登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問121:主な医薬品とその作用(漢方処方製剤)
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)および桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア柴胡加竜骨牡蛎湯は体力虚弱な人に用い、不眠・精神不安・神経症に適する処方である。
- イ桂枝加竜骨牡蛎湯は体力が中等度以上の人の動悸・精神不安に用いられる処方である。
- ウ柴胡加竜骨牡蛎湯と桂枝加竜骨牡蛎湯はどちらも竜骨(リュウコツ)と牡蛎(ボレイ)という動物性生薬を含む。正答
- エ柴胡加竜骨牡蛎湯はマオウを含む処方であり、動悸・不眠の症状を改善する。
- オ桂枝加竜骨牡蛎湯はダイオウを含む処方であり、実証の不眠に用いられる。
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正答はウです。
柴胡加竜骨牡蛎湯と桂枝加竜骨牡蛎湯は、どちらも「竜骨(リュウコツ)」と「牡蛎(ボレイ)」という動物性の生薬を含む点が共通の特徴です。これら2つの生薬が「精神安定・鎮静」の主役です。
誤りの選択肢のポイントです。
- ア:柴胡加竜骨牡蛎湯は「体力中等度以上(比較的体力がある)」の人向けです。「虚弱」は誤り。
- イ:桂枝加竜骨牡蛎湯は「体力中等度以下(虚弱傾向)」の人向けです。「中等度以上」は誤り。
- エ:柴胡加竜骨牡蛎湯にマオウは含まれません。
- オ:桂枝加竜骨牡蛎湯にダイオウは含まれません。
語呂:「竜骨牡蛎の2つで鎮静。柴胡加は体力あり、桂枝加は虚弱向け」
柴胡加竜骨牡蛎湯 vs 桂枝加竜骨牡蛎湯:竜骨牡蛎剤の比較
| 項目 | 柴胡加竜骨牡蛎湯 | 桂枝加竜骨牡蛎湯 |
|---|---|---|
| 体力(証) | 中等度以上(比較的体力あり) | 中等度以下(虚弱傾向) |
| 主な適応 | 精神不安・不眠・神経症・高血圧の随伴症状・動悸 | 精神不安・不眠・夢精・遺尿・神経衰弱・ノイローゼ |
| 共通の特徴生薬 | リュウコツ(竜骨)・ボレイ(牡蛎)あり | リュウコツ(竜骨)・ボレイ(牡蛎)あり |
| マオウ含有 | なし | なし |
| ダイオウ含有 | なし(一部処方にあり・注意) | なし |
| カンゾウ含有 | あり | あり |
| ベース処方 | 柴胡(小柴胡湯系)に竜骨・牡蛎を加える | 桂枝湯に竜骨・牡蛎を加える |
竜骨(リュウコツ)と牡蛎(ボレイ)の薬理:
- 竜骨(リュウコツ):哺乳類の化石骨。炭酸カルシウム・リン酸カルシウムを主成分。鎮静・収斂・固渋(体液の漏れを止める)作用。
- 牡蛎(ボレイ):カキの貝殻。炭酸カルシウムを主成分。鎮静・制酸・収斂・軟堅(しこりを和らげる)作用。
両者のカルシウム系ミネラルが神経の興奮を抑え、精神安定・不眠改善に寄与する。
実証 vs 虚証の区別(竜骨牡蛎剤):
- 柴胡加竜骨牡蛎湯(中等度以上):ストレス・過労による精神的緊張が強い「実証側」の不眠・精神不安
- 桂枝加竜骨牡蛎湯(中等度以下):体力消耗・神経衰弱による虚弱な「虚証側」の不眠・精神不安
各選択肢の正誤:
- ア(誤):柴胡加竜骨牡蛎湯は「体力中等度以上」。虚弱向けではない。
- イ(誤):桂枝加竜骨牡蛎湯は「体力中等度以下(虚弱傾向)」。「中等度以上」は誤り。
- ウ(正):どちらもリュウコツとボレイを含む動物性生薬が特徴で正しい。
- エ(誤):柴胡加竜骨牡蛎湯にマオウは含まれない。
- オ(誤):桂枝加竜骨牡蛎湯にダイオウは含まれない。
【竜骨・牡蛎の伝統的使用と現代薬理研究の接点】
竜骨(リュウコツ)と牡蛎(ボレイ)は漢方の「鎮静安神薬」として傷寒論・金匱要略の時代(2000年以上前)から使われてきた動物性生薬である。
竜骨(化石骨)の成分と薬理:
- 主成分:炭酸カルシウム(CaCO₃)・リン酸カルシウム(Ca₃(PO₄)₂)・微量の鉄・アルミニウム・マグネシウム
- 動物実験での報告:鎮静・抗不安・睡眠延長効果(バルビツール酸系との相乗)・抗痙攣作用
- 現代での解釈:Caイオンの神経興奮抑制・神経伝達物質(GABA系)への間接的影響が示唆
牡蛎(カキ貝殻)の成分と薬理:
- 主成分:炭酸カルシウム(95%以上)・タウリン・コハク酸・グリコーゲン(加工方法による)
- 制酸作用:炭酸カルシウムが胃酸を中和→胃部不快感の改善
- 鎮静・安神:カルシウムとタウリンの神経安定作用
- 軟堅散結(なんけんさんけつ):しこり・腫れ物を柔らかくする(甲状腺腫等への応用も)
柴胡加竜骨牡蛎湯の生薬構成(柴胡剤として):
| 生薬グループ | 主な生薬 | 役割 |
|---|---|---|
| 疏肝・清熱 | サイコ・オウゴン | 肝気鬱結・熱を解消。精神的ストレスを緩和 |
| 降気・制吐 | ハンゲ | 気の逆上(気逆)を鎮める |
| 鎮静・安神 | リュウコツ・ボレイ | 精神興奮・不眠・動悸を鎮める |
| 補気 | ニンジン・タイソウ・カンゾウ | 気力を補い心身を安定させる |
| 利水 | ブクリョウ | 心下の水分代謝を整える |
| 瀉下 | ダイオウ(一部処方) | 便秘・熱の解消(処方によって含有あり) |
| 温裏 | ケイヒ | 気の流れを改善 |
柴胡加竜骨牡蛎湯は小柴胡湯をベースにリュウコツ・ボレイを加えた処方。小柴胡湯の間質性肺炎リスク(オウゴン含有)に準じ、インターフェロン製剤との相互作用(間質性肺炎リスク増大)に注意が必要。
桂枝加竜骨牡蛎湯の生薬構成(桂枝湯系として):
| 生薬 | 役割 |
|---|---|
| ケイヒ(桂皮) | 解表・温裏・通陽。心臓の気(陽気)を補い安定 |
| シャクヤク(芍薬) | 鎮痙・収斂。陰気(体液・血)を補い安定 |
| ショウキョウ(生姜) | 温熱・制吐・健胃 |
| タイソウ(大棗) | 補脾・安神。心身を安定させる |
| カンゾウ(甘草) | 鎮痙・調和 |
| リュウコツ(竜骨) | 鎮静・収斂・固渋 |
| ボレイ(牡蛎) | 鎮静・収斂・軟堅 |
桂枝湯(体力虚弱向けのベース処方)にリュウコツ・ボレイを加えることで、虚弱体質の人の精神不安・遺精・夜尿・不眠を治す処方となっている。「固渋(こじゅう)」の概念が重要:ダイオウ・センナ等の下剤系とは逆に、体内の物質(精・尿)が漏れ出るのを収め止める作用。
鎮静系漢方処方の横断比較(精神不安・不眠):
| 処方 | 証 | 特徴 | 動物性生薬 |
|---|---|---|---|
| 桂枝加竜骨牡蛎湯 | 虚弱〜中等度以下 | 虚弱な人の不眠・夢精・遺尿 | リュウコツ・ボレイ |
| 柴胡加竜骨牡蛎湯 | 中等度以上 | ストレス・高血圧随伴の不眠 | リュウコツ・ボレイ |
| 抑肝散 | 虚弱〜中等度 | 神経の興奮・怒りっぽい・認知症周辺症状 | なし |
| 加味帰脾湯 | 虚弱 | 心身消耗・不眠・貧血・精神不安 | なし |
| 酸棗仁湯 | 虚弱 | 心身疲労からの不眠・不安感 | なし |
登録販売者として「体力の程度」と「症状の重点(精神的緊張か体力消耗か)」で処方の見当をつけることが実務上重要。竜骨・牡蛎の2生薬が含まれる処方は上記2つのみで、「動物性の鎮静」成分として記憶の軸になる。
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 柴胡加竜骨牡蛎湯のダイオウは製剤により分かれる(ツムラ12番=サイコ/オウゴン/ケイヒ/ブクリョウ/ハンゲ/ニンジン/タイソウ/リュウコツ/ボレイの9生薬でダイオウ非含有、クラシエ等はダイオウ含有)。解説の「ダイオウ=なし(一部処方にあり・注意)」は正確で修正不要。桂枝加竜骨牡蛎湯=ケイヒ/シャクヤク/タイソウ/ショウキョウ/カンゾウ/リュウコツ/ボレイでダイオウ非含有。両処方とも竜骨・牡蛎を含むため正答ウは一意に成立。出典:ツムラ柴胡加竜骨牡蛎湯/桂枝加竜骨牡蛎湯 医療用添付文書。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第15節「漢方処方製剤・生薬製剤」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。