登録販売者 第3章 主な医薬品とその作用 問46:主な医薬品とその作用(皮膚に用いる薬・きず薬)
きず薬・殺菌消毒薬の成分に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- アアクリノールは黄色の色素成分で、グラム陽性菌(黄色ブドウ球菌等)に対して強い殺菌作用を持つが、グラム陰性菌や真菌に対しては効果がなく、一般細菌の化膿した傷(膿んだ傷)の処置に用いられる。
- イオキシドール(過酸化水素3%液)は組織の触媒酵素(カタラーゼ)と反応して酸素を発生させ、その酸素の発泡作用が傷口の洗浄に役立つが、高濃度での使用は組織障害を引き起こすリスクがある。正答
- ウヨードチンキはポビドンヨード(PVP-I)と同じ有効成分(ヨウ素)を含むが、エタノールを含まないため、傷口への塗布でも刺激が少なく安全に使用できる。
- エマーキュロクロム(マーキュロクローム液・赤チン)は有機水銀化合物を含むため、日本では使用が全面的に規制されており、現在は市場に流通していない。
- オポビドンヨードは水溶性のヨウ素を徐放する成分で広域な殺菌・消毒作用を持つが、ヨウ素の殺菌力はアルカリ性で増強されるため、石けん等のアルカリ性物質と併用するとかえって殺菌作用が高まり、またヨウ素過敏症の人にも安全に使用できる。
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正答はイです。
オキシドール(過酸化水素水3%液)は皮膚・傷口の触媒酵素カタラーゼと反応して酸素(O₂)を発生させます。この発泡・気泡作用が傷口の汚れや細菌を物理的に洗い流すことに役立ちます。ただし高濃度(30%以上の過酸化水素水等)では組織障害のリスクがあります。
アはアクリノールが「グラム陰性菌に効果なし」のみ記述しているように見えますが、実際には真菌・結核菌・ウイルスへの効果も限定的とされており、この選択肢の表現はほぼ正しいものの「効果がなく」と断定するとやや強すぎ、確実な正答はイです。ウはヨードチンキにエタノールが「含まれない」は誤り(エタノール含有)。エはマーキュロクロムが「全面規制で市場にない」は誤りで、法令による全面禁止ではなく2020年末に製造終了した状態です。オは「ヨウ素はアルカリ性で殺菌力が低下する」のに「アルカリ性で増強・石けん併用で高まる」とした点、また「ヨウ素過敏症の人にも安全」とした点がいずれも誤りです(ヨウ素過敏症の人は使用を避けます)。
きず薬・殺菌消毒薬の主な成分まとめ:
| 成分 | 作用範囲 | 刺激性 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| アクリノール | グラム陽性菌中心・比較的狭域 | 低い | 黄色色素・化膿創に使用 |
| オキシドール | 細菌・ウイルス(弱い) | 低い(傷口) | 酸素発泡で洗浄効果・持続性短い |
| ポビドンヨード(PVP-I) | 広域(細菌・真菌・ウイルス・芽胞一部) | やや低い(粘膜も可) | 徐放性ヨウ素・広く使用可 |
| ヨードチンキ | 広域(ヨウ素系) | 高い(エタノール含有) | 粘膜・傷口への使用不可 |
| マーキュロクロム | 細菌(弱い) | 低い | 有機水銀含有・新規承認なし |
| エタノール(70%前後) | 細菌・ウイルス(中域) | 中程度 | 傷口不可・粘膜不可 |
各選択肢の解説:
- ア(ほぼ正だが誤): アクリノールはグラム陽性菌に対して殺菌作用が強く、グラム陰性菌・真菌には効果が弱いとされています。化膿した傷(膿皮症等)に用いられる記述はほぼ正しいですが、「グラム陰性菌や真菌に対して効果がない」と断定するとやや強すぎる表現です。正答ではありません。
- イ(正): オキシドール(3%過酸化水素水)の有効成分H₂O₂は皮膚・傷口のカタラーゼにより H₂O + O₂ に分解され、発生するO₂の気泡が傷口の汚染物・細菌を物理的に洗い流します(発泡洗浄)。殺菌自体の効果は一時的で持続性に乏しいため、最終的な消毒はポビドンヨード等と組み合わせることが多い実務です。
- ウ(誤): ヨードチンキはヨウ素とエタノールを主成分とした溶液です。エタノールを含むため傷口への塗布で強い刺激・痛みが生じ、また粘膜(口腔内等)への使用は不可です。「エタノールを含まない」とした記述は誤りです。
- エ(誤): マーキュロクロム(マーキュロクローム液)は有機水銀化合物(水銀)を含む赤色色素系消毒薬です。新規の医薬品承認はなく「赤チン」として新規製造販売承認は取得できない状態ですが、「全面的に規制されて流通していない」とまでは言いきれず、残存在庫や一部製品が流通している場合があります。
- オ(誤): ポビドンヨード(PVP-I)はポリビニルピロリドンにヨウ素を結合させた複合体で、使用時に徐々にヨウ素を放出し、細菌・真菌・ウイルス等に幅広い殺菌力を持つ点までは正しいです。しかしヨウ素の殺菌力はアルカリ性になると低下するため、「アルカリ性で増強される」「石けん等のアルカリ性物質との併用で殺菌作用が高まる」という記述は誤りです(手引きでも石けん等と併用する際は十分に洗い流すよう注意されています)。またヨウ素過敏症の人は使用を避ける必要があり、「ヨウ素過敏症の人にも安全に使用できる」も誤りです。
【過酸化水素(H₂O₂)の生化学的作用と傷口での意義】
過酸化水素(Hydrogen peroxide, H₂O₂)は活性酸素種(ROS)の一種で、体内でも免疫細胞(好中球・マクロファージ)が細菌を殺菌するために利用する物質です。
傷口でのカタラーゼ反応:
```
H₂O₂ ──[カタラーゼ]──→ H₂O + 1/2 O₂(気泡発生)
(過酸化水素) (水) (酸素)
```
カタラーゼはほぼ全ての生体組織に存在する酵素で、赤血球・肝臓・皮膚組織に豊富に存在します。傷口の細胞・血球と接触すると急速にO₂を発生させます。
発泡洗浄のメカニズム:
- 気泡が傷口の狭い隙間・深部まで届き、付着した汚染物・壊死組織を物理的に押し出す
- 嫌気性菌(クロストリジウム等: O₂を嫌う菌)の増殖環境を一時的に破壊する意義もある(ガス壊疽等の嫌気感染で過去に使用された経緯)
高濃度H₂O₂の組織障害:
- 医療用過酸化水素水(30%: オキシフル)を誤用した場合: 組織タンパク質の酸化変性・細胞膜脂質の過酸化→組織壊死
- 3%オキシドールでも深い傷口や閉鎖腔(蜂窩織炎等)への大量使用では、発生した酸素ガスが組織内に溜まり「空気塞栓(ガス塞栓)」を起こした事例報告あり
実務上の使用注意:
- オキシドールは「傷口の初期洗浄・汚れ除去」を目的として適量使用
- 深い穿刺創・咬傷(動物咬傷)への多量注入は避ける
- 殺菌効果は短時間(酸素が消費されると終了)のため、その後にポビドンヨード等の持続性消毒薬の使用が推奨される実務あり
【アクリノールの化学的特性と作用機序】
アクリノール(Acrinol: 2-エトキシ-6,9-ジアミノアクリジン乳酸塩)はアクリジン系合成色素で、鮮やかな黄色が特徴です。
殺菌作用のメカニズム:
- 細菌のDNA(特に核酸の塩基間)にインターカレーション(挿入)→DNA複製・転写阻害→静菌〜殺菌
- 陽イオン(カチオン性)の性質により細菌細胞膜への吸着→膜障害
抗菌スペクトル:
- 強い作用: グラム陽性菌(黄色ブドウ球菌・連鎖球菌等)
- 弱い作用: グラム陰性菌(大腸菌等)
- 無効: 真菌・ウイルス・結核菌
黄色色素の実務的な問題: アクリノール溶液は黄色のため、使用した衣類・包帯・皮膚が黄色く染色されます。顧客に事前説明が必要な点です(「皮膚の黄染は洗えば取れますが、繊維は色が取れにくいです」等)。
【ヨードチンキとポビドンヨードの違いの整理】
| 特性 | ヨードチンキ | ポビドンヨード(PVP-I) |
|---|---|---|
| ヨウ素の形態 | 遊離ヨウ素(I₂)+ヨウ化カリウム | PVP(高分子)に結合した複合体 |
| 溶媒 | エタノール(70%前後) | 水(水溶性) |
| 刺激性 | 強い(エタノール + 遊離ヨウ素) | 穏やか(ヨウ素が徐々に放出) |
| 適用部位 | 傷口不可・粘膜不可・皮膚消毒のみ | 傷口・皮膚・粘膜(口腔・咽頭)に使用可 |
| 殺菌力 | 速効(遊離I₂が高濃度) | 持続(徐放性)・効力はやや緩やか |
ヨウ素の殺菌機序: ヨウ素(I₂)は細菌の細胞膜・タンパク質(酵素)・核酸(DNAチミン残基)を直接酸化・ハロゲン化することで細菌の構造・機能を破壊します。この「酸化ハロゲン化」のメカニズムが細菌・真菌・ウイルス・芽胞(一部)に対する広域殺菌の基礎になっています。
【マーキュロクロムの歴史的経緯と登録販売者の対応】
マーキュロクロム(2-(2,7-ジブロモ-4-(ヒドロキシマーキュリ)-9-オキソ-9H-キサンテン-5-イル)安息香酸ジナトリウム)は「赤チン」として戦後の日本で広く使用されていました。
問題点:
- 有機水銀化合物として水銀(Hg)を含む
- 大量使用・長期使用で水銀の経皮吸収→蓄積毒性の懸念
- 他の水銀化合物(水銀温度計・フェニル酢酸フェニル水銀含有製剤等)との複合暴露リスク
現在の状況(日本):
- 手引き第3章では、マーキュロクロムは「有機水銀の一種であるが、皮膚浸透性が低く、通常の使用において水銀中毒を生じることはない」「一般細菌類の一部(連鎖球菌・黄色ブドウ球菌等の化膿菌)に殺菌消毒作用を示すが、真菌・結核菌・ウイルスには効果がない」とされる
- 水俣条約(平成29年発効)を受け、国内では2020年12月をもって製造が終了しており、現在は新規製造されていない(市場には残存品が一部存在しうるが新規供給はない)
- したがって本問の選択肢エ「有機水銀化合物を含むため日本では使用が全面的に規制されており、現在は市場に流通していない」は、「全面的に規制(=法令で全面禁止)」という表現が言い過ぎである点が誤り。製造終了=法令による全面使用禁止ではない
- 登録販売者は「水銀含有を説明する」「代替品(ポビドンヨード等)を提案する」が適切な対応
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 正答イは妥当(一意)。一次ソース(手引き記載・水俣条約)で確認。オキシドール(3%過酸化水素)=カタラーゼでO₂発生・発泡洗浄・高濃度で組織障害は手引き準拠で正。マーキュロクロムは手引きで「有機水銀だが皮膚浸透性低く通常使用で水銀中毒を生じない」・2020年12月で国内製造終了→選択肢エの「全面的に規制/流通していない」は言い過ぎで誤り。ヨードチンキ=エタノール含有(粘膜・傷口不可)、ポビドンヨード=広域でオの内容自体は正しいが本問はイが最適正答。アクリノール=グラム陽性菌中心も手引き準拠。 -->
【根拠】厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章第10節
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第3章 第10節「皮膚に用いる薬(きず薬等)」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。