労働生理9循環器

衛生管理者 労働生理 問9:循環器

血液循環に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 肺動脈には酸素を豊富に含む動脈血が流れており、肺でのガス交換を終えた静脈血が肺静脈を通じて左心房に戻る。
  • 体循環(大循環)において、大動脈から末梢に送られる血液は酸素濃度が高い動脈血であり、各組織でのガス交換後に戻る血液は酸素濃度が低い静脈血である。正答
  • 冠動脈(冠状動脈)は大動脈から分岐して肺に酸素と栄養素を供給する血管であり、冠動脈が狭窄・閉塞すると肺梗塞が起きる。
  • 毛細血管の壁は筋肉層が厚く、血液の組織への物質移動を厳密に制御しているため、静水圧によって液体が組織に滲出することはない。
  • 静脈血は常に心臓に向かって流れ、静脈内にある弁は血液の逆流を防いでいるが、動脈には弁が存在しない。
正答:体循環(大循環)において、大動脈から末梢に送られる血液は酸素濃度が高い動脈血であり、各組織でのガス交換後に戻る血液は酸素濃度が低い静脈血である。

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正しいのはイです。体循環(大循環)では、左心室→大動脈→全身の組織へ酸素を多く含む「動脈血」が送られ、各組織でO₂を渡してCO₂を受け取った後、酸素濃度が低い「静脈血」となって大静脈→右心房に戻ります。これは体循環の基本的な流れとして正確です。

各誤りの要点: ア→肺動脈には静脈血が流れ、肺静脈には動脈血が流れます(血管名と血液の種類が逆になる点が最重要)。ウ→冠動脈は心筋に血液を供給する血管です(肺ではない)。閉塞すると心筋梗塞が起きます。エ→毛細血管は1細胞層の内皮のみで壁が非常に薄く、静水圧により液体は組織へ滲出します(浮腫の機序)。オ→動脈にも半月弁(大動脈弁・肺動脈弁)が存在します。

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各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(誤): 「動脈=動脈血・静脈=静脈血」という思い込みが典型的な誤りです。血管の名称は「心臓から出る方向=動脈・心臓に戻る方向=静脈」という定義によります。肺循環では心臓(右心室)から出るので「肺動脈」ですが、肺でのガス交換前の血液なので「静脈血(酸素が少ない血液)」が流れます。逆に肺静脈には肺でガス交換された「動脈血(酸素が多い血液)」が流れます。
  • イ(正): 体循環の正確な記述です。左心室→大動脈(動脈血)→各組織(O₂供給・CO₂回収)→静脈(静脈血)→大静脈→右心房。
  • ウ(誤): 冠動脈(冠状動脈)は心臓そのものに酸素と栄養素を供給する血管です。大動脈の根部(大動脈弁のすぐ上)から左右に分岐します。冠動脈が狭窄・閉塞すると心筋梗塞・狭心症が起きます(肺梗塞ではありません)。
  • エ(誤): 毛細血管の壁は内皮細胞1層のみで非常に薄く、物質移動が盛んです。スターリングの法則(静水圧と膠質浸透圧のバランス)に従い、毛細血管の動脈端では静水圧が高く液体が組織へ滲出します(リンパ管で回収される)。静水圧が高まると浮腫が生じます。
  • オ(誤): 静脈内に弁(静脈弁)が存在して逆流を防いでいる点は正しいですが、動脈にも弁が存在します。大動脈弁(左心室と大動脈の間)と肺動脈弁(右心室と肺動脈の間)が心臓の出口に位置し、血液の逆流を防ぎます(半月弁)。
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

【理論的背景】

循環系は「体循環(大循環)」と「肺循環(小循環)」の二重の閉鎖ループからなります。この二重構造によって、全身へのO₂供給と肺でのガス交換が効率よく連携されています。

動脈・静脈の命名規則の徹底理解:

  • 「動脈」= 心臓から血液が「出ていく」方向の血管(血液の酸素含量は問わない)
  • 「静脈」= 心臓に血液が「戻ってくる」方向の血管
  • 体循環の動脈 = 動脈血(O₂多)、静脈 = 静脈血(O₂少)→イメージと一致
  • 肺循環の動脈(肺動脈)= 静脈血(O₂少)、静脈(肺静脈)= 動脈血(O₂多)→逆転

毛細血管での物質交換(スターリングの法則):

  • 動脈端: 毛細血管内静水圧(約35mmHg)> 膠質浸透圧(約25mmHg)→正味の力が組織方向→液体が組織に滲出→O₂・栄養素を組織に供給
  • 静脈端: 毛細血管内静水圧(約15mmHg)< 膠質浸透圧(約25mmHg)→正味の力が血管方向→液体が血管に戻る→CO₂・老廃物を回収
  • 余剰分はリンパ管が回収→胸管→静脈へ

【実務・条文構造】

冠動脈解剖と職業性心疾患リスク:

冠動脈の主要分枝:

  • 左冠動脈主幹(LMT): 左前下行枝(LAD)と左回旋枝(LCX)に分岐
  • LAD: 左心室前壁・心室中隔を栄養(最も広い灌流域・閉塞で大梗塞)
  • LCX: 左心室側壁・後壁を栄養
  • 右冠動脈(RCA): 右心室・左心室下壁・洞房結節・房室結節を栄養

急性冠症候群(ACS)と職場での対応:

  • 急性心筋梗塞の典型症状: 胸痛(締め付け感・30分以上持続)・放散痛(左肩・顎・背部)・冷汗・嘔気
  • 職場での初期対応: 安静保持→119番通報→AEDの準備→意識消失時はCPR開始
  • 労働衛生的観点: 過重労働・寒冷曝露・精神的ストレスは冠動脈スパズム・プラーク破裂のリスクを高める

浮腫の機序と職場での関連:

  • 静水圧上昇(心不全・深部静脈血栓症)→動脈端での滲出が増加・静脈端での回収が不十分→浮腫
  • 長時間立位(美容師・調理師・店員等)→下肢の静脈血が貯留→下肢浮腫→静脈弁の機能が重要
  • 膠質浸透圧低下(低タンパク血症・栄養不足)→回収する力が低下→浮腫

【試験での位置づけ】

循環器問題の中で「肺動脈に静脈血・肺静脈に動脈血が流れる(逆転の理解)」はほぼ毎回出題されます。アのように「肺動脈に動脈血」という誤りは最も出やすい引っかけです。冠動脈が心臓に血液を供給する(心筋に栄養を届ける)ことも重要で、閉塞すると「心筋梗塞」(肺梗塞ではない)が起きることを確実に押さえましょう。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: なぜ「肺動脈に静脈血が流れる」のか、機能的に考えると: 体中を巡って酸素を使い果たした血液(静脈血)が右心室に集まり、そこから「肺に向けて出発する」ので「肺動脈」と呼ばれます。肺でO₂を受け取り、CO₂を渡した後の酸素豊富な血液が「肺から心臓に戻る」ので「肺静脈」と呼ばれます。方向性で名前が決まる、と覚えると混乱しません。
  • ウ: 肺梗塞(肺塞栓症)は深部静脈血栓症(DVT)で生じた血栓が静脈から右心房→右心室→肺動脈に飛んで肺動脈を詰まらせることで起きます。原因は冠動脈の狭窄・閉塞ではありません。「エコノミークラス症候群」として知られ、長時間の同一体位保持(飛行機・テレワーク)が誘因です。
  • エ: 浮腫(むくみ)の原因は大きく4つに分類できます。①静水圧上昇(心不全・深部静脈血栓症・長時間立位)、②膠質浸透圧低下(低アルブミン血症・ネフローゼ症候群・肝硬変)、③毛細血管透過性亢進(炎症・アレルギー・熱傷)、④リンパ管閉塞(リンパ浮腫・外科的リンパ節郭清後)。
  • オ: 静脈弁が機能不全になると下肢静脈瘤が生じます。長時間立位作業の職業(美容師・調理師・看護師等)では下肢静脈瘤のリスクが高く、弾性ストッキング着用・定期的な運動(ふくらはぎの筋ポンプ作用の活用)が予防に有効です。

【根拠】医学的事実(確立した生理学)。体循環・肺循環の動脈血・静脈血の流れ、冠動脈の役割、スターリングの法則は循環生理学の基礎概念として確立。

【補足】肺動脈=静脈血・肺静脈=動脈血(逆転の関係)。冠動脈は心臓自身に栄養を供給し、閉塞すると心筋梗塞。毛細血管は薄い壁で物質交換を行い、静水圧により液体が組織へ滲出する。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(確立した生理学)。体循環・肺循環における動脈血・静脈血の定義と流れは生理学の基本概念。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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