衛生管理者 関係法令(有害業務以外) 問48:労働基準法
高度プロフェッショナル制度と裁量労働制に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア高度プロフェッショナル制度の対象労働者は、年収が1,075万円以上であることが要件の一つであり、研究開発・金融商品の開発・アナリスト等の特定の業務に従事する者に限られる。
- イ高度プロフェッショナル制度では、対象労働者には労働基準法の労働時間・休憩・休日・深夜割増賃金に関する規定が適用されない。
- ウ専門業務型裁量労働制の対象業務はシステムエンジニア・デザイナー・研究者等の専門業務に限られ、労使委員会の決議と労働基準監督署長への届出が必要である。正答
- エ企画業務型裁量労働制は、事業の運営に関する事項についての企画・立案・調査・分析の業務に従事する者を対象とするが、対象事業場は本社・本店に限られる。
- オ裁量労働制(専門業務型・企画業務型)では、実際の労働時間にかかわらず協定で定めた「みなし時間」を働いたものとみなすが、深夜・休日労働の割増賃金は免除されない。
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誤っているのはウです。専門業務型裁量労働制を導入するために必要な手続きは、労使協定の締結と労働基準監督署長への届出です(労基法第38条の3第2項)。「労使委員会の決議」は企画業務型裁量労働制(第38条の4)に必要な手続きであり、専門業務型には必要ありません。両者を逆に記述した誤りです。
各正しい選択肢の確認: ア→高度プロフェッショナル制度の年収要件(1,075万円以上)と対象業務(研究開発・金融商品開発・アナリスト等)は正しい記述。イ→高度プロフェッショナル制度の対象者は労働時間・休憩・休日・深夜割増の規定の適用除外が正しい(ただし健康確保措置あり)。エ→企画業務型裁量労働制の対象事業場が「本社・本店等の中枢部門」に限られる点は正しい。オ→裁量労働制でも深夜・休日の割増賃金は免除されないのは正しい記述です。
高度プロフェッショナル制度と裁量労働制の比較(労基法):
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): 高度プロフェッショナル制度(労基法第41条の2)の対象要件: ①年収1,075万円以上、②特定高度専門業務(5業務: 金融商品開発・金融商品ディーリング・アナリスト・コンサルタント・研究開発)、③本人の同意・労使委員会の決議・届出が必要。
- イ(正): 高度プロフェッショナル制度の対象者は「労働時間・休憩・休日・深夜の割増賃金に関する規定が適用されない」(労基法第41条の2第1項)。ただし以下の健康確保措置が義務付けられる(104時間超の者への健康確保措置・年間104日以上の休日確保等)。
- ウ(誤): 専門業務型裁量労働制(労基法第38条の3)に必要な手続きは「労使協定の締結と届出」。労使委員会の決議が必要なのは企画業務型裁量労働制(第38条の4)と高度プロフェッショナル制度(第41条の2)。選択肢の手続きの記述が誤り。
- エ(正): 企画業務型裁量労働制の対象事業場は「本社・本店等において事業の運営に関する事項の企画・立案・調査・分析を行う事業場」に限定(労基法第38条の4・厚生労働省告示)。
- オ(正): 裁量労働制のみなし時間は法定労働時間(1日8時間・週40時間)の超過分に対して時間外割増は適用されないが、深夜・休日労働の割増賃金は依然として適用される。
【理論的背景】
裁量労働制と高度プロフェッショナル制度は、いずれも「成果によって評価される」労働者を念頭に置いた制度ですが、法的な性格・保護の範囲が大きく異なります。
専門業務型裁量労働制(第38条の3): 業務の遂行手段・時間配分を労働者の裁量に委ねることが、業務の性質上不可欠な専門職に適用。「みなし時間」を使って時間外割増の計算を簡素化するが、労働時間規制そのものは適用される(深夜・休日割増は有効)。
企画業務型裁量労働制(第38条の4): 事業の企画・立案・調査・分析を行う「ホワイトカラー管理職に近い業務」に適用。対象者の範囲・事業場の制限が専門業務型より厳格(本社・本店等の中枢部門)。
高度プロフェッショナル制度(第41条の2): 2018年成立・2019年4月施行の「働き方改革」で創設。年収1,075万円以上・特定5業務の高度専門職に限定し、労働時間規制そのものを「適用除外」する(みなし時間ですらなく、時間概念から切り離す)。
【実務・条文構造】
三制度の比較:
| 制度 | 根拠条文 | 導入手続き | 対象業務 | 年収要件 | 割増賃金 |
|---|---|---|---|---|---|
| 専門業務型裁量 | 第38条の3 | 労使協定+届出 | 19業務 | なし | 深夜・休日は適用 |
| 企画業務型裁量 | 第38条の4 | 労使委員会決議+届出 | 企画・立案・調査・分析 | なし | 深夜・休日は適用 |
| 高度プロフェッショナル | 第41条の2 | 労使委員会決議+届出+本人同意 | 特定5業務 | 1,075万円以上 | すべて不適用 |
専門業務型裁量労働制の対象19業務(労使協定で定める必要がある主要な業務例):
1. 研究開発
2. 情報処理システムの分析・設計(SEの業務)
3. 取材・編集
4. デザイナー(新聞・放送・衣服・工業製品・広告等)
5. プロデューサー・ディレクター
6. コピーライター
7. 公認会計士・弁護士・建築士・不動産鑑定士・弁理士・税理士・中小企業診断士(士業)
8. 大学における教授研究(大学教員)
9. その他厚生労働大臣が指定する業務(システムコンサルタント等)
企画業務型裁量労働制の対象事業場の制限:
- 「事業の運営に関する事項の企画・立案・調査・分析を行う」中枢的な部署(本社・本店・研究本部等)
- 支社・営業所等は原則対象外(事業場ごとの適用が必要で、実質的に中枢部門を有する事業場に限定)
高度プロフェッショナル制度の健康確保措置(制度の核心):
1. 対象労働者に年間104日以上の休日確保
2. 以下のいずれかの選択的措置: ①1か月の超過時間(健康管理時間が100時間超)の者への産業医面談 ②4週間に4日以上の休日確保 ③1日の休息時間確保(11時間以上)④有給休暇付与(2週間連続取得確保等)
→ 労働時間規制を外す代わりに健康確保措置を充実させるという設計。
【試験での位置づけ】
三制度の頻出ポイント:
- 専門業務型: 「労使協定+届出」(労使委員会決議は不要)
- 企画業務型: 「労使委員会決議+届出」(本社・本店等に限定)
- 高度プロフェッショナル: 「年収1,075万円以上・特定5業務・労使委員会決議+本人同意・割増賃金すべて不適用」
- 裁量労働制(専門・企画とも): 「深夜・休日の割増賃金は適用あり」
「専門業務型の手続きが労使委員会決議か労使協定か」は最も出題されやすい区別です。企画業務型と逆に覚えると誤答します。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 高度プロフェッショナル制度の年収要件(1,075万円以上)は「あらかじめ見込まれる年収額」であり、実際の年収が1,075万円を下回っても直ちに制度が無効になるわけではありませんが、実務上は確実に超える見込みのある者に適用することが必要です。5業務の列挙は法令上確定しており、業種を横断的に適用できないため、制度の対象者は非常に限定的です。
- イ: 高度プロフェッショナル制度の「割増賃金すべて不適用」は、深夜労働が深夜0時〜5時に行われても割増賃金(25%)が不要になることを意味します。これは実質的に24時間いつでも働かせることができる設計であり、制度への批判の一因となっています。健康確保措置の厳格な運用が制度の健全性を担保します。
- ウ: 専門業務型の導入手続き「労使協定の締結と届出」は、過半数組合(または過半数代表者)との協定で足ります。労使委員会(使用者・労働者が同数参加する特別委員会)の設置・運営コストが不要なため、企画業務型より導入しやすいと言われています。
- エ: 企画業務型の「本社・本店等に限定」は、「支社・営業所でも企画業務がある場合は使えないのか」という実務上の疑問につながります。原則として対象は中枢的な部署に限られており、支社単位での適用には慎重な判断が必要です。
- オ: 裁量労働制でも深夜・休日割増が適用される理由は、「裁量労働制は業務の量・内容・質への裁量を与えるが、深夜・休日の特別な身体的・生活的負担に対する補償(割増賃金)まで免除する根拠はない」という考え方に基づいています。高度プロフェッショナル制度がこれも免除するのは、非常に高い年収(1,075万円以上)でその対価を包括的に支払っているという前提です。
【根拠法令】労働基準法 第38条の3(専門業務型裁量労働制:労使協定+届出・19業務)・第38条の4(企画業務型裁量労働制:労使委員会決議+届出・本社等に限定)・第41条の2(高度プロフェッショナル制度:年収1,075万円以上・特定5業務・労使委員会決議+本人同意・割増賃金すべて不適用)
【補足】専門業務型の導入手続きは「労使協定+届出」(労使委員会決議は不要)。企画業務型・高度プロフェッショナルは「労使委員会決議+届出」。裁量労働制でも深夜・休日割増は適用される。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働基準法(労基法)第38条の3(専門業務型裁量労働制)・第38条の4(企画業務型裁量労働制)・第41条の2(高度プロフェッショナル制度)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。