関係法令(有害業務以外)50健康管理

衛生管理者 関係法令(有害業務以外) 問50:健康管理

健康診断の結果に関する個人情報の取り扱いに関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 事業者は、健康診断の結果(個人票)を適切に管理し、労働者の健康の確保に必要な範囲を超えて、人事・評価等の目的に使用してはならない。
  • 健康診断の結果を第三者(取引先企業等)に提供する場合は、原則として労働者本人の同意が必要である。
  • 使用者は、健康診断の結果に基づき就業上の措置を講じるために必要な場合、労働者本人の同意なく産業医に個人の健康診断結果を提供することができる。
  • 労働者が、自己の健康診断の結果を記載した書面の交付を求めた場合、事業者はこれを交付しなければならない。
  • 事業者は、労働者が健康診断の結果に基づく就業制限(作業転換・時間短縮等)の指示を拒否した場合でも、強制的に実施することはできず、当該労働者の意思を尊重しなければならない。正答
正答:事業者は、労働者が健康診断の結果に基づく就業制限(作業転換・時間短縮等)の指示を拒否した場合でも、強制的に実施することはできず、当該労働者の意思を尊重しなければならない。

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誤っているのはオです。事業者は、医師が就業制限(作業転換・労働時間短縮等)を必要と認めた場合、それを「指示・命令」として実施する義務があります(安衛法第66条の5)。労働者が就業制限を「拒否」しても、事業者には安全配慮義務(労働契約法第5条)に基づき、就業制限を実施する権限・義務があります。「労働者の意思を尊重しなければならない」という表現は誤りで、必要な安全措置については事業者が権限をもって実施できます。

各正しい選択肢の確認: ア→健康診断結果の目的外使用(人事評価等)は禁止(正しい)。イ→第三者提供には本人同意が原則(正しい)。ウ→産業医への提供は就業上の措置を講じるための業務上の情報共有であり、本人同意なく可(正しい)。エ→本人への開示請求権は安衛法第66条の6で保障(正しい)。

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健康診断結果の個人情報保護と利用制限(安衛法・個人情報保護法):

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(正): 健康診断結果は「要配慮個人情報」(個人情報保護法第2条第3項)であり、収集目的(労働者の健康確保)を超えた利用は禁止。人事評価・配置転換の判断材料への目的外利用は原則禁止。
  • イ(正): 要配慮個人情報の第三者提供は、原則として本人の明示的な同意が必要(個人情報保護法第23条)。取引先への開示は就業上必要な場合でも本人同意なしには行えません(業務上必要な社内での情報共有は除く)。
  • ウ(正): 産業医は事業者の指揮命令の下で労働衛生管理を担う者であり、就業上の措置を講じるために健康診断結果を把握する必要があります。安衛法上、産業医への情報提供は「健康管理の業務遂行のため」という目的の範囲内であり、労働者本人の同意は不要です(安衛則第14条の2・第51条の4)。
  • エ(正): 安衛法第66条の6は、事業者が健康診断の結果を「遅滞なく」労働者本人に通知することを義務づけており、本人からの書面交付請求にも応じる必要があります。
  • オ(誤): 事業者は医師の意見に基づく就業上の措置(就業禁止・作業転換・時間短縮等)を実施する義務があります(安衛法第66条の5)。労働者が拒否しても、事業者は安全配慮義務(労契法第5条)に基づき就業制限を権限をもって命じることができます。労働者の拒否に対して「意思を尊重して措置を取らない」ことは、事業者の義務違反になり得ます。
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【理論的背景】

健康診断結果は労働者の最もセンシティブな個人情報の一つです。「要配慮個人情報」(個人情報保護法第2条第3項)として特別な取り扱いが求められます。一方、事業者は安全配慮義務(労働契約法第5条)に基づき、労働者の健康・安全を確保する義務を負っています。

この二つの義務(情報保護義務と安全確保義務)の緊張関係が、健康診断情報の取り扱いにおける複雑さを生み出しています。特に「情報の目的内利用」と「就業上の措置の強制性」の関係は試験でも実務でも重要な論点です。

【実務・条文構造】

健康診断結果の取り扱いに関する法的枠組み:

1. 記録・保存(安衛法第66条の3・安衛則第51条):

  • 事業者は健康診断の個人票を作成し、5年間保存
  • 特殊健康診断の個人票は業務種類に応じて30年・無期限保存

2. 労働者への通知(安衛法第66条の6):

  • 事業者は健康診断の結果を「遅滞なく」労働者本人に通知する義務
  • 書面(個人票の写し等)での交付が求められた場合は応じる必要あり

3. 医師意見聴取・就業上の措置(安衛法第66条の4・第66条の5):

  • 健康診断の結果、異常の所見があった場合、医師(産業医等)の意見を3か月以内に聴取
  • 医師の意見に基づき、就業場所・作業の変更・就業時間短縮・深夜業の回数削減・作業環境の変更等の措置を実施
  • 必要な場合は「就業禁止(休業)」を命じることも可能

就業上の措置の強制性:

  • 事業者は、医師が「就業制限が必要」と判断した場合、労働者の同意なくその措置を実施できます(安全配慮義務の履行として)
  • 労働者が拒否した場合でも、業務命令権限に基づいて作業転換・時間短縮等を命じることが可能
  • ただし、就業禁止(休業)については、「使用者の一方的な判断で休業させた場合の賃金支払い義務」の問題が生じるため、医師の明確な意見に基づいた慎重な判断が必要

4. 個人情報の利用制限(個人情報保護法・安衛法関連通達):

  • 目的外利用の禁止: 「労働者の健康確保のために必要な範囲」を超えた利用は禁止
  • 採用選考・人事評価への利用禁止: 健康診断で得た疾病・障害情報を採用の可否判断に使うことは差別的取り扱いとして禁止
  • 産業医・衛生管理者への情報提供: 就業上の措置を講じるための「業務上の情報共有」として本人同意不要
  • 第三者提供: 原則として本人の明示的な同意が必要(取引先・外部機関への開示)

5. 健康情報の取り扱いガイドライン(令和元年3月):

厚生労働省は「事業場における労働者の健康情報等の取扱規程を策定するための手引き」を策定し、健康情報の収集・保管・使用・提供の各段階での適切な取り扱い手順を示しています。個人情報取扱規程の整備・研修実施・アクセス権限管理等が推奨されています。

【試験での位置づけ】

健康診断情報の取り扱いに関する頻出ポイント:

  • 「要配慮個人情報として特別な保護が必要」
  • 「産業医への情報提供は本人同意不要(業務上の必要性)」
  • 「第三者提供は本人同意が原則」
  • 「就業上の措置は事業者が命じることができる(労働者拒否でも実施可能)」
  • 「健康診断結果の人事評価への目的外利用は禁止」

「産業医は同意不要だが、取引先は同意必要」という「業務上の情報共有(同意不要)」と「第三者提供(同意必要)」の区別が重要です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 健康診断結果を「採用選考の結果を左右する」情報として使用することは、障害者差別解消法・雇用機会均等法上の問題も生じます。「病歴・障害情報に基づく採用差別の禁止」は国際的な人権規範とも一致しており、日本の法令でも複数の法律で禁止されています。
  • イ: 「第三者提供に本人同意が必要」という原則の例外として、「法令に基づく場合」「生命・身体・財産の保護のために必要で本人同意を得ることが困難な場合」等があります(個人情報保護法第23条)。しかし試験では「原則として本人同意が必要」を押さえることが重要です。
  • ウ: 産業医への情報提供が「本人同意不要」であることの根拠は、産業医が事業者の安全衛生管理の一部として選任された者であり、健康診断情報は産業医の職務遂行に不可欠な情報であるためです。産業医は守秘義務(医師法・安衛法)を負っており、得た情報を目的外に使用することは厳格に制限されています。
  • エ: 本人への開示請求権は、個人情報保護法上の「開示請求権」(第33条)とも対応しています。事業者は保有する個人情報(健康診断個人票)について、本人から開示を求められた場合に原則として開示しなければなりません。
  • オ: 「就業制限を拒否した労働者への対応」は実務上デリケートな問題です。就業制限を命じた場合の法的根拠は「安全配慮義務の履行としての業務命令権」ですが、休業を命じる場合の「休業補償の要否(使用者都合か本人都合か)」「雇用継続の問題」等、複合的な法律問題が生じます。実務では産業医・弁護士との連携が不可欠です。

【根拠法令】労働安全衛生法 第66条の3(個人票の作成・5年保存)・第66条の4(医師意見聴取)・第66条の5(就業上の措置:事業者の義務・命令権限)・第66条の6(労働者への通知義務)、個人情報保護法 第2条第3項(要配慮個人情報)・第23条(第三者提供原則:本人同意)

【補足】健康診断結果は要配慮個人情報。産業医への提供は業務上必要として同意不要。第三者提供は本人同意が原則。就業上の措置は事業者が業務命令として実施可(労働者拒否でも実施可能)。目的外利用(人事評価等)は禁止。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働安全衛生法(安衛法)第66条の3(健康診断結果の記録)・第66条の4(医師への受診勧告)・第66条の5(就業上の措置)・第66条の6(労働者への通知)、安衛則第51条(個人票の保存)・第51条の4(結果の提供)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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