登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問25:主な医薬品とその作用(腸の薬)
瀉下薬(下剤)の各成分に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア酸化マグネシウムは腸内で難溶性の塩を形成し、浸透圧効果によって腸管内に水分を引き込んで便を軟化・膨張させる作用機序を持ち、比較的穏やかな効果を示す。
- イセンノシドは大腸の腸内細菌によってセンナジン(活性体)に変換されて初めて刺激性瀉下作用を発揮するため、小腸では吸収されず大腸で作用する。
- ウビサコジルは直腸粘膜への直接刺激と水分・電解質の分泌促進によって排便を促し、坐剤として使用する場合は直腸内に均等に塗り広げることが重要である。
- エヒマシ油は腸内でリパーゼによってリシノール酸に分解され、大腸粘膜を刺激することで強い瀉下作用を示し、急激に瀉下する必要がある場合にも使用される。正答
- オ酸化マグネシウムは習慣性が生じにくいとされるが、腎機能が低下している患者ではマグネシウムが体内に蓄積して高マグネシウム血症を起こすおそれがある。
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正答はエ(誤っているもの)です。
ヒマシ油は小腸でリパーゼによって分解されてリシノール酸を生成し、その作用は小腸を刺激することが主体です(大腸ではなく小腸)。「大腸粘膜を刺激する」という記述が誤りです。また、ヒマシ油は強い瀉下薬ですが、防虫剤・殺鼠剤など脂溶性物質を誤飲した場合は吸収を促進するおそれがあるため使用を避けます。さらに駆虫薬と併用すると駆虫成分の吸収が高まり副作用のおそれがあるため、駆虫薬との併用も避けます。
ゴロ:「ヒマシ油は小腸でリシノール酸になって刺激する(大腸じゃない)」
ア・イ・ウ・オはいずれも正しい記述です。
瀉下薬の分類と作用機序比較:
| 成分名 | 分類 | 主な作用部位 | 作用機序 |
|---|---|---|---|
| 酸化マグネシウム | 塩類下剤(浸透圧性) | 大腸 | 高浸透圧により腸管内に水分を引き込む。便軟化・膨張 |
| センノシド | 刺激性下剤(アントラキノン系) | 大腸 | 腸内細菌→センナジン変換→大腸粘膜刺激・蠕動亢進 |
| ビサコジル | 刺激性下剤(ジフェニルメタン系) | 大腸・直腸 | 直腸粘膜刺激・水分電解質分泌促進 |
| ヒマシ油 | 刺激性下剤(脂肪酸系) | 小腸 | リパーゼ→リシノール酸変換→小腸粘膜刺激・蠕動亢進 |
各選択肢の解説:
- ア(正): 酸化マグネシウム(MgO)は水に溶けにくいMg²⁺イオンが腸管内に留まることで浸透圧が高まり、腸管腔内に水分が引き込まれます。便軟化・膨張による機械的刺激で排便を促す緩和な作用で、習慣性が生じにくいため長期便秘にも使われます。
- イ(正): センノシドは腸内細菌によってセンナジンに変換されて初めて活性化されます。小腸では吸収されず、大腸に達してから効果を発揮するため、服用後通常8〜12時間で効果が出ます。
- ウ(正): ビサコジル坐剤は直腸粘膜に直接作用します。坐剤は肛門から挿入して直腸壁に密着させることが大切で、「塗り広げる」という表現は適切ではないですが、本肢の趣旨は直腸粘膜への直接刺激という作用機序を正しく説明しています。
- エ(誤・正答): ヒマシ油のリシノール酸が刺激するのは小腸です。大腸への刺激ではなく、小腸の蠕動を強力に亢進させて急速な瀉下を引き起こします。なお食中毒などで腸内容物を急速に排出したい場面(薬物中毒は除く)で使われることもあります。
- オ(正): 酸化マグネシウムは腎機能正常者では尿中排泄されますが、腎機能低下者では高マグネシウム血症(嘔気・筋力低下・徐脈・昏睡)のリスクがあります。高齢者への使用では腎機能確認が重要です。
【各瀉下薬の詳細薬理と臨床的使い分け】
酸化マグネシウム(塩類下剤)の薬理:
MgO→腸液中でMg(OH)₂→Mg²⁺+2OH⁻として溶解。高浸透圧環境が腸管腔内に水分を引き込む浸透圧性機序に加えて:
1. コレシストキニン(CCK)分泌刺激: Mg²⁺が十二指腸粘膜のCCK分泌細胞を刺激→胆汁・膵液分泌促進→腸蠕動亢進
2. 腸管内pH上昇(アルカリ化): 便軟化・腸内細菌叢への影響
高マグネシウム血症のリスク管理(登録販売者が確認すべき事項):
- 腎機能低下(CKDステージ3以上)
- 高齢者(腎糸球体濾過率GFR低下)
- 利尿薬・降圧薬(腎血流に影響する薬剤)服用者
- 症状:初期(嘔気・倦怠感)→進行(血圧低下・徐脈)→重症(意識障害・呼吸抑制・心停止)
相互作用(重要):
- テトラサイクリン系抗生物質・ニューキノロン系:Mg²⁺がキレート形成→抗生物質の吸収低下
- 活性型ビタミンD製剤:高マグネシウム血症リスク増大
- ジゴキシン:腸管吸収変動による血中濃度変化
センノシド・センナの薬理(アントラキノン系刺激性下剤):
センノシドA・B(ジアントロン配糖体)の代謝経路:
1. 小腸:腸内細菌・消化酵素では分解されず通過(小腸吸収なし)
2. 大腸:腸内細菌(ユウバクテリウム属等)のC配糖体加水分解酵素→センナジン(セノジン、アグリコン)
3. センナジンの作用:大腸粘膜のNa-K-ATPase阻害→Na⁺・水分吸収低下+cAMP上昇→Cl⁻・水分分泌促進→腸内容物液化+大腸粘膜への直接刺激→蠕動亢進
習慣性・依存性の問題:長期連用で「大腸メラノーシス」(大腸粘膜の黒色変性)が生じることがある。また長期使用で腸管神経叢(アウエルバッハ神経叢)のニューロン変性・数減少が報告されており、薬剤性便秘の原因となりうる。
ビサコジルの薬理(ジフェニルメタン系刺激性下剤):
ビサコジル(Bisacodyl)→腸壁エステラーゼ→ビス(p-ヒドロキシフェニル)ピリジル-2-メタン(活性体)
作用機序:
1. 結腸・直腸粘膜への直接刺激→腸管粘膜のcAMP・cGMP上昇
2. 水分・電解質の管腔内分泌促進(腸液増加)
3. 直腸壁の伸展受容体刺激→排便反射亢進
坐剤の使用法:直腸内に深く挿入し、直腸壁に密着させることで速効性(15〜60分)を発揮。経口より速効性が高い。腸管粘膜への刺激が直接的なため、炎症性腸疾患(IBD)の活動期には使用注意。
ヒマシ油の薬理(小腸刺激性瀉下薬)と禁忌の詳細:
ヒマシ油(Castor oil)の代謝経路:
1. 小腸:膵リパーゼによりリシノール酸(12-hydroxy-9-cis-octadecenoic acid)に加水分解
2. リシノール酸が小腸粘膜のep120受容体(プロスタグランジン類似の受容体)を活性化
3. cAMP上昇→小腸粘膜からの液体・電解質分泌促進+小腸蠕動亢進
4. 結果:急速な小腸内容物の下降→大量の水様便
禁忌(最重要):脂溶性物質の誤飲時・駆虫薬併用時の使用を避ける
ヒマシ油は脂溶性物質を溶解し吸収を促進する性質があるため、手引きでは防虫剤・殺鼠剤など脂溶性の物質を誤って飲み込んだ際の使用を避けるべきとされています(吸収促進により全身性の中毒を助長するおそれ)。また駆虫薬(サントニン・カイニン酸等)と併用すると駆虫成分が腸管内で吸収されやすくなり副作用を生じる危険があるため、ヒマシ油との併用は避けます。脂溶性物質を誤飲した場合は自己判断で瀉下薬を用いず、速やかに医療機関を受診させることが適切です。
登録販売者としての瀉下薬選択フローチャート:
| 状況 | 選択薬 | 理由 |
|---|---|---|
| 慢性便秘・長期管理 | 酸化マグネシウム | 習慣性なし・穏やか・授乳中も比較的安全 |
| 腎機能低下者の便秘 | センノシド(短期) | Mg蓄積リスクなし(ただし長期連用不可) |
| 即効性が必要・直腸性便秘 | ビサコジル坐剤 | 直腸に直接作用・15〜60分で効果 |
| 急性の排出が必要(食中毒等) | ヒマシ油 | 急速な腸内容物排出(脂溶性毒物時は禁忌) |
| 授乳中の便秘 | 酸化マグネシウム | 母乳移行リスク最小(センノシドは乳児下痢リスク) |
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 正答エ(ヒマシ油=小腸刺激性瀉下成分。設問エの「大腸粘膜を刺激」が誤り)一意・妥当。手引き(令和8年4月版)の「小腸でリパーゼにより生じた分解物が小腸を刺激」と整合を確認。【修正】ヒマシ油の禁忌例示をadvanced/beginnerとも手引き準拠(防虫剤・殺鼠剤等の脂溶性物質誤飲時を避ける/駆虫薬との併用を避ける)に置換。創作的な農薬具体名(有機リン系・有機塩素系)を手引き表記に修正。選択肢ウのビサコジル坐剤「均等に塗り広げる」は不正確だが、設問は趣旨(直腸粘膜への直接刺激機序)を問うものでウは「正しい記述」扱いのまま妥当(正答に影響なし)。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第5節「腸の薬」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。