登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問129:主な医薬品とその作用(生薬製剤・鎮咳去痰薬)
鎮咳去痰に用いられる生薬に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- アキキョウ(桔梗)はキキョウ科植物キキョウの**花**を基原とし、去痰作用を持つ。
- イセネガはヒメハギ科植物セネガ等の**茎及び葉**を基原とし、粘膜刺激による分泌促進で去痰作用を示す。
- ウオンジ(遠志)はヒメハギ科植物イトヒメハギ等の**根**を基原とし、去痰・鎮静の両作用を持つ。正答
- エシャゼンソウ(車前草)はオオバコ科植物オオバコの**種子のみ**を基原とし、去痰作用を持つ。
- オキキョウとセネガはどちらもキキョウ科植物を基原とし、サポニンを含む点で共通する。
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正答はウです。
オンジ(遠志)はヒメハギ科植物イトヒメハギ等の根を基原とし、去痰作用と鎮静作用の両方を持つ生薬です。記述ウはこれを正確に示しています。
各誤り選択肢のポイントを覚えましょう。
- ア→キキョウの基原は「根」(花ではない)
- イ→セネガの基原は「根」(茎及び葉ではない)
- エ→シャゼンソウの基原は「オオバコの花期の全草」(種子のみではない/種子はシャゼンシ)
- オ→セネガはヒメハギ科。キキョウとは科が別
語呂合わせ:「キキョウは根っこで礎(さぽにんも根)」「セネガ・オンジは同じヒメハギ科仲間」と整理すると基原の区別が定着します。
去痰生薬の基原・成分・作用まとめ:
| 生薬名 | 科名 | 薬用部位 | 主な去痰機序 | 特記 |
|---|---|---|---|---|
| キキョウ(桔梗) | キキョウ科 | 根 | 気道粘液分泌促進(サポニン) | 漢方「桔梗湯」の主薬 |
| セネガ | ヒメハギ科 | 根 | 気道分泌促進・粘液溶解(サポニン) | 小児用去痰シロップに多い |
| オンジ(遠志) | ヒメハギ科 | 根 | 気道分泌促進+鎮静 | 去痰と鎮静の両用途 |
| シャゼンソウ(車前草) | オオバコ科 | 花期の全草 | 粘液溶解・気道保湿 | 種子はシャゼンシ(車前子)と別称 |
各選択肢の解説:
- ア(誤): キキョウの薬用部位は根です。花は薬用部位ではありません。根に含まれるプラチコジン等のトリテルペノイドサポニンが気道粘膜を刺激し、気道分泌を促進します。
- イ(誤): セネガの薬用部位は根です。茎・葉ではありません。根に豊富なセネガサポニンが粘膜を刺激して気道分泌を促し、去痰効果を示します。
- ウ(正): オンジはヒメハギ科植物イトヒメハギ等の根が薬用部位で、去痰作用に加えて鎮静作用も持ちます。手引きに明示された記述です。
- エ(誤): シャゼンソウの基原はオオバコ科植物オオバコの花期の全草です。種子のみを用いる場合はシャゼンシ(車前子)と称しますが、シャゼンソウ(車前草)は花期の全草が薬用部位です。
- オ(誤): セネガはヒメハギ科であり、キキョウ科とは異なります。両者はどちらもサポニンを含む点は共通しますが、「同じキキョウ科」という記述は誤りです。
【去痰生薬のサポニン薬理と気道粘液調節機序】
去痰生薬に共通する主要活性成分はサポニン類であり、気道粘液の産生・輸送を増加させることで「痰を排出しやすくする」作用をもたらします。以下に各生薬の成分と機序を詳解します。
1. キキョウのサポニン薬理
キキョウ根にはプラチコジン(platycodin)A・D等のトリテルペノイドサポニン20種以上が含まれます。これらは以下の機序で去痰効果を示します。
- 気道上皮刺激による粘液分泌促進: サポニンが気道粘膜の杯細胞や粘液腺を直接刺激し、水分量の多い漿液性分泌を増加させます。この希釈作用で痰の粘稠度が低下し、繊毛輸送が容易になります。
- 界面活性(表面張力低下)効果: サポニンの両親媒性構造が気道表面液層(ASL)の表面張力を低下させ、痰の流動性を改善します。
手引きでは単に「去痰作用」として記載されていますが、この機序が背景にあります。
2. セネガのサポニン・テヌイホリンの特徴
セネガ根にはセネガサポニン(senegin)群が含まれ、三酸塩型のトリテルペノイドサポニンが主成分です。キキョウサポニンとは化学構造が異なりますが、気道分泌促進の機序は類似しています。セネガは特に小児用去痰薬・シロップ剤に配合されることが多く、味の調整がしやすい液剤親和性の高い生薬です。
3. オンジの多目的薬理:去痰+鎮静
オンジ(遠志・Polygala tenuifolia の根)にはサポニン(テヌイホリン等)のほか、シロタボシン・ポリガラキシン等のキサントン配糖体が含まれます。
- 去痰: サポニンによる気道分泌促進はキキョウ・セネガと共通
- 鎮静: キサントン類が中枢神経に作用し、軽度の鎮静・精神安定効果を示すと考えられています。漢方では健忘・不眠・動悸の処方(帰脾湯・天王補心丹等)に配合される所以です
この2重の作用が、小児の夜泣きを伴う咳症状に使用される根拠となっています。
4. シャゼンソウ(車前草)とシャゼンシ(車前子)の区別
シャゼンソウ(車前草)はオオバコ科植物オオバコ(Plantago asiatica)の花期の全草が薬用部位です(手引き表記は「オオバコの花期の全草」)。一方、同植物の種子を用いる場合は「シャゼンシ(車前子)」と呼び、腸内で水分を吸収して膨潤する性質(ムチラーゲ・サイリウム類似)が利用されます。
登録販売者試験では「草(ソウ)か子(シ)か=全草か種子か」を問う問題が出題されます。「車前草は全草・車前子は種子」と対比して記憶してください。
5. 鎮咳去痰薬の総合的な理解
- 去痰成分の主な種類: ①気道分泌促進型(キキョウ・セネガ・オンジ・シャゼンソウ)②粘液溶解型(L-カルボシステイン:粘液中の構造タンパクを切断)③粘液修復型(フドステイン)
- 生薬系去痰成分はすべて「分泌促進型」に属します。化学合成成分との機序の違いを理解しておくと、他成分との配合理由の説明に役立ちます。
【上位資格・実務への接続】
薬剤師国家試験や調剤薬局実務では、サポニンの溶血作用(高濃度静注は禁忌・経口は消化管分解で問題なし)が出題されます。登録販売者業務では、キキョウ・セネガを含む市販去痰薬の選択相談に対し、「気道分泌を増やして痰を薄める作用」と平易に説明できる能力が求められます。
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): シャゼンソウ=オオバコ科オオバコの「花期の全草」で確定(手引き/日本薬局方表記。葉及び花茎ではなく花期の全草)。種子のみはシャゼンシ(車前子)。本文・表・解説を「花期の全草」に統一。キキョウ=キキョウ科・根/セネガ・オンジ=ヒメハギ科・根も確認済。正答ウ(オンジ=ヒメハギ科・根、去痰+鎮静)で確定。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第2節「鎮咳去痰薬」および第15節「漢方処方製剤・生薬製剤」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。