登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問134:主な医薬品とその作用(生薬製剤・強心薬・動物生薬)
強心・鎮静に用いられる動物由来の生薬に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- アジャコウ(麝香)はシカ科動物のオスの麝香腺分泌物を基原とし、強心・興奮・鎮静の作用を持つ。
- イシンジュ(真珠)はウグイスガイ科動物アコヤガイ等の外套膜組成中に病的に形成された顆粒状物質を基原とし、鎮静の作用を持つ。
- ウジャコウは「六神丸」「救心」等の強心薬に配合されており、動悸・息切れの症状に用いられる。
- エシンジュはムラサキガイ科動物の外殻(殻の白い部分)を基原とし、強心・解熱・鎮静に用いられる。正答
- オジャコウの主成分ムスコンは動物由来の特有の香り成分であり、香料としても利用される。
AI解説(初心者・標準・上級)
理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠も明記。
正答はエです。
シンジュ(真珠)の基原はムラサキガイ科の外殻ではありません。ウグイスガイ科動物アコヤガイ等の外套膜組成中に病的に形成された顆粒状物質が基原です。「外殻(殻)」という記述は誤りです。
各正しい選択肢のポイントを整理します。
- ア→ジャコウはシカ科・オスの麝香腺分泌物(腺袋の内容物)
- イ→シンジュはウグイスガイ科・外套膜組成中に病的に形成された顆粒状物質(鎮静作用)
- ウ→ジャコウは六神丸・救心等の強心薬に配合(正しい)
- オ→主成分ムスコンは香料にも利用される(正しい)
語呂:「麝香(じゃこう)はジャコウジカの雄の分泌物・真珠(しんじゅ)はアコヤガイの玉」と覚えましょう。
強心・鎮静動物生薬の基原・薬用部位・主作用まとめ:
| 生薬名 | 動物種 | 薬用部位/由来 | 主な作用 | 代表配合製品 |
|---|---|---|---|---|
| ジャコウ(麝香) | シカ科(ジャコウジカ等) | オスの麝香腺分泌物(腺袋の内容物) | 強心・興奮・鎮静・開竅 | 六神丸・救心・牛黄清心丸 |
| シンジュ(真珠) | ウグイスガイ科(アコヤガイ等) | 外套膜組成中に病的に形成された顆粒状物質 | 鎮静 | 六神丸・強心剤 |
各選択肢の解説:
- ア(正): ジャコウ(麝香)はシカ科動物ジャコウジカ(Moschus moschiferus)等のオスが持つ麝香腺の腺袋(へそ付近に位置する)に貯留した分泌物(腺袋の内容物)が基原です。主成分ムスコン(muscone:大環状ケトン)が独特の強い麝香臭を放ちます。強心・興奮・鎮静・開竅(意識回復)の多面的作用を持ちます。
- イ(正): シンジュ(真珠)はウグイスガイ科動物アコヤガイ(Pinctada martensii)等の外套膜組成中に病的に形成された顆粒状物質が基原です(手引き表記)。炭酸カルシウム(アラゴナイト)とタンパク質(コンキオリン)の層状構造体で、手引きでは主に鎮静作用を期待して用いられます。
- ウ(正): ジャコウは六神丸・救心等のOTC強心薬に主要成分として配合され、動悸・息切れ・気つけに用いられます。
- エ(誤・正答): シンジュの基原はムラサキガイ科でも外殻でもありません。ウグイスガイ科のアコヤガイ等の外套膜組成中に病的に形成された顆粒状物質(真珠)が正しい基原です。貝殻(外殻)を用いる生薬は別にありますが、それはシンジュ(真珠)とは別物です。
- オ(正): ジャコウの主成分ムスコン(muscone)は16員環の大環状ケトンで、麝香特有の深く持続性のある香り(アニマル・ノート)の主体です。香水・フレグランス産業でも天然ムスコンは最高級の香料原料の一つです。
【ジャコウ(麝香)の薬理と希少性・代替問題】
1. ムスコンの薬理機序
ジャコウの主成分ムスコン(3-methylcyclopentadecanone)は以下の多面的な生理活性を示します。
- 強心作用: ムスコンは心筋のβ1受容体を軽度刺激し、心拍出量を増加させると考えられています。中枢神経への直接作用と末梢循環改善の両面から強心効果が発現します。
- 中枢神経への二面作用(開竅・鎮静): 漢方理論では「竅(きょう)を開く=意識障害・昏睡からの覚醒」と「鎮静(過興奮の鎮静)」の双方向性の調節作用があるとされています。西洋薬理学的には「適応性」「アダプトゲン様」の性質に相当すると解釈されます。
- BBB(血液脳関門)透過性: ムスコンは脂溶性・低分子量のため、血液脳関門を透過しやすく、中枢への直接作用が期待されます。
2. CITES(ワシントン条約)とジャコウジカの保護
天然ジャコウジカはCITES附属書Iに掲載されており、商業目的の国際取引が原則禁止されています。これにより、日本の市場に流通するジャコウの多くは中国で管理飼育されたジャコウジカからの採取品または合成ムスコンです。
高品質の六神丸・牛黄清心丸等では天然ジャコウが配合されますが、その希少性と価格を反映して製品価格が高い(数千円〜数万円/箱)のが現実です。登録販売者として「天然ジャコウ含有製品の価格が高い理由」を顧客に説明できると信頼性が高まります。
3. シンジュ(真珠)の炭酸カルシウムと薬理
真珠はアラゴナイト型炭酸カルシウム(CaCO₃)とコンキオリン(タンパク質)が交互に積層した構造を持ちます。
- 鎮静作用: 炭酸カルシウムのCa²⁺が細胞の膜電位を安定させ、神経・筋の過興奮を抑制すると考えられています
- 解熱: カルシウムイオンの体温調節中枢への関与(視床下部のセットポイント調節補助)が一因
- 強心: 心筋の収縮にCa²⁺が必須であり、イオン供給源として寄与するとされます
なお、シンジュの鎮静・強心作用の強さは他の動物生薬(ジャコウ・ゴオウ)と比較してマイルドであり、小児の夜泣き・神経症状に用いられる処方(小児薬・安神薬)への配合が多い点も特徴です。
4. 動物生薬の横断整理
登録販売者試験に頻出の動物生薬を一覧で整理します。
| 生薬名 | 動物 | 薬用部位 | 主な用途 | 試験注意点 |
|---|---|---|---|---|
| ジャコウ(麝香) | シカ科オス | 麝香腺分泌物 | 強心・開竅 | 「腺袋の内容物」 |
| シンジュ(真珠) | ウグイスガイ科 | 外套膜中に病的に形成された顆粒状物質 | 鎮静 | 「外套膜中に病的に形成」 |
| ゴオウ(牛黄) | 牛 | 胆嚢中の胆石 | 強心・解熱・解毒 | 「胆石」 |
| ユウタン(熊胆) | クマ科 | 胆汁を乾燥 | 消炎・健胃 | 「胆汁の乾燥物」 |
| ロクジョウ(鹿茸) | シカ科 | 幼角(袋角) | 滋養強壮 | 「骨化していない幼角」 |
「シンジュ=貝の外殻ではなく、外套膜組成中に病的に形成された顆粒状物質(真珠)」という由来の正確な理解が、本問の正答選択に直結します。動物生薬は「どの動物の、どの部位・由来か」を正確に覚えることが登録販売者試験のYMYL合格基準です。
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 【基原表記修正】シンジュの基原は手引き表記「ウグイスガイ科のアコヤガイ、シンジュガイまたはクロチョウガイ等の外套膜組成中に病的に形成された顆粒状物質」で確定。作問版の「外套膜を刺激して得られた真珠(養殖真珠)」は手引き表記と不一致のため「外套膜組成中に病的に形成された顆粒状物質」に全箇所修正。シンジュの主作用は手引きでは「鎮静」(強心・解熱の羅列を鎮静主に是正)。ジャコウ=シカ科ジャコウジカの雄の麝香腺分泌物、強心・興奮・鎮静で確定。正答エ(シンジュ=ムラサキガイ科の外殻が誤り)で確定。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第10節「強心薬」および第15節「漢方処方製剤・生薬製剤」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。