登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問26:主な医薬品とその作用(腸の薬)
止瀉薬(下痢止め)の各成分に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- アロペラミドは腸の蠕動運動を亢進させることで腸内容物の通過を遅らせ、水分・電解質の再吸収を促進することで止瀉効果を示す。
- イ木クレオソートはフェノールを主体とした防腐・殺菌成分であり、腸内の有害菌を殺菌することで止瀉作用を発揮するが、小腸の水分分泌には影響しない。
- ウタンニン酸アルブミンは腸粘膜の蛋白質と結合して難溶性の膜を形成し(収れん作用)、腸管の過剰な分泌や炎症を抑制することで止瀉効果を示す。正答
- エ次硝酸ビスマスは腸管内の水分を吸収して膨潤し、便をゲル状に固める物理的な機序で止瀉効果を示し、ビスマスそのものには粘膜保護作用はない。
- オロペラミドは食あたりや水あたりによる急性の下痢に広く使用でき、発熱・血便を伴う下痢(感染性腸炎)でも有効で継続使用が推奨される。
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正答はウ(正しいもの)です。
タンニン酸アルブミンは収れん作用(腸粘膜タンパクと結合して膜を形成)で腸管の過剰分泌を抑え、下痢を止める効果を発揮します。
各成分の覚え方:
- ロペラミド:腸の蠕動を「抑制」して遅くする(亢進ではない)
- 木クレオソート:殺菌だけでなく腸管分泌も抑制する
- タンニン酸アルブミン:収れん作用(腸粘膜を保護)→正しい
- 次硝酸ビスマス:ビスマス自体に収れん・粘膜保護作用あり
ア(蠕動亢進は逆)・イ(木クレオソートの作用不完全)・エ(次硝酸ビスマスの機序が誤り)・オ(感染性腸炎での継続使用は危険)はいずれも誤りです。
止瀉薬の成分別比較表:
| 成分名 | 分類 | 主な作用機序 | 注意事項 |
|---|---|---|---|
| ロペラミド | 腸管運動抑制薬(オピオイド受容体作動) | 腸管オピオイドμ受容体刺激→蠕動抑制・腸液分泌抑制 | 発熱・血便時は使用を避ける。一般用では15歳未満に使用しない・妊婦は相談 |
| 木クレオソート | 収れん・止瀉 | 腸粘膜への収れん作用+殺菌・防腐+小腸分泌抑制 | 過量で吐気・めまい |
| タンニン酸アルブミン | 収れん止瀉 | タンニン酸が腸粘膜タンパクと結合→難溶性膜形成→収れん・炎症抑制 | 牛乳アレルギー(アルブミンは牛乳由来)に注意 |
| 次硝酸ビスマス | 収れん・粘膜保護 | Bi³⁺が腸粘膜タンパクと結合→収れん+粘膜保護(コーティング) | 長期大量使用でビスマス脳症のリスク |
各選択肢の解説:
- ア(誤): ロペラミドは腸管のオピオイドμ受容体(末梢性)を刺激して蠕動を抑制します(亢進ではない)。蠕動抑制によって腸内容物の通過を遅らせ、水分・電解質の再吸収時間を延長します。
- イ(誤): 木クレオソートは殺菌・防腐作用だけでなく、腸粘膜への直接的な収れん作用と小腸の水分・電解質分泌の抑制作用もあります。「小腸の水分分泌には影響しない」は誤りです。
- ウ(正): タンニン酸アルブミンのタンニン酸成分が腸管粘膜タンパクと結合して不溶性の皮膜を形成し(収れん)、腸管からの水分・電解質の過剰分泌を抑制します。アルブミンと結合することでタンニン酸の刺激(苦味)が軽減される利点もあります。なおタンニン酸アルブミンの「アルブミン」は牛乳タンパク(カゼイン)から製造されるため、牛乳によるアレルギーの既往がある人には使用できません(禁忌)。
- エ(誤): 次硝酸ビスマスはビスマスイオン(Bi³⁺)が腸粘膜タンパクと結合して収れん作用を発揮するとともに、粘膜保護コーティング作用を持ちます。「ビスマスに粘膜保護作用はない」は誤りです。
- オ(誤): ロペラミドは感染性腸炎(発熱・血便を伴う)には禁忌または要注意です。腸管の蠕動を抑制すると病原体・毒素の排出が妨げられ、症状が悪化するおそれがあります。発熱・血便がある下痢では医師への受診が必要です。
【ロペラミドの薬理機序と感染性腸炎への禁忌の理由】
ロペラミドの分子薬理:
ロペラミドは腸管の末梢性オピオイドμ受容体(腸管筋間神経叢・粘膜下神経叢)に作動することで:
1. アセチルコリン遊離抑制: 腸管神経叢のコリン作動性ニューロンからのACh放出低下→輪走筋・縦走筋の弛緩→蠕動運動抑制
2. 腸液分泌抑制: 粘膜下腺からのcAMP媒介性Cl⁻分泌を抑制→腸液産生低下
3. 肛門括約筋緊張増強: 直腸括約筋の緊張を高め便意を抑制
血液脳関門(BBB)の透過性:ロペラミドはP糖タンパク質(MDR1)の基質であり、健常者では腸管細胞に発現するP-gpが中枢移行を能動的に排出します。このため通常は末梢作用に限定され、中枢性の呼吸抑制(モルヒネ様作用)が生じにくい設計です。
感染性腸炎での禁忌の薬理的根拠:
腸管感染症(コレラ・カンピロバクター・腸管出血性大腸菌O-157等)では毒素・病原体が腸管内に存在します。ロペラミドで蠕動を抑制すると:
- 毒素・病原体の腸管内滞留時間が延長
- 腸管粘膜への接触時間増大→障害増悪・全身吸収リスク上昇
- O-157感染時:志賀毒素の吸収増加→溶血性尿毒症症候群(HUS)発症リスク増大
このため発熱(38℃以上)・血便・粘液便を伴う下痢では、ロペラミド等の腸管運動抑制薬は使用を避け、ORS(経口補水液)による水分補給と医療機関受診を優先します。
【タンニン酸アルブミンの牛乳アレルギーとの関係】
タンニン酸アルブミンの構成:
- タンニン酸(収れん活性成分)+ アルブミン
- このアルブミンは牛乳タンパクのカゼインを原料に製造される(乳製品由来)
牛乳アレルギーのメカニズム:IgE媒介型アレルギー(即時型)。牛乳タンパク(カゼイン・β-ラクトグロブリン等)に対する特異的IgE抗体を保有する人では、少量でもアナフィラキシー反応を起こしうる。タンニン酸アルブミンのアルブミン成分はカゼイン(牛乳タンパク)由来であるため、牛乳によるアレルギーの既往がある人には使用できない(手引きでも「してはいけないこと」に該当)。
実務での確認ポイント:
- 「牛乳アレルギーはありますか?」の確認を必須化
- 特に乳幼児への使用では親への確認が重要
- 小児用整腸・止瀉薬を選ぶ際は成分を確認
【次硝酸ビスマスのビスマス脳症リスク】
ビスマス(Bi)の毒性プロファイル:
- 腸管収れん・粘膜保護には有効(Bi³⁺が粘膜タンパクと結合)
- 長期大量使用でビスマス脳症(Bismuth encephalopathy)が報告されている
- 症状:歩行失調・振戦・認知機能低下・精神症状
- 機序:有機ビスマス化合物が中枢に蓄積
- OTCでの通常使用量・期間では問題になりにくいが、長期連用は回避
【止瀉薬の登録販売者としての使い分けと受診勧奨の基準】
| 下痢の状態 | OTC止瀉薬の選択 | 受診勧奨 |
|---|---|---|
| 食べ過ぎ・飲みすぎによる軟便・下痢 | タンニン酸アルブミン・木クレオソート | 不要(2〜3日で改善すれば) |
| 旅行者下痢症(水あたり) | ロペラミド(発熱・血便がない場合のみ) | 改善なければ受診 |
| 発熱(38℃以上)を伴う下痢 | 使用禁忌(感染性の疑い) | 即時受診勧奨 |
| 血便・粘液便 | 使用禁忌 | 即時受診勧奨 |
| 3日以上続く下痢 | 継続服用より受診を勧める | 受診勧奨 |
| 小児(15歳未満)の下痢 | 一般用ロペラミドは使用しない | 受診を勧める |
ロペラミドの年齢制限(一般用医薬品):
一般用医薬品のロペラミド(塩酸塩)は、15歳未満の小児には使用しないこととされています(手引き・添付文書)。特に乳幼児では中枢移行を防ぐP糖タンパク機能が未発達なため、ロペラミドが血液脳関門を通過して呼吸抑制等の中枢神経系障害を起こすリスクがあり、医療用でも低出生体重児・新生児・6か月未満児は禁忌、6か月以上2歳未満は原則禁忌とされています。登録販売者は、一般用ロペラミドを小児に求められた場合は使用せず受診を勧めることを徹底します。
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 正答ウ(タンニン酸アルブミン=収れん作用で止瀉)一意・妥当。次硝酸ビスマス=収れん+粘膜保護(手引き・添付文書と整合)、木クレオソート=殺菌+腸管運動・分泌の正常化作用、ロペラミド=感染性腸炎で使用回避はいずれも妥当。【YMYL修正2点】(1)タンニン酸アルブミンのアルブミンは「牛乳由来だがカゼイン・ホエイとは異なる」という創作的誤記を修正→正しくは"牛乳タンパクのカゼインから製造"・牛乳アレルギーは禁忌(手引き「してはいけないこと」)。(2)ロペラミドの年齢制限を医療用ベースの「2歳未満禁忌」記述から一般用・手引き基準の「15歳未満は使用しない」に修正(医療用の禁忌詳細は補足として明記)。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第5節「腸の薬」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。