登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問115:主な医薬品とその作用(漢方処方製剤)
かぜに用いる漢方処方製剤に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア桂枝湯(けいしとう)は体力中等度以上の人に適しており、汗が出ないときのかぜに用いる処方である。
- イ香蘇散(こうそさん)は体力虚弱な人のかぜの初期に用いられ、神経質で胃腸が弱い人に向く処方である。正答
- ウ桂枝湯はカンゾウ・マオウをともに含む処方であり、高血圧の患者には慎重投与となる。
- エ香蘇散はダイオウを含む処方であり、妊婦や授乳婦には使用できない。
- オ桂枝湯は体力なし(虚証)の証であるが、葛根湯と同様に発汗させてかぜを治す働きをもち、汗が出ている状態でも使用できない。
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正答はイです。
香蘇散(こうそさん)は、体力虚弱で神経質な人、胃腸が弱い人のかぜの初期に使われる漢方処方です。「虚証=体力がない」の処方として覚えましょう。
誤りの選択肢のポイントをまとめます。
- ア:桂枝湯は「体力虚弱」の人向けで、「汗が出るかぜ」(発汗傾向がある)に用います。「中等度以上」「汗が出ない」はどちらも誤りです。
- ウ:桂枝湯にマオウは含まれていません。マオウは麻黄湯・葛根湯など「実証(体力中等度以上)」のかぜ処方に含まれます。
- エ:香蘇散にダイオウは含まれません。
- オ:桂枝湯は「すでに汗が出ている(自汗)」かぜに使える処方です。
語呂:「桂枝湯は弱い人の汗かきかぜ、香蘇散は神経質な胃腸虚弱かぜ」
桂枝湯 vs 香蘇散:虚証かぜ処方の比較
| 項目 | 桂枝湯 | 香蘇散 |
|---|---|---|
| 体力(証) | 虚弱(虚証) | 虚弱(虚証) |
| 主な適応 | 汗が出ているかぜの初期、体質改善 | かぜの初期、胃腸虚弱・神経質の人 |
| 含有生薬(主要) | ケイヒ・シャクヤク・ショウキョウ・タイソウ・カンゾウ | コウブシ・ソヨウ・チンピ・カンゾウ・ショウキョウ |
| マオウの有無 | なし | なし |
| ダイオウの有無 | なし | なし |
| カンゾウの有無 | あり | あり |
| 特徴 | 自汗(すでに汗が出る)がある、虚弱体質のかぜ | 神経質・ストレス性・胃腸が弱いかぜ |
実証(汗なし)か虚証(汗あり)かで処方が変わる:
- 葛根湯・麻黄湯:体力中等度以上(実証)、汗が出ていない状態
- 桂枝湯・香蘇散:体力虚弱(虚証)、桂枝湯は自汗がある場合
各選択肢の正誤:
- ア(誤):桂枝湯は体力虚弱向け・汗が出る(自汗)かぜ向け。「中等度以上」「汗が出ない」はともに誤り。
- イ(正):香蘇散は体力虚弱で神経質・胃腸が弱い人のかぜ初期に適する。
- ウ(誤):桂枝湯にマオウは含まれない。マオウは高血圧・動悸等の副作用があるが、桂枝湯は無関係。
- エ(誤):香蘇散にダイオウは含まれない。ダイオウは妊婦禁忌成分だが香蘇散とは無関係。
- オ(誤):桂枝湯は自汗がある状態でも使用できるのが特徴。「使用できない」は誤り。
【桂枝湯と香蘇散の生薬組成と薬理の深掘り】
桂枝湯(5生薬構成)の生薬別薬理:
| 生薬 | 主な薬理作用 |
|---|---|
| ケイヒ(桂皮・シナモン)| 発汗・解表・鎮痛・抗菌。体を温めて表邪を散らす |
| シャクヤク(芍薬)| 鎮痙・鎮痛・血行促進。腹痛・筋緊張の緩和 |
| ショウキョウ(生姜)| 温熱・制吐・健胃。発汗補助 |
| タイソウ(大棗)| 補脾・緩和・安神。胃腸を整え薬効を調和 |
| カンゾウ(甘草)| 鎮痙・緩和・抗炎症。調和役(使薬)。偽アルドステロン症に注意 |
桂枝湯は「桂枝+芍薬」の基本対である。ケイヒが陽気(気・体温)を外へ向けて発汗させ、シャクヤクが陰分(体液・血)を内へ収斂する。この対が「調和営衛(えいえをちょうわ)」作用であり、すでに汗が出ている(自汗)状態でも使える理由である。葛根湯・麻黄湯はマオウによる強力な発汗促進で汗を無理に出させるが、桂枝湯は自然な発汗傾向がある人の体調を整える方向に働く。
香蘇散(5〜6生薬構成)の生薬別薬理:
| 生薬 | 主な薬理作用 |
|---|---|
| コウブシ(香附子)| 理気(気の流れを整える)・鎮痛・抗炎症。ストレス性のかぜに有効 |
| ソヨウ(紫蘇葉)| 発表(軽い発汗)・制吐・魚・蟹中毒の解毒。香りで気を巡らす |
| チンピ(陳皮)| 理気・健胃・去痰。胃腸の気滞を改善 |
| ショウキョウ(生姜)| 温熱・制吐・健胃 |
| カンゾウ(甘草)| 鎮痙・緩和・調和 |
香蘇散の「香」はコウブシ(香附子)、「蘇」はソヨウ(紫蘇)から来ている。理気(気の流れを整える)に主眼を置いた処方であり、ストレスや精神的緊張でかぜをひきやすい神経質な人に合う。胃腸虚弱にも対応するのはチンピ・ショウキョウの健胃作用による。
虚実の概念と証の判断:登録販売者の実務への接続
漢方処方を販売する際に重要な「証(しょう)」の判断軸:
| 軸 | 実証 | 虚証 |
|---|---|---|
| 体力 | 中等度以上(がっちり型・活動的) | 虚弱(やせ型・疲れやすい) |
| 汗 | 出ない(かぜでもしっかり体が反応) | 出やすい(自汗・寝汗あり) |
| 脈 | 力強い(浮・数) | 弱い(沈・遅) |
| 代表処方(かぜ) | 葛根湯・麻黄湯・小青竜湯 | 桂枝湯・香蘇散・参蘇飲 |
カンゾウ含有処方の横断注意(桂枝湯・香蘇散ともに注意):
桂枝湯・香蘇散はどちらもカンゾウを含む。複数のカンゾウ含有処方を同時に服用すると、グリチルリチン酸の1日摂取量が40mgを超えて偽アルドステロン症(低カリウム血症・浮腫・高血圧・筋力低下)を引き起こすリスクがある。他の漢方薬との重複チェックが必須。
マオウを含まないことの意義:
桂枝湯・香蘇散はマオウを含まないため、高血圧・心疾患・甲状腺機能亢進症・排尿困難(前立腺肥大)がある人でも、カンゾウ含有の確認さえ行えば比較的使いやすい処方である。マオウ含有の葛根湯や麻黄湯はこれらの疾患がある人への使用には注意が必要。
【根拠】厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章第15節
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第15節「漢方処方製剤・生薬製剤」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。