衛生管理者 関係法令(有害業務以外) 問32:労働基準法
フレックスタイム制および裁量労働制に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- アフレックスタイム制を採用した場合、清算期間を通じた総労働時間が法定労働時間の総枠を超えた部分に対しては割増賃金を支払う必要はない。
- イフレックスタイム制を採用するためには、労働者の過半数を代表する者との労使協定の締結が必要であり、その協定を所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。
- ウ専門業務型裁量労働制の対象となる業務は、情報処理システムの設計・分析、デザイナー、公認会計士の業務など省令(安衛則)で定められた業務に限定される。
- エ専門業務型裁量労働制を採用した場合、「みなし時間」がいかに長く設定されていても、深夜・休日の割増賃金は発生しない。
- オ企画業務型裁量労働制は、労使委員会の決議および所轄労働基準監督署長への届出が必要であり、本社・本店のある事業場のみに適用される。正答
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正しいのはオです。企画業務型裁量労働制(労基法第38条の4)は、労使委員会の決議(5分の4以上の多数)と所轄労働基準監督署長への届出が必要です。また適用可能な事業場は「本社・本店のある事業場(または厚生労働省令で定める事業場)」に限定されています(専門業務型より適用要件が厳しい)。
各誤り: ア→フレックスタイム制でも清算期間内の総労働時間が法定時間の総枠を超えた部分には割増賃金が必要。イ→フレックスタイム制の労使協定の届出は「清算期間が1か月を超える場合」のみ届出義務あり(1か月以内は不要)。ウ→専門業務型の根拠は「労基則(労働基準法施行規則)第24条の2の2」(安衛則ではない)。エ→裁量労働制でも深夜・法定休日の割増賃金は必要。
フレックスタイム制・裁量労働制の比較(労基法第32条の3・第38条の3・第38条の4):
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): フレックスタイム制(労基法第32条の3)では、清算期間を通じた実際の総労働時間が法定労働時間の総枠を超えた部分は時間外労働となり、25%以上の割増賃金が必要です。フレックスタイム制は「時間配分の自由」を与えるものであり、時間外労働の割増賃金義務を免除するものではありません。
- イ(誤): フレックスタイム制の労使協定の届出義務は「清算期間が1か月を超える場合」に生じます(労基法第32条の3第4項・2019年改正で清算期間が1か月→3か月以内に延長された際に届出義務が追加)。清算期間が1か月以内の場合は届出不要です。
- ウ(誤): 専門業務型裁量労働制(労基法第38条の3)の対象業務は「労働基準法施行規則(労基則)第24条の2の2」に定められています(安衛則ではない)。根拠規則の名称が誤りです。
- エ(誤): 裁量労働制では深夜労働(22時〜5時)・法定休日労働への割増賃金の義務は免除されません(第37条第4項の深夜割増・同条の休日割増は裁量制でも適用)。
- オ(正): 企画業務型裁量労働制(労基法第38条の4)の要件は「労使委員会の決議(5分の4以上)+労働基準監督署長への届出」であり、適用事業場は本社・本店等(省令で定める事業場)に限定されています。
【理論的背景】
フレックスタイム制と裁量労働制は「労働時間の柔軟化」という共通点を持ちますが、目的・対象・設計が大きく異なります。
フレックスタイム制(労基法第32条の3):
- 目的: 始業・終業時刻の自由化(時間の使い方の柔軟化)
- 対象: 全業種・全職種に適用可能
- コア時間: 必ず出勤すべき時間帯(フレキシブルタイムと対になる)
- 清算期間: 最長3か月(2019年改正前は1か月)
- 割増賃金: 清算期間内の法定枠超過分に25%以上
裁量労働制(専門業務型・企画業務型):
- 目的: 仕事の進め方・時間配分を労働者の裁量に委ねる
- 対象: 特定の業務(省令で定める専門業務・企画業務)に限定
- みなし時間: 実際の労働時間にかかわらず「協定・決議で定めた時間」を労働時間とみなす
- 割増賃金: 深夜・法定休日は必要(時間外は基本的に発生しないが、みなし時間超の場合は別途検討)
【実務・条文構造】
専門業務型裁量労働制(労基法第38条の3)の対象業務(労基則第24条の2の2):
1. 新商品・新技術の研究開発の業務
2. 情報処理システムの分析・設計の業務
3. 新聞・出版・放送の取材・編集業務
4. デザイナーの業務
5. プロデューサー・ディレクターの業務
6. コピーライターの業務
7. システムコンサルタントの業務
8. インテリアコーディネーターの業務
9. ゲームソフトウェアの創作業務
10. 証券アナリストの業務
11. 金融工学等の知識を用いた金融商品の開発業務
12. 大学の研究者・教員・一定の知識労働者
13. 公認会計士・弁護士・建築士(1級・2級)・不動産鑑定士・弁理士・税理士・中小企業診断士 等
企画業務型裁量労働制(労基法第38条の4)との主な違い:
- 専門業務型: 労使協定の締結のみ(一定条件で届出不要)・全事業場に適用可能(本社・支社問わず)
- 企画業務型: 労使委員会の決議(5分の4以上の多数)+届出・本社等の限定事業場のみ
企画業務型が適用できる事業場の限定の理由:
企画業務型の対象業務(「事業の運営に関する事項についての企画・立案・調査・分析の業務」)は、経営方針・事業戦略に関わる高度な業務であり、主に本社・本店で行われます。支社・工場等での適用は制度の趣旨(企画・立案業務)から外れるため制限されています。
フレックスタイム制の清算期間(2019年改正):
- 改正前: 最大1か月
- 改正後: 最大3か月(3か月にした場合は届出義務が追加)
清算期間を長くすることで、繁忙期・閑散期のバランスが取りやすくなります。
【試験での位置づけ】
この分野では「フレックスタイム制でも法定枠超過分は割増あり」「裁量労働制でも深夜・法定休日の割増あり」「専門業務型と企画業務型の要件の違い(労使協定 vs 労使委員会決議)」「フレックスタイム制の届出義務(清算期間1か月超の場合のみ)」の4点が頻出です。企画業務型裁量労働制が「本社等の限定事業場のみ」適用されることはこの問題のオのように正しい選択肢として出題されます。
【各選択肢の発展補足】
- ア: フレックスタイム制での時間外労働の算定は「清算期間中の実際の総労働時間が清算期間の法定労働時間の総枠(週40時間×清算期間の週数)を超えた分」です。1日・1週単位ではなく清算期間全体で判断する点が通常の時間外計算と異なります。
- イ: 清算期間1か月以内は届出不要、1か月超3か月以内は届出必要という2019年改正の変更点は試験に出題されます。「フレックスタイム制の労使協定は常に届出必要」という誤りに注意が必要です。
- ウ: 「安衛則ではなく労基則(労基法施行規則)」という規則名の区別は細かいですが、労働安全衛生規則と労働基準法施行規則を混同しないことが重要です。安衛則は安衛法の施行規則、労基則は労基法の施行規則として区別されます。
- エ: 深夜・法定休日の割増が裁量労働制でも必要な理由は、これらが「健康・家庭生活への影響が大きい時間帯」への特別保護だからです。みなし時間は「通常の時間外概念を変える」ものですが、深夜・休日の絶対的保護は消えません。
- オ: 正答。企画業務型の本社等限定適用は「支社・工場でも企画業務型を使いたい」という実務ニーズとの摩擦があり、実際には企画業務型より専門業務型裁量制が広く活用されています。
【根拠法令】労働基準法 第32条の3(フレックスタイム制・清算期間・割増)・第38条の3(専門業務型裁量労働制・労使協定)・第38条の4(企画業務型・労使委員会決議・届出・本社等限定)
【補足】フレックスタイム制でも清算期間内の法定枠超過分は割増賃金必要。企画業務型裁量労働制は労使委員会決議+届出が必要・本社等の事業場に限定。深夜・法定休日の割増は裁量労働制でも必要。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働基準法(労基法)第32条の3(フレックスタイム制)・第38条の3(専門業務型裁量労働制)・第38条の4(企画業務型裁量労働制)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。