危険物乙四 基礎的な物理学及び基礎的な化学 問98:燃焼範囲(爆発限界)
灯油の燃焼範囲(爆発限界)および引火点に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア灯油の燃焼範囲の下限値はガソリンより低く、灯油の方が引火点が低い。
- イ灯油の引火点は約 40℃以上であり、常温(20℃程度)では蒸気がほとんど発生せず、液面に火を近づけても引火しにくい。正答
- ウ灯油は燃焼範囲が広いため(例えば下限1%以下・上限90%以上)、極めて危険な液体である。
- エ灯油を霧状(微細な液滴)にすると、燃焼下限値(vol%)が上昇し引火しにくくなる。
- オ灯油の燃焼範囲(約1.1〜6%)はガソリン(約1.4〜7.6%)より広く、灯油の方が爆発の危険が高い。
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正しいのはイです。灯油の引火点は約40℃以上であり、常温(20℃程度)では蒸気がほとんど発生せず、液面に直接火を近づけても通常は引火しにくい特徴があります。
- ア(誤): 灯油は引火点が高く(40℃以上)、ガソリン(引火点−40℃以下)より引火点が高い(安全側)。
- イ(正): 引火点40℃以上。常温では燃焼下限値に達する蒸気が発生しない。正しい。
- ウ(誤): 灯油の燃焼範囲は約1.1〜6%(比較的狭い)。90%以上は誤り。
- エ(誤): 霧状(微細液滴)にすると表面積が増え、単位体積あたりの蒸発量が増加→引火しやすくなる(下限値が実効的に下がる)。
- オ(誤): 燃焼範囲の幅はガソリン(1.4〜7.6%=6.2%)の方が灯油(1.1〜6%=4.9%)より広い。ガソリンの方が爆発危険は高い。
「灯油の引火点 = 40℃以上・常温では引火しにくい」を確実に押さえてください。
灯油の燃焼範囲と引火点(§1-2物性表確定値・確立した化学):
灯油の確定物性:
- 引火点: 約40℃以上(§1-2確定値)
- 発火点: 約220℃
- 液比重: 0.8前後(< 1、水より軽い)
- 蒸気比重: 4.5前後
- 燃焼範囲: 約1.1〜6%(§1-2確定値)
各選択肢:
- ア(誤): 灯油(引火点40℃以上)はガソリン(引火点−40℃以下)より引火点が高い。下限値の低さも灯油の方が高い(ガソリンの方が危険)。
- イ(正): 引火点40℃以上→常温(20℃)では蒸気量が燃焼下限値(1.1%)に達しない→液面への点火で通常は引火しにくい。ただし布等に染み込ませた場合や霧状に噴霧した場合は危険。
- ウ(誤): 灯油の燃焼範囲は約1.1〜6%(幅≒4.9%)。上限が90%以上という記述は完全な誤り(灯油はそれほど危険な燃焼範囲を持たない)。
- エ(誤): 霧状(微細液滴)にすると実質的な蒸発量が増え、「燃焼下限値(vol%)」が実効的に低くなる(着火しやすくなる)。「上昇して引火しにくくなる」は逆。灯油に布を浸して放置→引火点以下でも引火しうる現象と同原理。
- オ(誤): 燃焼範囲の幅: ガソリン(7.6−1.4=6.2%)vs 灯油(6−1.1=4.9%)。ガソリンの方が広い(危険大)。
引っかけ: エ(霧状にすると安全)は頻出の誤り。霧状・布染込みで引火点以下でも危険になる。
【理論的背景:引火点と「実効的」な引火危険性】
引火点は「平静な液面から蒸発した気体が空気と混合して燃焼下限値に達する最低液体温度」です。これは理想的な液面(平穏な液体の表面)での蒸発に基づく値です。
液体の状態が変わると「実効的な引火危険性」が変わります:
1. 霧状(噴霧): 液体を微細な液滴にすると、表面積が劇的に増大(液滴直径1/10→表面積10倍)し、蒸発量が大幅に増加。この結果、本来の引火点以下でも燃焼下限値に達する蒸気濃度が生じうる。
2. 布染込み: 布の毛細管作用で液体が薄く広がり、表面積増大→低温でも蒸発が促進。灯油を含む雑巾(ウェス)に火を近づけると、液体の灯油より引火しやすい。
3. 加温: 引火点以上に加温すれば通常通り引火。
【灯油の位置づけと注意点】
灯油(第二石油類・非水溶性・引火点40℃以上)は常温では引火しにくい反面、この「常識」が危険な過信を招きやすい液体です:
- 「灯油は常温で引火しない」→「安全に扱える」という誤解
- 実際には加温(ストーブ補給時の熱源近傍等)・霧化・布染込みで低温でも引火危険あり
- ガソリンと混同しての貯蔵・使用も事故原因
灯油の発火点(約220℃)は比較的低く(重油より低い)、十分に加熱された表面に接触すると点火源なしに発火(自然発火)する可能性があります。
【各選択肢の発展補足】
- ア(誤): 灯油は引火点が高く(40℃以上)・燃焼下限値が1.1%でガソリン(引火点−40℃以下・下限1.4%)より「安全側」の数値。正しくはガソリンの方が危険。
- イ(正): 引火点40℃以上は「常温(20℃前後)では燃焼下限値に達する蒸気が発生しない」ことを意味する。(ただし例外状況: 霧化・布染込み等は別)
- ウ(誤): 灯油の燃焼範囲1.1〜6%(幅4.9%)は中程度。90%超という記述は完全に誤り(第4類の最大でも二硫化炭素で1.3〜50%程度)。
- エ(誤): 霧状にすると表面積増大→蒸発量増大→実効的な燃焼下限値が下がる(着火しやすくなる)。「引火しにくくなる」は逆。
- オ(誤): 燃焼範囲の幅: ガソリン(6.2%) > 灯油(4.9%)。ガソリンの方が爆発限界幅が広く危険性高い。数値を混同しないよう注意。
【試験での位置づけ】
乙四試験では「灯油の引火点40℃以上→常温では引火しにくい(ただし霧化・加熱は別)」「ガソリンと灯油の引火点・燃焼範囲の比較」が頻出です。霧状の危険性(エが誤り)は性質科目(S4・灯油・軽油の取扱い注意)と接続して記憶してください。
【根拠】§1-2物性表(灯油・確定値)・確立した化学(蒸発と表面積の関係)。
【補足】灯油:引火点40℃以上(常温では引火しにくい)・燃焼範囲1.1〜6%。霧状・布染込みで引火点以下でも危険になる。ガソリンの方が燃焼範囲幅が広い。
<!-- 監修確定 2026-06-05(legal-reviser): 灯油 引火点40℃以上・発火点約220℃・液比重0.8前後・蒸気比重4.5前後・燃焼範囲1.1〜6%すべて§1-2と一致。燃焼範囲幅 ガソリン6.2%(1.4〜7.6)>灯油4.9%(1.1〜6)の比較も正確。霧状化・布染込みで引火点以下でも引火危険増大も妥当。正答イ(引火点40℃以上で常温は引火しにくい)で一意。確定。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: §1-2物性表(確定値)・確立した化学。灯油の引火点は約40℃以上(確定値)。常温(20℃)では燃焼下限値に達する蒸気量が発生しないため、液面への点火では引火しにくい(ただし霧状・布染込みは危険)。 現行の消防法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。