 + 疲労の蓄積が認められる者の把握

3. 当該労働者への情報提供(超過時間等)

4. 労働者の申出 → これがトリガー(申出なしには義務は発生しない)

5. 申出から1か月以内に医師による面接指導を実施

6. 医師から就業上の措置に関する意見を聴取(健診日から3か月以内)

7. 事業者が意見を勘案して就業上の措置を決定

ストレスチェックの実施フロー(安衛法第66条の10):

1. 年1回のストレスチェック実施(実施者: 医師・保健師・必要な研修を受けた看護師等)

2. 結果を労働者本人へ直接通知(事業者への通知は本人同意が条件)

3. 高ストレス者からの面接指導申出(任意)

4. 申出に基づく医師による面接指導

5. 医師から事業者へ意見申述(就業上の措置に関して)

6. 事業者が意見を勘案して就業上の措置を決定

7. 集団分析結果の活用(職場環境の改善)

就業上の措置の内容(安衛法第66条の8第5項・安衛則第52条の8等):

  • 作業の転換
  • 労働時間の短縮
  • 深夜業の回数を減らすこと
  • 就業場所の変更
  • その他の必要な措置

注意点: 就業上の措置として「解雇・降格・配置転換(不利益な取扱い)」は禁止されています(安衛法第66条の10第11項)。高ストレス者が面接指導を申し出たことを理由に不利益な取扱いをしてはなりません。

【試験での位置づけ】

この分野の頻出問題パターンは「ストレスチェック結果が誰に通知されるか(本人)」「面接指導のトリガー(労働者の申出)」「80時間の閾値」「50人未満の取扱い(努力義務)」「就業上の措置の決定権者(事業者)」の5点です。2015年施行のストレスチェック制度は比較的新しく、試験への出題が定着しています。特に「高ストレス者全員に面接指導を義務付ける」という誤り選択肢は頻出です。プライバシー保護の観点(本人への通知→同意が条件)を理解する論理的な整理が効果的です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 労働者の申出要件が設けられているのは、「疲労が蓄積している」という判定を使用者が一方的に行って強制的に面接させることによる、逆の形でのプライバシー侵害や就業差別を防ぐためです。しかし実務では、事業者が申出を促す情報提供義務(80時間超の者への通知)が法定されており(安衛法第66条の8の2第2項)、完全に放置することは許されません。
  • イ: 50人未満の事業場への努力義務化は、中小企業の負担に配慮した経過的措置。将来的な義務化の可能性も議論されています。実施する場合は同じ実施基準・プロセスが求められます。
  • ウ: 通知のフロー(医師・保健師等→本人→本人の同意→事業者への提供)は、健診結果の取扱い(医師→事業者へ直接)と異なる点が重要。ストレス情報は特にプライバシー感度が高いため、通常の健診より厳格な本人同意の仕組みになっています。
  • エ: 高ストレス者への面接指導の申出は任意ですが、事業者は申出しやすい環境整備・申出への速やかな対応が求められます。申出を妨害する行為や申出後の不利益取扱いは禁止(安衛法第66条の10第11項)。
  • オ: 医師の意見を「勘案」するとは、医師の意見を考慮要素として経営判断を行うことです。医師が「残業時間をゼロにすべき」と意見しても、代替要員がいないなど合理的な事情がある場合は段階的な短縮措置を取ることも許容されますが、意見を無視した場合には後で問題になります。

【根拠法令】労働安全衛生法 第66条の8第1項・第4項・第5項(面接指導・意見聴取・就業上の措置)・第66条の10第1項・第2項・第3項(ストレスチェック実施・本人通知・申出)

【補足】ストレスチェック結果は「事業者」ではなく「本人」に通知される(プライバシー保護)。面接指導は「労働者の申出」がトリガーであり、高ストレス者全員に強制できない。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働安全衛生法(安衛法)第66条の8(面接指導)・第66条の10(ストレスチェック)、労働安全衛生規則(安衛則)第52条の2・第52条の12〜第52条の21。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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