登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問43:主な医薬品とその作用(漢方処方製剤・婦人薬)
婦人薬として使用される漢方処方製剤の「証(適する患者の状態)」に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)は、比較的体力がなく、冷え性で貧血傾向があり、疲労しやすく、ときに下腹部痛・頭重・めまい・肩こりを訴える人の月経不順・更年期障害等に用いられる。
- イ加味逍遙散(かみしょうようさん)は、比較的体力がなく、のぼせ・肩こり・疲れやすさ・精神不安・不眠などの症状が重なり、便秘傾向の人の月経不順・更年期障害に用いられる。
- ウ桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)は比較的体力があり、のぼせや下腹部に抵抗・圧痛(瘀血)があって、便秘傾向の人の月経不順・子宮内膜症・更年期障害等に用いられる。正答
- エ桃核承気湯(とうかくじょうきとう)は体力中等度以上で、のぼせてのぼせが強く、便秘傾向があり、下腹部に瘀血症状がある人の月経不順・月経痛・更年期障害等に用いられ、婦人科の漢方薬のうち最も「実証(体力がある・のぼせが強い)」に適する。
- オ桃核承気湯に含まれるダイオウ・ボウショウは「瀉下作用」を持つため、授乳中の女性への使用は避けるべきとされている。
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正答はウです。
桂枝茯苓丸は「比較的体力があり」とされますが、「便秘傾向の人」という条件は誤りです。桂枝茯苓丸の特徴は「のぼせ・下腹部の瘀血(抵抗・圧痛)」であり、便秘については適応の中心的条件ではありません。便秘傾向を持つ「実証(体力のある)」女性の漢方として適するのは桃核承気湯です。
婦人薬の漢方4処方の虚実・特徴を整理すると:
- 当帰芍薬散→虚証(冷え・貧血)
- 加味逍遙散→虚証〜中間(のぼせ+疲れ・精神症状)
- 桂枝茯苓丸→中間〜実証(のぼせ・瘀血)
- 桃核承気湯→実証(強いのぼせ・便秘・瘀血)
暗記ポイント: 「桃核承気湯は婦人薬の4処方で最も実証・便秘に適す」
婦人薬の漢方4処方 比較まとめ:
| 処方名 | 虚実(体力) | 主な特徴/証 | 含有する瀉下薬 |
|---|---|---|---|
| 当帰芍薬散 | 虚証(体力なし) | 冷え・貧血・浮腫・めまい・肩こり | なし(瀉下薬不含) |
| 加味逍遙散 | 虚証〜中間(やや体力なし) | 精神症状(精神不安・不眠)・のぼせ・肩こり・疲れ | なし(ダイオウは含まない) |
| 桂枝茯苓丸 | 中間〜実証(比較的体力あり) | のぼせ・下腹部の瘀血(抵抗・圧痛) | なし |
| 桃核承気湯 | 実証(体力あり) | 強いのぼせ・便秘・下腹部の瘀血・精神不安 | ダイオウ・ボウショウ(瀉下) |
各選択肢の解説:
- ア(正): 当帰芍薬散は婦人薬漢方の中で最も「虚証(冷え性・貧血・疲れやすい)」に適します。浮腫傾向・月経不順・更年期障害・妊娠中の浮腫にも用いられます。ダイオウを含まず、比較的穏やかな処方です。
- イ(正): 加味逍遙散は精神・神経症状(精神不安・不眠・神経過敏)が前景に立つ更年期症状・月経不順に適します。「のぼせ」と「疲れやすさ」の組み合わせが特徴。加味逍遙散に「便秘傾向」は特徴的な条件ではありません(この点も桃核承気湯との区別点)。
- ウ(誤・正答): 桂枝茯苓丸の証は「比較的体力があり、のぼせ傾向があり、下腹部に抵抗・圧痛(瘀血)がある」ことです。「便秘傾向」は桂枝茯苓丸の中心的適応条件ではなく、便秘が前景に立つ場合は桃核承気湯が選択されます。
- エ(正): 桃核承気湯は婦人薬漢方の中で最も「実証」に適し、強いのぼせ・便秘・下腹部の瘀血(堅い・痛む)・精神的興奮が特徴です。ダイオウ・ボウショウ(芒硝)による強い瀉下作用を持ちます。
- オ(正): 桃核承気湯のダイオウはセンノシドを含み、母乳移行して乳児に下痢を起こすリスクがあります。授乳中の女性は使用を避けます。ボウショウ(芒硝:硫酸ナトリウム系)も浸透圧性の瀉下作用を持ちます。
【婦人薬漢方4処方の生薬構成と「瘀血(おけつ)」概念】
漢方の「瘀血」とは気血の循環障害(血の滞り)を意味し、以下の症状として現れます:
- 下腹部の固い抵抗・圧痛(触診で分かる「腹証」)
- 口唇・舌の暗紫色
- 皮膚のあざ・色素沈着
- 月経の暗色・血塊混入・月経痛
4処方はいずれも「瘀血」に対処しますが、虚実の程度と伴う症状が異なります。
当帰芍薬散の生薬構成(6味):
| 生薬 | 作用 |
|---|---|
| 当帰(とうき) | 補血・活血(血虚を補い、血行改善) |
| 芍薬(しゃくやく) | 鎮痛・緩痙・補血 |
| 川芎(せんきゅう) | 活血・鎮痛・頭部への血行改善 |
| 茯苓(ぶくりょう) | 利水・鎮静 |
| 白朮/蒼朮(びゃくじゅつ/そうじゅつ) | 健胃・利水・浮腫改善 |
| 沢瀉(たくしゃ) | 利水・めまい改善 |
「補血(血虚補正)」と「利水(浮腫改善)」を同時に行う特徴があります。妊娠中の浮腫にも使用されることがあります(ただし妊婦への使用は医師相談が原則)。
桂枝茯苓丸の生薬構成(5味):
| 生薬 | 作用 |
|---|---|
| 桂枝(けいし) | 温通(血行を温め通す)・解表 |
| 茯苓(ぶくりょう) | 利水・鎮静 |
| 芍薬(しゃくやく) | 鎮痛・緩痙 |
| 牡丹皮(ぼたんぴ) | 活血・清熱・消炎 |
| 桃仁(とうにん) | 活血・祛瘀(強い瘀血除去)・潤腸 |
牡丹皮・桃仁の組み合わせが「活血祛瘀」の中心で、下腹部の瘀血(固い・圧痛)を散じます。ダイオウを含まないため瀉下作用はなく、「のぼせはあるが便秘ではない、または体力が桃核承気湯ほどではない」場合に選択されます。
桃核承気湯の生薬構成(5味):
| 生薬 | 作用 |
|---|---|
| 桃仁(とうにん) | 活血・祛瘀 |
| 桂枝(けいし) | 温通 |
| 大黄(ダイオウ) | 瀉下・活血・清熱 |
| 芒硝/ボウショウ(ぼうしょう) | 瀉下(硫酸ナトリウム系・浸透圧性) |
| 甘草(カンゾウ) | 調和(各生薬の作用を調整) |
桃核承気湯はダイオウ+ボウショウという強力な瀉下薬を含むため、便秘を伴う実証の婦人科疾患に用いられます。カンゾウを含むため偽アルドステロン症(低K血症・浮腫・高血圧)のリスクも念頭に置く必要があります。
【婦人薬漢方の「証」の実務的な見分け方:登録販売者のヒアリング術】
顧客が更年期症状・月経不順で来店した場合の処方選択参考フロー:
```
体力は?
├── 体力なし・冷え性・貧血傾向
│ ├── 精神症状(精神不安・不眠)が強い → 加味逍遙散
│ └── 精神症状なし・冷え・めまい・浮腫 → 当帰芍薬散
└── 比較的体力あり・のぼせ傾向
├── 便秘なし・下腹部の抵抗・圧痛 → 桂枝茯苓丸
└── 便秘あり・強いのぼせ・精神的興奮 → 桃核承気湯
```
ただしこれはあくまで参考フローであり、漢方の証判定は総合的な「腹証(お腹の触診)」「舌診」等が必要で、登録販売者が「この人はこの漢方が最適」と断言することは越権行為です。重篤な症状・長期症状は医師・漢方専門家への紹介が必要です。
【婦人薬漢方と妊婦・授乳婦への注意点まとめ】
| 処方 | 妊婦 | 授乳中 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 当帰芍薬散 | 比較的使用例多い(医師相談前提) | 注意 | 活血作用(子宮収縮の可能性・文献で議論あり) |
| 加味逍遙散 | 要相談 | 注意 | 一部成分の安全性データ限定的 |
| 桂枝茯苓丸 | 要相談(活血作用) | 注意 | 牡丹皮・桃仁の活血祛瘀作用 |
| 桃核承気湯 | 禁忌 | 禁忌 | ダイオウ(子宮収縮・母乳移行)・ボウショウ |
桃核承気湯は婦人薬漢方の中で唯一「妊婦禁忌」と明確にされています。ダイオウの腸管刺激による腹圧上昇・子宮収縮作用と、授乳婦ではセンノシド代謝物の母乳移行の2点が問題になります。
【根拠】厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章第12節
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第12節「婦人薬」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。