登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問42:主な医薬品とその作用(泌尿器用薬)
泌尿器用薬(一般用医薬品の尿路症状に対する薬)の生薬・漢方成分に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- アウワウルシ(ツツジ科植物の葉)はアルブチンを含み、尿を弱アルカリ性にすることで抗菌作用を発揮するため、尿路感染症状(残尿感・排尿痛)の緩和に用いられる。正答
- イカゴソウ(別名:夏枯草)はシソ科の植物で、その花穂が薬用部位として用いられ、泌尿器(利尿・腎機能補助)に作用する。
- ウ猪苓湯(ちょれいとう)は、尿量の少ない人の排尿困難・排尿痛・残尿感・頻尿に用いられ、口渇の症状がある場合に適するとされる。
- エ竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)は、比較的体力がある人の排尿痛・残尿感・頻尿・外陰部のかゆみに用いられ、口渇・排尿困難に伴う下半身の炎症症状に適するとされる。
- オウワウルシは尿が酸性に傾いているときは抗菌作用が弱まるため、使用中は梅干しやビタミンC(アスコルビン酸)が多い飲食物の摂取を控えることが望ましい。
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正答はアです。
ウワウルシの抗菌作用はアルブチン(ヒドロキノン配糖体)を含む点は正しいですが、「尿を弱アルカリ性にすることで抗菌作用を発揮する」とする記述が誤りです。正確にはアルブチンが腸管で加水分解されてヒドロキノンになり、腎臓で尿中に排泄されます。ヒドロキノンは弱アルカリ性の尿(pH7以上)で最も抗菌効果を発揮します。つまり「弱アルカリ性の尿の環境で作用を発揮する」のは正しいですが、「ウワウルシが尿をアルカリ性にする」わけではありません。
イ(カゴソウ=シソ科・花穂・利尿)、ウ(猪苓湯の証)、エ(竜胆瀉肝湯の証)、オ(尿の酸性化で抗菌作用が弱まる)はすべて正しい記述です。
泌尿器用薬の主な生薬・漢方成分まとめ:
| 成分/処方 | 由来・薬用部位 | 主な作用/適応 | 証(漢方) |
|---|---|---|---|
| ウワウルシ | ツツジ科・葉 | 抗菌(アルブチン→ヒドロキノン)・利尿 | — |
| カゴソウ(夏枯草) | シソ科ウツボグサ・花穂 | 利尿・抗炎症 | — |
| 猪苓湯 | 漢方処方(猪苓・茯苓・沢瀉・阿膠・滑石) | 排尿困難・残尿感・頻尿・口渇 | 虚実を問わず |
| 竜胆瀉肝湯 | 漢方処方(竜胆・山梔子・黄芩等) | 排尿痛・外陰部炎症・下半身炎症 | 比較的体力ある人 |
各選択肢の解説:
- ア(誤・正答): ウワウルシ(Arctostaphylos uva-ursi)の主成分アルブチンは腸内細菌またはβ-グルクロニダーゼによってヒドロキノンに分解され、腎臓で尿中に排泄されます。ヒドロキノンが尿路粘膜の細菌(大腸菌等)に対して抗菌作用を発揮しますが、この作用はアルカリ性の尿(pH ≧ 7)で増強されます。「ウワウルシが尿をアルカリ性にする」という記述は誤りです。尿のpHを上げるのは重炭酸ナトリウム等の別成分です。
- イ(正): カゴソウ(夏枯草/ウツボグサ: Prunella vulgaris)はシソ科植物で、花穂(夏に花が咲いた後に枯れる穂)を乾燥させたものを薬用部位とします。利尿・抗炎症作用が知られています。
- ウ(正): 猪苓湯は「尿量が少なく・口渇がある・排尿困難または残尿感がある」人に適します。津液不足と下焦の湿熱を同時に対処する処方です。
- エ(正): 竜胆瀉肝湯は「比較的体力がある」人(実証寄り)で、下半身(尿路・外陰部)の炎症・かゆみ・排尿痛に用いられます。竜胆・山梔子・黄芩等の清熱瀉火薬を含みます。
- オ(正): ウワウルシの有効成分ヒドロキノンは酸性尿(pH低下)では抗菌活性が低下します。梅干し・レモン・ビタミンCサプリ等の摂取は尿を酸性化するため、使用中は控えるよう説明します。
【ウワウルシ(アルブチン)の薬物動態と抗菌メカニズムの詳細】
ウワウルシ(Arctostaphylos uva-ursi: ツツジ科クマコケモモ)の葉には以下の主要成分が含まれます:
- アルブチン(ヒドロキノンのβ-D-グルコシド): 5〜15%
- タンニン類(抗炎症・収れん)
- フラボノイド(クエルセチン・ミリセチン等)
アルブチンの活性化プロセス:
```
アルブチン(経口摂取)
→ 消化管吸収(ほぼ完全)
→ 腸内細菌・腸管細胞の β-グルコシダーゼ / β-グルクロニダーゼ
→ ヒドロキノン(遊離型)に加水分解
→ 肝臓でグルクロン酸抱合・硫酸抱合(一部)
→ 腎臓で尿中に排泄
→ 尿路でアルカリ性環境 → ヒドロキノン活性型で抗菌作用発揮
```
pH依存性の要点(手引き準拠):
- 厚労省手引き第3章「泌尿器用薬」では、ウワウルシは尿路の殺菌消毒成分であり、その抗菌作用は経口摂取後に分解生成するヒドロキノンが腎臓から尿中に排泄され、尿が弱アルカリ性であるときに発揮されるとされる
- 手引きが押さえる核心は「ウワウルシ=ツツジ科クマコケモモの葉・アルブチン由来のヒドロキノンが弱アルカリ尿で抗菌作用を示す」という点であり、分子レベルの透過性機序の断定は試験範囲外
- したがって本問のアの誤りは「ウワウルシ自身が尿をアルカリ性にする」とした点(実際は尿が弱アルカリ性の環境で作用を発揮するのであって、尿をアルカリ化する成分ではない)
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 正答ア(誤っているもの)は妥当(一意)。一次ソース(手引き・日本薬学会クマコケモモ Arctostaphylos uva-ursi ツツジ科)で、ウワウルシ=ツツジ科クマコケモモの葉、アルブチン→ヒドロキノン、弱アルカリ尿(pH8前後)で抗菌作用発揮を確認。「ウワウルシが尿をアルカリ性にする」は誤りで正答ア成立。pKa等の分子機序断定は手引き範囲外のため手引き準拠の記述に置換。カゴソウ=シソ科ウツボグサ花穂・猪苓湯/竜胆瀉肝湯の証・尿酸性化で抗菌減弱も手引き準拠で正。 -->
尿のpHと食品の関係(ウワウルシ使用中の留意点):
- ウワウルシの抗菌作用は弱アルカリ尿で発揮されるため、尿を酸性化する飲食物(梅干し・レモン・ビタミンC〔アスコルビン酸〕サプリ・クランベリージュース等)の多量摂取は作用を弱めうる点に留意
- クランベリージュース(D-マンノース・プロアントシアニジン含有)は尿路感染予防で人気だが、酸性化作用があるためウワウルシの抗菌作用とは相性が悪い
- なお「特定の食品で尿を狙ってアルカリ化する」運用は手引きの記載範囲外であり、登録販売者として顧客に推奨すべきは「酸性化飲食物を控える」程度の説明にとどめる
【猪苓湯の構成生薬と薬理作用の科学的根拠】
猪苓湯の5生薬:
| 生薬 | 主な有効成分 | 作用 |
|---|---|---|
| 猪苓(ちょれい)| エルゴステロール・多糖体 | 利水(腸管・腎での水分再分配) |
| 茯苓(ぶくりょう)| β-パキマン(多糖体) | 利水・鎮静・健胃 |
| 沢瀉(たくしゃ)| アリソール類 | 利尿・コレステロール代謝改善 |
| 阿膠(あきょう)| コラーゲン・タンパク質(ロバ皮由来) | 補血・止血(出血傾向を改善) |
| 滑石(かっせき)| ケイ酸マグネシウム(無機物) | 清熱・利尿・尿道の滑沢 |
阿膠が含まれることが猪苓湯の特徴です。津液(体液)を補いながら利水(余分な水分排泄)するため、「口渇を伴う排尿困難・血尿傾向・熱感」という複雑な状態に対応します。出血傾向がある患者(血尿・膀胱炎の急性期)にも使用できる点が竜胆瀉肝湯との違いです。
【竜胆瀉肝湯の現代的課題:関木通と肝腎毒性】
竜胆瀉肝湯はかつて木通(もくつう)として関木通(かんもくつう: Aristolochia manshuriensis)が使用されていました。関木通にはアリストロキン酸(腎毒性・発癌性の強い成分)が含まれており、1990年代に欧州でアリストロキア酸腎症(慢性間質性腎炎)の多発が報告されました。
現在の日本:
- 日本薬局方で木通として認められているのはアケビ(Akebia quinata: アケビ科)の茎です
- アケビ由来の木通にはアリストロキン酸は含まれません
- 関木通は日本での使用は実質廃止されています
この事例から学べること(登録販売者の観点):
1. 同名の生薬でも「基原(由来)」が異なれば成分・毒性が全く異なる
2. 生薬の品質管理・基原確認は非常に重要
3. 消費者から「漢方薬は自然だから安全」という誤解を受けた際に、「生薬も成分により副作用・毒性がある」と説明する根拠になる
【泌尿器用薬の登録販売者実務対応:受診勧奨タイミング】
一般用医薬品の泌尿器用薬でカバーできる症状と、受診が必要な状態の区別:
カバー可能(OTC適応の目安):
- 軽度の残尿感・排尿時の不快感(細菌性膀胱炎の軽症)
- 慢性的な頻尿・尿量減少(水分摂取不足等の軽症)
受診勧奨が必要:
- 発熱(38℃以上)を伴う排尿痛→腎盂腎炎の可能性
- 血尿(肉眼的)→腎臓・尿路の出血性疾患、腫瘍の可能性
- 3〜5日のOTC使用で改善しない
- 男性の頻尿・排尿困難→前立腺疾患(良性肥大・癌)の鑑別が必要
- 小児の頻繁な尿路感染→構造的異常の精査が必要
【根拠】厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章第14節
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第14節「泌尿器用薬」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。