労働生理74内分泌

衛生管理者 労働生理 問74:内分泌

カルシウム代謝の調節に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 副甲状腺ホルモン(PTH: parathyroid hormone)は副甲状腺(上皮小体)から分泌され、血中Ca²⁺濃度の低下によって分泌が促進され、血中Ca²⁺濃度の上昇によって分泌が抑制される(負のフィードバック)。
  • PTHは腎臓においてカルシウムの再吸収を促進するとともに、活性型ビタミンD(1,25-ジヒドロキシビタミンD₃)の産生を促進し、小腸でのカルシウム吸収を間接的に増加させる。
  • カルシトニンは甲状腺(傍濾胞細胞=C細胞)から分泌されるホルモンで、血中Ca²⁺濃度が上昇したときに分泌が促進され、骨からのカルシウム放出(骨吸収)を抑制することで血中Ca²⁺を低下させる方向に作用する。
  • PTHは骨に作用して骨吸収(破骨細胞の活性化によるカルシウム放出)を促進するため、PTHが慢性的に高値になると骨密度が低下し、骨折リスクが増大する。
  • ビタミンDの活性化は皮膚での紫外線照射(7-デヒドロコレステロール→ビタミンD₃合成)と食事摂取の両方が供給源となり、最終的な活性化は肝臓(25位水酸化)で完結する。正答
正答:ビタミンDの活性化は皮膚での紫外線照射(7-デヒドロコレステロール→ビタミンD₃合成)と食事摂取の両方が供給源となり、最終的な活性化は肝臓(25位水酸化)で完結する。

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誤りはオです。「最終的な活性化は肝臓(25位水酸化)で完結する」という部分が誤りです。ビタミンDの活性化は2段階あります。まず皮膚(UV照射)または食事から得たビタミンD₃が肝臓で25位水酸化されて「25-OH-D₃(カルシジオール)」になります。次に腎臓で1位水酸化されて「1,25-(OH)₂-D₃(カルシトリオール)=活性型ビタミンD」に最終活性化されます。つまり最終活性化は腎臓で行われます。腎不全では活性型ビタミンD産生が低下し、カルシウム吸収障害→低Ca血症→PTH上昇(二次性副甲状腺機能亢進症)を生じます。

標準試験対策の基準レベル

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(正): PTH(副甲状腺ホルモン: パラサイロイドホルモン)は副甲状腺(甲状腺後面に4つ付着)の主細胞から分泌されます。血中Ca²⁺(イオン化カルシウム)低下→PTH分泌増加→血中Ca²⁺上昇→PTH分泌抑制(負のフィードバック)。正常の血清カルシウム濃度: 8.5〜10.5 mg/dL(イオン化Ca²⁺: 1.1〜1.3 mmol/L)。カルシウム感受性受容体(CaSR)が副甲状腺の細胞膜上でCa²⁺を感知します。
  • イ(正): PTHの腎臓への作用: ①遠位尿細管でのCa²⁺再吸収促進②1α-水酸化酵素の活性化→25-OH-D₃→1,25-(OH)₂-D₃(活性型VD)産生促進③近位尿細管でのリン酸再吸収抑制(リン排泄増加)。活性型VDは小腸でのCa²⁺・リン酸吸収を促進します(VDRへの結合→カルシウム輸送タンパク(TRPV6・カルビンディン)の発現誘導)。
  • ウ(正): カルシトニン(calcitonin)は甲状腺の傍濾胞細胞(parafollicular cells=C細胞)から分泌されます(甲状腺ホルモン(T3・T4)とは別の細胞)。血中Ca²⁺上昇→カルシトニン分泌→破骨細胞の活性抑制→骨吸収抑制→血中Ca²⁺低下。ただしヒトでのカルシトニンのカルシウム代謝への寄与はPTHほど強くなく、PTHの方が主役です。カルシトニンは骨粗鬆症治療薬(経鼻スプレー・注射)としても使用されます。
  • エ(正): PTHの骨への作用: 急性的には骨からCa²⁺を遊離(骨溶解)・破骨細胞を活性化→骨吸収。慢性的に高PTH(原発性副甲状腺機能亢進症・二次性副甲状腺機能亢進症)→持続的な骨吸収亢進→骨密度低下→骨粗鬆症・骨折リスク増大(PTHの間欠的投与は骨形成促進に使われるが、持続的高PTHは骨吸収優位)。
  • オ(誤): ビタミンD活性化の正しい経路: ①皮膚(UV照射)でコレステロール誘導体(7-デヒドロコレステロール)→ビタミンD₃(コレカルシフェロール)、または食事でVD₂・VD₃を摂取→②肝臓(25-水酸化酵素: CYP2R1・CYP27A1)→25-OH-D₃(カルシジオール)③腎臓(1α-水酸化酵素: CYP27B1)→1,25-(OH)₂-D₃(カルシトリオール=活性型ビタミンD)。「最終活性化が肝臓で完結」は誤り→正しくは腎臓で最終活性化
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

#### 1. カルシウム代謝の統合調節

血中Ca²⁺の調節は三臓器(腸・骨・腎)と三ホルモン(PTH・活性型VD・カルシトニン)の協調によります:

低Ca血症時の応答(PTH主導):

1. 低Ca→副甲状腺CaSR感知→PTH分泌↑

2. PTH→腎臓(Ca²⁺再吸収↑・リン排泄↑・1,25-OH₂-D産生↑)

3. PTH→骨(破骨細胞活性化→骨吸収→Ca²⁺放出↑)

4. 1,25-OH₂-D→小腸(Ca²⁺・リン吸収↑)

5. 血中Ca²⁺回復→PTH分泌抑制(フィードバック)

高Ca血症時の応答(カルシトニン補助):

1. 高Ca→C細胞感知→カルシトニン分泌↑

2. カルシトニン→骨(破骨細胞抑制→骨吸収↓)

3. カルシトニン→腎(Ca²⁺排泄↑)

4. 高Ca→副甲状腺CaSR感知→PTH分泌↓→活性型VD産生↓→小腸Ca吸収↓

| ホルモン | 分泌部位 | 刺激 | 腸 | 骨 | 腎 | 血中Ca²⁺ |

|--------|---------|------|-----|-----|-----|---------|

| PTH | 副甲状腺 | 低Ca | 間接↑ | 骨吸収↑ | Ca再吸収↑ | ↑ |

| 活性型VD | 腎(産生) | 低Ca・高PTH | Ca吸収↑ | 骨吸収促進(骨形成も) | Ca再吸収↑ | ↑ |

| カルシトニン | 甲状腺C細胞 | 高Ca | ー | 骨吸収↓ | Ca排泄↑ | ↓ |

#### 2. ビタミンD代謝と臨床疾患

活性型ビタミンDの欠乏による疾患:

くる病(小児)・骨軟化症(成人):

  • 原因: VD欠乏(日照不足・摂取不足)または腎不全(腎性骨異栄養症)
  • 病態: Ca²⁺・リン吸収低下→骨のミネラル化障害→軟化・変形
  • くる病の症状: O脚・X脚・頭蓋骨軟化(乒乓骨)・肋骨念珠(costal beading)

二次性副甲状腺機能亢進症(renal hyperparathyroidism):

  • 慢性腎不全→1α-水酸化酵素活性低下→活性型VD低下→腸管Ca吸収低下
  • 低Ca→PTH持続分泌↑→骨吸収↑(腎性骨異栄養症)
  • 治療: 活性型VD補充・Ca補充・透析

過剰VDの副作用(高Ca血症):

  • VDサプリメントの過剰摂取(医薬品VDの過剰投与も)
  • 高Ca血症症状: 倦怠感・多尿・腹痛・意識障害(「bones, stones, groans, moans」)

#### 3. 職場と骨代謝(骨粗鬆症・職業性骨疾患)

骨粗鬆症と職場環境:

  • 屋内作業(日照不足)→VD産生低下→Ca吸収低下→骨密度低下リスク
  • 重金属(カドミウム)暴露: 腎臓の近位尿細管障害→活性型VD産生低下 + 直接骨障害→イタイイタイ病(カドミウム腎障害+骨軟化症)
  • フッ素化合物(工業的暴露): 歯フッ素症・骨フッ素症(慢性高濃度暴露)

健康診断での骨代謝評価:

  • 骨密度測定(DXA: 二重X線吸収法): T-score ≦ -2.5 が骨粗鬆症
  • 血液検査: 血清Ca・P・ALP(骨型)・PTH・活性型VD・骨代謝マーカー(NTX・CTX)
  • カドミウム暴露労働者: 尿β₂-ミクログロブリン(近位尿細管障害マーカー)・尿カドミウム

#### 4. 衛生管理者試験での頻出論点と職場への応用

試験では「PTH=副甲状腺から分泌・低Ca²⁺で増加→骨吸収促進・腎でCa再吸収促進・活性型VD産生促進→血中Ca↑」「カルシトニン=甲状腺C細胞から分泌・高Ca²⁺で増加→骨吸収抑制→血中Ca↓」「ビタミンD活性化: 皮膚→肝臓(25位水酸化)→腎臓(1位水酸化=最終活性化)→活性型VD」「腎不全→活性型VD産生低下→二次性PTH過剰→骨粗鬆症」が頻出です。オの誤りは「活性化が肝臓で完結」という腎臓と肝臓の役割混同です。

【根拠】医学的事実(確立した内分泌学・骨代謝学)。PTH・カルシトニン・活性型ビタミンDのカルシウム代謝調節における役割・ビタミンD活性化経路は確立した知識。

【補足】オが誤り:活性型VD(1,25-(OH)₂-D₃)の最終活性化(1位水酸化)は腎臓で行われる(肝臓では25位水酸化=中間形)。腎不全で活性型VD産生が低下する理由がここにある。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(確立した内分泌学)。ビタミンDの最終活性化(1位水酸化)は腎臓で行われる(肝臓では25位水酸化=中間形態まで)。「最終活性化が肝臓で完結する」は誤りである。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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