労働生理72感覚器

衛生管理者 労働生理 問72:感覚器

聴覚の仕組みに関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 外耳道を通った音波は鼓膜を振動させ、鼓室内の耳小骨(ツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨)を介して振動が増幅され、内耳の卵円窓(前庭窓)へ伝達される。
  • コルチ器(コルティ器官)は内耳の蝸牛(かたつむり)内に存在し、基底膜上に並ぶ有毛細胞が音の振動(機械的刺激)を電気信号に変換する「機械電気変換(mechanotransduction)」を行う。
  • コルチ器の基底膜は蝸牛入口(基部)側で高周波音に対して最大変位を示し、蝸牛先端(頂部)側で低周波音に対して最大変位を示す(行波説)。騒音性難聴では特に4,000Hz付近(高周波域)の聴力が早期に低下するのはこのためである。
  • 有毛細胞の感覚毛(不動毛)が偏位すると、機械感受性チャネル(MET channels)が開いてK⁺とCa²⁺が流入し、神経伝達物質(グルタミン酸)が放出されて蝸牛神経に電気信号が伝達される。
  • 音は気導(外耳→鼓膜→耳小骨→内耳)によってのみ聴こえ、骨導(頭蓋骨の振動が内耳に直接伝わる経路)は人体では機能しない。正答
正答:音は気導(外耳→鼓膜→耳小骨→内耳)によってのみ聴こえ、骨導(頭蓋骨の振動が内耳に直接伝わる経路)は人体では機能しない。

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初心者向けまずはここから。やさしく要点を解説

誤りはオです。「音は気導によってのみ聴こえ、骨導は機能しない」という部分が誤りです。骨導(bone conduction)も正常人で機能します。頭蓋骨に振動が伝わると直接内耳(蝸牛)が振動して聴こえます。自分の声が録音と違って聞こえるのも骨導の影響です(自分の声は気導+骨導の両方で聞こえる)。耳鼻科での音叉試験(ウェーバー試験・リンネ試験)や骨導補聴器は骨導を利用した検査・器具です。

その他の選択肢は正しい内容です。鼓膜・耳小骨の振動伝達(ア)。コルチ器の位置と有毛細胞による機械電気変換(イ)。基底膜の周波数局在と騒音性難聴の4kHz低下(ウ)。有毛細胞の電気信号変換メカニズム(エ)はすべて正確です。

標準試験対策の基準レベル

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(正): 気導の経路: 音波→外耳道→鼓膜振動→中耳の耳小骨(ツチ骨: malleus・キヌタ骨: incus・アブミ骨: stapes)。耳小骨はレバー機構とアブミ骨底板の面積比(鼓膜面積/卵円窓面積 ≈ 17〜20倍)によってインピーダンス変換・音圧増幅(約25〜30dB増幅)を行います→卵円窓→外リンパ液・内リンパ液の振動→基底膜→コルチ器。
  • イ(正): コルチ器は蝸牛の内リンパ液(高K⁺・低Na⁺)に浸っています。有毛細胞は1個の動毛(kinocilium: 実際には退化)と多数の不動毛(stereocilia)を持ちます。基底膜が振動→不動毛が偏位→先端のTip link(架橋)が引っ張られる→機械感受性K⁺チャネル開口→K⁺流入(内リンパの高K⁺を利用)→脱分極→Ca²⁺流入→グルタミン酸放出→蝸牛神経興奮。
  • ウ(正): 基底膜の周波数分析(場所説・行波説): von Békésy(1961年ノーベル賞)が解明しました。基底膜は基部(蝸牛入口)で薄く・硬い→高周波に共鳴。頂部(apical)で厚く・柔らかい→低周波に共鳴。騒音性難聴で4,000Hz(4kHz)の感音難聴が早期に生じる理由: ①4kHz応答領域は蝸牛入口から約12mmの部位②この部位への血流が相対的に乏しい③蝸牛基部(高周波域)全体への機械的ストレス集中。
  • エ(正): 内有毛細胞(IHC)が主要な感覚細胞(外有毛細胞は増幅器として機能)です。MET channel(mechanoelectrical transduction channel)は不動毛先端のTip linkに連結した機械感受性イオンチャネルです。内リンパK⁺(約150mM:血漿の約50倍)が高い電気化学勾配を持つため、チャネル開口によるK⁺流入で効率よく脱分極が生じます。
  • オ(誤): 骨導(bone conduction)は正常人でも機能する聴音経路です。頭蓋骨への振動(音叉を乳様突起に当てる等)→頭蓋骨の振動→蝸牛の骨性壁→外リンパ・内リンパ振動→コルチ器。自分の声を録音と比べると「らしくない」理由: 通常は気導+骨導の合成で聴こえているが、録音は気導のみ→骨導成分(低周波が豊か)がなく高く聞こえる。
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

#### 1. 聴覚の詳細神経経路と中枢処理

蝸牛から大脳皮質までの経路:

1. コルチ器の内有毛細胞→蝸牛神経(第VIII脳神経=聴神経の蝸牛部)→延髄の蝸牛核(cochlear nucleus)

2. 蝸牛核→両側性に上行(交叉あり)→上オリーブ核・外側毛帯核

3. 下丘(inferior colliculus): 音の方向定位(両耳間の時間差・音圧差の統合)

4. 内側膝状体(MGN: medial geniculate nucleus): 視床の聴覚中継核

5. 一次聴覚野(A1: ブロードマン41・42野・側頭葉横回=Heschl's gyrus): 音の周波数・強度の基本処理

6. 言語野(Wernicke野: 左側頭葉): 音声言語の理解

音の方向定位メカニズム:

  • 両耳間時間差(ITD): 低周波音の方向定位。音が到達する時間の差(最大700μsec)をオリーブ核が計算
  • 両耳間音圧差(ILD): 高周波音の方向定位。頭の陰影効果(head-shadow effect)による音圧差

#### 2. 騒音性難聴と職業性難聴の詳細

騒音性難聴(noise-induced hearing loss: NIHL)の病態:

  • 永続的閾値上昇(PTS): 有毛細胞の不可逆的損傷(感音難聴)
  • 初期変化: 一時的閾値上昇(TTS: temporary threshold shift)→適切な休息で回復
  • 反復暴露でTTSが積み重なり→PTS(永続難聴)

騒音性難聴の特徴:

  • 4,000Hz(C5 dip)に特徴的な聴力低下
  • 進行すると3,000・6,000Hz・2,000Hz・1,000Hz(会話音域)へ拡大
  • 両側性・対称性(一般に)
  • 感音難聴(骨導も低下)
  • 耳鳴りを伴うことが多い

許容騒音レベルと暴露時間(厚労省・OSHA基準):

| 騒音レベル(dB(A)) | 1日許容暴露時間 |

|---|---|

| 85 dB | 8時間 |

| 88 dB | 4時間 |

| 91 dB | 2時間 |

| 94 dB | 1時間 |

| 97 dB | 30分 |

| 100 dB以上 | 15分以下(衝撃音は別基準) |

#### 3. 気導と骨導の臨床的区別(音叉試験)

骨導検査の実際(衛生管理者として知っておく内容):

ウェーバー試験(Weber test):

  • 振動する音叉を額正中または頭頂部に置く
  • 正常: 両耳で均等に(または正中で)聴こえる
  • 伝音難聴(患側耳): 患側で大きく聴こえる(骨導は保たれていても気導が悪い方が相対的に優勢)
  • 感音難聴(患側耳): 健側で大きく聴こえる

リンネ試験(Rinne test):

  • 音叉を乳様突起(骨導)→外耳道前(気導)に当てて比較
  • 正常: 気導>骨導(正リンネ)
  • 伝音難聴: 骨導≥気導(負リンネ)
  • 感音難聴: 気導>骨導(正リンネ: ただし両方とも低下している)

職業性難聴の検診(特定業務健康診断):

  • 高音域(4,000Hz)の純音聴力検査が必須
  • 定期的な聴力測定による経年変化の把握
  • 耳栓・防音イヤーマフ等の保護具の適正使用

#### 4. 衛生管理者試験での頻出論点と職場への応用

試験では「外耳→鼓膜→耳小骨(ツチ・キヌタ・アブミ)→卵円窓→内耳(蝸牛・コルチ器)」「コルチ器: 基底膜上の有毛細胞が機械電気変換」「基底膜: 基部=高周波・頂部=低周波(行波説)」「騒音性難聴: 4,000Hz付近が早期低下」「骨導は正常人でも機能する(気導のみではない)」が頻出です。オの誤りは「骨導が機能しない」という正常生理の誤認です。

職場での応用として、85dB以上の騒音作業場では個人用防音保護具(耳栓・防音イヤーマフ)の使用義務と、定期的な聴力検査(4,000Hz・1,000Hz)による難聴の早期発見が衛生管理者の重要業務です。

【根拠】医学的事実(確立した聴覚生理学)。気導・骨導の経路・コルチ器の機能・基底膜の周波数局在・騒音性難聴の特性は確立した知識。

【補足】オが誤り:骨導は正常人でも機能する聴音経路(自分の声・音叉試験・骨導補聴器に応用)。「気導のみ」は誤り。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(確立した聴覚生理学)。骨導(bone conduction)は正常人でも機能し、音叉試験・補聴器(骨導補聴器)に応用されている。「骨導は機能しない」は誤りである。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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科目別に解いて、衛生管理者に合格

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